村の住人の反応
ヒー 五村で働くマーキュリー種。武官。
ロク 五村で働くマーキュリー種。文官。
マルビット 天使族の長。キアービットの母親。
クーデル 急降下爆撃が好きな天使族。ララーデルの母親。
村の外でパレードをすることになった。
当初、俺としては村のパレードの延長で考えていたが、別の日に開催することにした。
別の日にしたのは、村のパレードには参加したいが、外でのパレードには参加したくない。
またはその逆の考えを持つ者がいるだろうから、その調整のためだ。
それに、村でのパレードは行進側と見学側が途中で交代するため、村のパレードの続きの感覚で続けるのは難しいこともある。
実際、そのあとの宴会まで含めて村のパレードはスケジュールがしっかりと組まれている。
そのスケジュールを崩すのは憚られた。
……
俺らしからぬ、判断。
うん、説得があったんだ。
文官娘衆たちに。
俺をがっちり捕まえて椅子に座らせ、目の前のテーブルにパレードに関係する大量の書類と木板を並べて一つ一つ説明し、別の日にしてくださいと。
なので村の外でパレードはするが、別の日となった。
魔王にもそれで大丈夫かと確認したので、問題はない。
ちなみに、魔王とティゼルも、王城勤めの文官たちに交通整理を舐めるなと叱られたらしい。
途中の村々は人が少ないだろうけど、王都やシャシャートの街、五村でパレードをするとなるとそれなりの警備や順路の安全確保が必要となる。
気楽に「今度やるから」ぐらいのノリでやれるものではないそうだ。
気楽に引き受けた俺にも刺さる言葉だな。
反省。
さて、村の外でパレードをすることに対して、村の住人の反応はさまざま。
文官娘衆たちが王都の文官たちと打ち合わせするために出かけたのを除けば、大きく動いたのは山エルフたち。
彼女たちは、いまやっている作業を中止し、馬車を作り始めた。
転移門を使用する都合上、村のパレードで使っている背の高い櫓が使えないからだ。
俺としては普通の馬車で十分だと思うのだが、これでもかと豪華な造形にしている。
金銀を使ってもいいか?
いや、かまわないけどな。
俺用の馬車だよな?
どこかの国の王様を運ぶみたいな馬車じゃなくてもいいんじゃないかな?
あと、変形合体機能はいらないと思う。
三台の馬車が合体して、一台の巨大な馬車になる必要性を感じないのだが……
三台じゃない?
五台が合体する?
台数の話ではなく……
説得は無理のようだ。
任せるけど、やりすぎないように。
……
任せると言ったとたんに、山エルフたちの目の輝きが増した。
悪いほうの輝きだ。
実は七台合体だったって、絶対に今考えただろ!
構想は以前からあったとかそういう問題じゃない!
こら、武装は駄目だぞ!
安全性を高めるためと言えば、なんでも許すわけじゃないからな。
次に大きく動いたのはザブトンの子供たち。
外のパレードに参加してもいいと伝えたが、参加するかどうかはザブトンが起きてから決めるらしい。
まあ、この場にいるのは冬眠しない組だからな。
それでも大きく動いているのは、衣装作りがあるからだ。
村のパレードと同じ衣装でいいと思うのだが、村と外では違う衣装でいきたいらしい。
五村の倉庫から、大量の布を運び込んでいた。
ん?
住人の衣装も作るから、外のパレードに参加する人たちのリストを急いでほしい?
わかった、頑張る。
ハイエルフやドワーフ、リザードマン、獣人族たちは、普段とかわらなかった。
いつも全力でやっているので、多少の変化では動じないらしい。
頼もしい。
外のパレードのあと、宴会をするのか?
魔王は王都でやるだろうけど、そっちに俺は不参加でかまわないと言われている。
参加希望者は王都の宴会に参加してもかまわないが……
面倒が多い?
