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ザブトンの子供たちの準備


 外のパレードにザブトンたちは参加しない。


 ザブトンが強固に不参加を主張したからだ。


 怖がられる存在が出て行っても、不幸なことになるだけだと。


 まあ、たしかに魔王国ではザブトンたちは怖がられている。


 こんなにかわいいのに。


 しかし、ザブトンがそう言うなら不参加も仕方がない。


 そう思っていたのだけど、ザブトンの子供たちの半分ぐらいが抵抗した。


 ザブトンの前でひっくり返り、足をバタバタさせて参加を訴えた。


 かわいい。


 これにはザブトンも困った。


 しかし、意見は変えない。


 駄目なものは駄目。


 さすがザブトンだ。


 そう思ったのだが、ザブトンも子供たちには弱かったらしい。


 パレードに参加する者の衣装を見守るのも大事だと、隠れて同行することは黙認した。


 つまり、馬車の中で周囲に見られないようにするなら参加してもかまわないということだ。


 ザブトンの子供たちは喜び、ザブトンに感謝を伝えたあと、なにかを作り始めた。


 なんだろう?


 大きい……蜘蛛クモの着ぐるみ?


 デフォルメされて愛らしいが、サイズはザブトンより大きい。


 形はザブトンではなく、背の高いマクラだな。


 着ぐるみの中には板が仕込まれて、形を保っている。


 この着ぐるみの中に入ってパレードに参加する?


 あ、器用に足を動かせる。


 足を操作するギミックが仕込まれているのか。


 凄い。


 でも大丈夫か?


 千匹ぐらい入っているように思えるが……


 下のほうにいるのが潰れちゃうんじゃないか?


 余裕を持って入るように。


 そうだな、今の半分で。


 ぎゅうぎゅうめは駄目だ。


 着ぐるみ、もう何体か作っていいから。


 あと、動くのもやめておこう。


 着ぐるみが動いても変じゃないが、子供とかが近づいてくるかもしれないだろ?


 ザブトンがせっかく黙認してくれたんだ。


 姿を見られないようにしよう。


 うん、わかってもらえて嬉しい。


 着ぐるみは馬車に乗せて運ぼう。


 一体につき一台、馬車がいるだろうけど……屋根のない馬車なら、五村ごのむら所有のがそれなりの数、あったはず。


 それを借りられるよう、ヨウコに伝えておくよ。


 ああ、任せろ。


 これでも俺は、五村の村長でもあるんだからな。



 夜。


 ヨウコに屋根のない馬車の確保を頼んだら、すごい顔をされた。


 え?


 なに?


 なにかあるのか?


「い、いや、村長は五村の状況を知らぬようだなと……」


 まあ、ここ最近はずっと畑仕事をしているからな。


 五村でなにかあったのか?


「あー、外のパレードには、五村からも参加者が出る」


 そうだな。


 俺も五村の村長として参加するわけだし、大樹の村のメンバーばかりでは体裁が悪い。


 もうしわけないけど、五村から参加するメンバーの人選をヨウコに任せた。


 ヨウコは村議会に任せたみたいだけど。


「うむ。

 パレード全体のバランスを考慮し、我は五村からの参加者は五十人ほどでよいと決めただけで、あとは村議会に任せた」


 五十人。


 まあ、妥当だとうな数だな。


「村議会から二千人、最低でも五百人にしてほしいと返された」


 ……


「さすがに我もその数は難しいのではないかと思い、魔王に確認を取ったのだが……

 まったく問題ないとのことで二千人が参加する流れになった。

 それゆえ、馬車は屋根の有無に関わらず、確保が厳しい状況になっておる」


 そんなことになっていたのか。


「うむ。

 ああ、二千人と言ったが、たぶんさらに増える。

 見物客は一緒に移動したがるであろう」


 あー、そうなりそうだな。


「そういうわけで、パレードが半日で終わるという話は立ち消えた。

 短くとも二日はみておいたほうがよい」


 え?


 転移門を使うから、移動距離はそれほどでもないだろ?


 人数が増えたとしても、それほどかからないんじゃないのか?


「全員が素直に指示に従う者たちであれば、そうであろうが……

 お祭り気分の者たちだ。

 酒も入るであろう。

 それらの移動がスムーズに終わると考えるほど、楽観はできん」


 そう言われるとそうか。


 転移門も全員が一斉に使えるわけでもない。


 時間がかかるか。


 ん?


 二日以上となると、参加者の食事とかも準備しないといけないんじゃないか?


「すでに手配に動いておる。

 飲食は問題ない。

 臨時の手洗いも建てておるが……」


 なにか問題があるのか?


「パレードの見物客目当ての出店がな。

 場所取りが激しくなって、警備隊が慌てておる」


 あー……


「村長はいつも通りでかまわぬ。

 ただ、終わったあとでねぎらいの言葉を警備隊にかけてやってほしい」


 承知した。




 ……


 馬車の確保に失敗した。


 わずかな望みを託してゴロウン商会に連絡を取ったが、駄目だった。


 シャシャートの街も、パレードに向けて馬車の確保が厳しいらしい。


 マイケルさんは、ゴロウン商会がパレードで使う馬車をこっちに回そうとしてくれたが、それは遠慮した。


 余っていれば借りたいだけで、使う予定のある物を借り上げるのは気がひける。


 代わりにと言ってはなんだが、馬車の車輪や車軸を譲ってもらった。


 馬車の車輪や車軸は消耗品。


 それゆえ、馬車の数よりも多く用意されている。


 それを確保した。


 車輪と車軸があれば、あとは車体だけ。


 屋根なしの車体なら、俺でもなんとか作れるだろう。


 なにせ、目的は着ぐるみを乗せることなのだから、リヤカーや大八車だいはちぐるまみたいな形で十分だからな。


 まあ、作業は畑仕事が終わってからになるけど。


 山エルフたちの作業が終わっていれば、手伝ってもらえるだろう。


 向こうも馬車作りだし……


 あ、いや、山エルフたちが関わると、魔改造されるか。


 一人で頑張ったほうがいいかもしれない。


 うん、一人で頑張ろう。





村長       「一人で頑張ろう」

ザブトンの子供たち「手伝うよ」

村長       「お前たち……ありがとう」

ザブトン     「……」(手伝いたいけど、衣装のほうで大忙し)



村長       「一人で頑張ろう」

山エルフ     「我々の信用が崩壊している?」

文官娘衆     「馬車は最終的に何台合体になったの?」

山エルフ     「七台のままですよ」

文官娘衆     「そうなの? でも、作業は続いているわよね?」

山エルフ     「ええ、人型への変形を試みてまして……ふふふ、二足歩行ですよ」

文官娘衆     「……」(馬車を二足歩行させることの意味がわからないけど、突っこまない)


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― 新着の感想 ―
やっぱり村長空気読めないし 村外の魔獣を瞬殺する割に村の魔獣には甘い 
[一言] 七台合体 ダイバシャダーとか 七代タタル バシャダゾ7とか 七大積み バシャイダー王とか そんなのが出て来そうだ(^◇^;)
[一言] 恐ろしいので馬車の中で隠れているわ 汎百の同士の中で…
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