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春と褒賞メダル



 春になった。


 小型ワイバーンによる通信で、各地からの情報を得る。


 ハウリン村からは、相変わらず穀物類を求められた。


 シャシャートの街のマイケルさんからは、買い付けたい作物が連絡された。


 魔王の城近くのビーゼルからは、新年の挨拶と共に、ユーリ王姫様の分も込みで注文表が送られてきた。


 フラウと文官娘衆と相談しながら、売れる分の作物を売ってしまう。


 マイケルさんに欲しい品をいくつか頼んだが、使い切れず村に金がそれなりに貯まった。


 今度、皆と相談してお金の使い道を考えよう。





 新しい畑を作る。


 今年は色々と要望が多いので、拡張も決定だ。


 まずは醤油、味噌用の大豆畑。


 次に去年、ドースに貰った珍しい木々や植物を育てるための畑。


 マイケルさんとの取引のためにも、収穫量は増やさないといけない。


【万能農具】があるとは言え、単独で行わなければならないので作業量に限界がある。


 現状十六×三十二面の畑を、東側に広げて二十四×三十二面にした。


 四×四面の薬草畑は、場所を東に移動させて四×八面に拡張。


 果実エリアも八×八面から、北側に拡張して八×十二面に。


 最初の頃に比べれば、大きくなったものだ。


 色々な作物を育てたい。





 褒賞メダルを村人に配った。


 一人に三枚ずつ。


 クロたちにも配るが、さすがに全員には配れないのでクロたちでまとめて三十枚。


 ザブトンも同じく、全員には配れないのでまとめて三十枚。


 役職手当的に、各種族の代表に十枚ずつ配る。


 インフェルノウルフ族代表、クロ。


 デーモンスパイダー族代表、ザブトン。


 吸血鬼代表、ルー。


 天使族代表、ティア。


 ハイエルフ族代表、リア。


 鬼人族代表、アン。


 リザードマン族代表、ダガ。


 獣人族代表、セナ。


 ドワーフ族代表、ドノバン。


 魔族、文官娘衆代表、フラウ。


 ドラゴン代表、ラスティ。


 山エルフ族代表、ヤー。


 後、種族的に蜂とスライムとラスティの使用人として悪魔族が居るが、蜂はザブトンを通じて辞退。


 スライムは意思疎通に失敗。


 ラスティの使用人たちからは、住人全員に配られた三枚で十分と言われた。


 最後に、村長として俺に百枚。


 この百枚は、俺が自由にして良い分ではなく、ほかの者たちへの追加報酬やイベント賞品用だ。


 俺が作って俺が配るから、そんな確保の仕方をしなくてもいいのだが、価値を維持するためにというか、俺が乱発しないためにそうした。


 とりあえず、今年一年はそういったことに使うのは年間百枚として様子をみてみる。


 この褒賞メダルが上手く作用するかどうかもわからないしな。



 村人間での褒賞メダルのやり取りは自由だが、紛失しても補填はしない。


 窃盗、恐喝、立場を利用しての搾取行為は厳罰。


 まあ、これは褒賞メダルが関係してなくても厳罰だな。


「厳罰の内容は?」


「村から追放でいいんじゃないか?」


「た、確かに厳罰ですね。

 無いと思いますが、徹底させます」


「よろしく」




 褒賞メダルで交換できるリストを発表した。


 基本、一つの項目でメダル一枚。


    希望する家具一つ

    希望する遊具一つ

    希望する道具一つ

    倉庫にある武具一つ

    倉庫にある防具一つ

    倉庫にある宝飾品一つ

    希望する設備

    酒(中樽)

    ハチミツ(小瓶)

    希望する作物畑の増加(要望が通った時のみ、メダル交換)

    居住エリア改善希望(要望が通った時のみ、メダル交換)

    その他(希望を聞きます)



 色々とリストに書いたが、一番食いつかれたのが酒だ。


「褒賞メダル一枚で、中樽の酒一つですか?」


「ああ」


「どの酒でもいいのですか?」


「交換用に確保しているぶんからなら、どれでも構わないぞ」


 これにより、村人は自由に酒を飲むことができる。


 ちなみに、中樽で四リットルぐらいのサイズだ。


 一回の食事で飲むとして、八人分ぐらいだろう。


 これが多いか少ないかは別途考えよう。


 村で宴会をする時は、飲み放題なワケだしな。



 その次に食いつかれたのが、家具と遊具。


 これまでは、共同生活なので良い意味でも悪い意味でも平等だった。


 例えば、床置き草入り布団ではなくしっかりしたベッドで寝たいと思っても、全員にベッドが用意できなければなかなか実現しない。


 しかし、褒賞メダルの活用によって、我侭が言えるようになったのだ。


 これは大きい。


 棚、ベッド、テーブル、椅子などの家具や、チェスやリバーシなどの遊具が希望された。





 褒賞メダル。


 早々に問題が出た。


 まず、村人の大半が褒賞メダルを酒と交換した。


 すぐに飲むのかと思ったら、各自の家や部屋で保管しているとのことだ。


 好きな時に飲めるのが良いらしいが、三枚全部をいきなり交換しなくてもと思う。


 一瞬、褒賞メダルではなく酒をメダル代わりに渡した方がいいかなとか考えてしまった。


 持ち運びが不便なことから、却下。


 なんにせよ、褒賞メダルがまだ信用されていないという事だろう。


 これは実績によって解決していくしかない。



 次に、チェス、将棋、囲碁、ミニボウリング、ゴルフ、麻雀などで賭けが始まった。


 賭けは禁止にしないが、借金(褒賞メダルの貸し借り)は禁止にした。


 借金塗れで堕落する村人など見たくない。


 あと、賭けるにしてももう少し小さい単位でやってほしい。


 その方が長く楽しめるだろう。



 家具、遊具への交換が思いのほか、多かった。


 これの問題は、俺が製作に関わる点にある。


 家具などは木材の調達だけで良いのだが、遊具に関しては細部まで俺が関わっている。


【万能農具】で作業しなければ、時間が掛かり過ぎるからだ。


 遊具作りに、村人数人を長々と拘束するワケにはいかない。


 俺が頑張って作るが、褒賞メダル導入は俺が楽するためなのにそうなっていないのが問題だ。


 次回からは、先に遊具は用意して交換しよう。


 今回みたいに注文生産するのは駄目だ。



 その他、色々と問題が出た。


 俺が一番ビックリしたのが、最後のその他(要相談)で獣人族の女の子が俺に対して子供が欲しいと言ってきたことだった。


 直後、追従する者が増加。


 いやいや、さすがに駄目だと却下。


 生まれてくる子供も、メダルで授かったとかは可哀相過ぎる。


 第一、セナ以外の獣人族の女の子に手を出していないのが、俺の心のブレーキなのだ。


 勘弁してほしい。


 なんとか説得した結果、俺と一日行動が一緒とか俺が手作り料理を作る、になった。


 俺の忙しさが増加した。


 おかしい、褒賞メダル。




 やはり難しい。


 思った通りには動かない。


 だが、一年は頑張ってみよう。


 とりあえず、褒賞メダルを賞品にしたイベントを計画だ。


 第一回は……運動会がいいかな。





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― 新着の感想 ―
某スライム物語の功労ポイントと同じようなことになってる……
[一言] <「厳罰の内容は?」  「村から追放でいいんじゃないか?」 あのぉ...... 住人たちにとってそれは、 特にハイエルフたちにとっては、 死刑宣告に等しいのでは......
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