まあ、知らない人が多いだろうからな。
トラブルは避けたい。
しかし、パレードに参加して宴会もなく解散はちょっと寂しい。
そうだな。
外のパレードが終わったら、村で宴会をやろう。
外のパレードに参加しない者も、参加してかまわないさ。
ああ、行進に参加した者だけが頑張るわけじゃない。
準備や、参加した者がするはずだった仕事を代わってくれたりするのだろうから。
鬼人族メイドたちに伝えておこう。
村のパレード同様、外のパレードに一村、二村、三村、四村も参加してかまわないと伝えている。
ただ、村を空にはできないので、参加メンバーの選出に熱が入っている。
俺からは、とくに各村からの参加人数を決めたりはしていない。
何度か確認されたが、各村で決めてくれてかまわない。
参加しないという判断もありだぞ。
いや、そう力強く参加しますと答えなくても……う、うん、期待している。
五村も外のパレードに参加するが、五村の人選はヨウコに任せた。
ただ、ヨウコはザブトンへの謝罪の練習で忙しいので、参加人数は五十人と決めて人選は村議会に一任したようだ。
村議会は設立以来一番の盛り上がりのようで、白熱した選考をしているようだ。
俺は問題ないと思うのだけど、五村で働くヒーとロクから、ヨウコを早々に戻すようにお願いされた。
選考が白熱し過ぎているようだ。
あと、五十人は少ないらしい。
ヨウコが忙しいので俺が代わりに行こうとしたら、ヒーとロクから謝られて止められた。
見苦しい争いを俺に見せるわけにはいかない?
いや、しかし……
ヒーとロクが頑張ってなんとかすることになった。
いいのかな?
天使族は、ティアは俺と同じ馬車に乗るだろうけど、マルビットをはじめとした大半の天使族が外のパレードに参加するかどうかを検討している。
以前、魔王は天使族との関係が密であることが疑われるといろいろと困ると言っていたのだが、さっき確認したらもう自由でいいんじゃないかとの返事をもらった。
ガーレット王国が魔王国に傾いているのは知っている人なら知っているだろうし、なるようになるんじゃないかと。
だったら天使族は悩まなくてもいいだろうと思うのだが、天使族としてはなるようにならなかった場合が怖いらしい。
それなら不参加でいいんじゃないかと思ったのだけど、参加して威容を示したい気持ちはあるというか強い。
「隠していましたが、天使族はチヤホヤされるのが好きでして……」
気づいていたよ。
まあ、余計なことは言わないので、十分に考えて結論を出してほしい。
あと、クーデル。
外のパレードで急降下爆撃の予定はないぞ。
何発までOKとか聞かれても返事は変わらないから、磨いている角付きの槍をしまいなさい。
クロとユキを含めクロの子供たちは、大きな動きはなかったけど小さい動きはあった。
落ち着かないのだ。
落ち着いているのは、序列で二十位ぐらいまで。
三十位前後が落ち着いていない。
四十位前後もそわそわしている。
五十位以降はちょっと諦めつつも、期待している感じ。
百位ぐらいになると、いつもとかわらない様子だな。
まあ、外のパレードに何頭参加するかは俺が決めることになっているからだろう。
魔王からは制限しないと言われたけど、クロたちは怖がられているらしい。
常識の範囲内にするべきだろう。
そうなると、クロたちの予想通り二十頭から三十頭ぐらいが無難だろうか?
各村の警備もあるしな。
ちなみに、各村の警備を考えたうえで参加可能な数は二百頭ぐらいになる。
……
二百頭で参加すべきか?
行進するだけだろ?
逆にクロたちが怖くないとアピールできるチャンスじゃないのか?
……
よし、二百頭で参加しよう。
そう決めて、俺はクロたちに伝えた。
喜んでもらえて、こちらも嬉しい。
ははは、屋敷の中で行進の練習は叱られるぞ。
ああ、頑張ろう。
ヒー&ロク「数万人の街で、五十人の参加者を決めろと言われても……」
村議会 「希望者が多過ぎる」
ヒー&ロク「村議会が、議員のみ参加とか言わなくて助かりました」
村議会 「さすがにその決断は(住人からの反発が)怖い」
村長 「クロたちの参加は二百頭だ!」
ヒー&ロク「そういう決断をする人だから……」
私事。
花粉症の薬、今年はよく効くけど副作用もキツイなぁと思っていた。
飲み始めて一週間目ぐらいで気づいた。
一回二錠じゃなくて、一回一錠、一日二錠だったことに。
飲み過ぎてた。
薬は用量、用法を守って飲みましょう。




