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神殿に案内


 大樹の村の近くの森で木材を調達し、【万能農具】でタヌキの神の像を彫った。


 無心で頑張ったけど、信楽焼しがらきやきのタヌキが出来てしまった。


 タヌキの置物と言われて、頭に浮かぶ玉袋の大きなやつ。


 予想はしていたけど、まさかそのままできるとは。


 かさかぶり、徳利とっくりと通帳まで持っているし。


 これ、どうなんだろう?


 まあ、とりあえず見せてみて評価を聞こう。


 俺はタヌキの神の像をリザードマンたちに頼んで、五村の北東、神社のある山にまで運んでもらった。


「……せ、性的ですね」


 ちなみにポンは男性……おすだ。


 だから赤面はしないが、視線はタヌキの神の像の股間に注がれていた。


 うーん、やはり玉袋が大きすぎるか。


 しかし、大きい玉袋にも意味があるんだよなぁ。


「子孫繁栄ですか?」


 いや、金運。


 大きければ大きいほどいい。


 ちなみに、ポンと同じタヌキの一頭はめすなので、赤面している。


「現実にはありえない大きさ……まる見え……おおう」


 ……


「前掛けをして隠しましょう」


 うん、そうだな。


 ほかに修正する箇所はあるか?


 木彫りじゃなく、ちゃんと焼き物でというなら考えるが?


「いえ、神を実際に見たことなどありませんから、指摘できる修正箇所はありません。

 素材にこだわりもありませんし……このままでいいと思います」


 そうか。


 それじゃあ、しばらくはこれをご神体の代わりということで祭ろう。


 ちなみに、銀狐族たちからは愛嬌あいきょうがあって親しみやすいと褒めてもらった。



 さて、神社に来たついででなんだけど、銀狐族たちの様子をみよう。


 銀狐族たちがここに来て十日ほどが経過している。


 環境に慣れてくれただろうか?


 …………


 銀狐族たちは、全員で集合住宅の一棟に住んでいた。


 赤狐族や黒狐族、丸顔狐族タヌキたちも一緒に。


 遠慮しているのかと思ったけど、そうではなくて仲間の姿が見えるほうが安心なのだそうだ。


 なるほど。


 それで……確認なんだけど、人の姿になれない狐たちも、ここで暮らしているのか?


 集合住宅の中は、狐天国だった。


 どこを見ても狐。


 ときどきタヌキと人の姿。


 山の中じゃなくていいのだろうか?


 山の中より安全?


 そうだろうけど……


 狭くはないか?


 大丈夫ならいいんだが。


 まあ、子供が増えて手狭になれば隣の棟にも移り住んでいくか。


 先の話になるだろうけど。


 しばらくは空き家になる残り十五棟の集合住宅の管理が大変そうだ。


 ん?


 隣の棟の台所とトイレは使っている?


 ははは、数が多いからな。


 かまわないぞ。


 管理の人手がいるときは、ヨウコに伝えてくれ。


 それで、玄関にあるこの板は?


 看板?


 使っている棟は『第一狐荘』、隣の棟を『第二狐荘』と名づけたので、看板をかかげるそうだ。


 なるほど。


 いいと思うぞ。



 集合住宅の棟から少し離れた場所には、大きな風呂と脱衣室がある。


 風呂も棟ごとに用意しようと思ったのだけど、燃料代を考えてこの形になった。


 銭湯みたいで悪くはないと思う。


 男女にもしっかりわかれているし。


 ただ、銀狐族たちは風呂に入るのかという疑問があるのだが……


「獣臭さを消すのに、ありがたいですね」


「温かいお湯ですので、嫌う者はいません」


「子供たちも、喜んで入っています」


 風呂上りの狐たちが、そう言ってくれる。


 使ってもらえているようで、なによりだ。


 お湯の交換など、手間がかかるだろうが、しっかりとな。


「はい。

 頑張ります」


 よしよし。


 おっと、いまは冬だ。


 風呂上りに油断すると風邪をひく。


 ちゃんとぬぐって、温かくするんだぞ。



 続いて拝殿はいでんに移動する。


 山の中腹にある本殿に対して参拝するための場所だ。


 賽銭箱はこの拝殿前に設置し、拝殿の中は儀式用のスペースとして活用する予定になっている。


 だが、現在は拝殿の中になにもない。


 必要なものがわからなかったから。


 この拝殿の奥の大きい扉を開くと、山の中腹にある本殿が見える仕様になっている。


 なかなかの景色。


 自慢できる。


 この景色を見るため、拝殿は高床式建築が採用されて周囲に比べて高い建物になっている。


 俺のミニチュアでは宿舎と同じ平屋だったのだけど、平屋のままだと本殿が見えないのでこうなった。


 現場判断での変更だ。


 このあたりの変更は自由にしていいと伝えているから、問題なし。


 ただ、拝殿前に設置予定だった賽銭箱さいせんばこに賽銭を投じるため、階段を登ってもらわないといけないのは不便だと思う。


 賽銭箱は階段の下に置くようにしよう。


 雨避けの屋根を設置すれば、問題ないだろう。


 今度、リアに頼んでおこう。



 そのまま拝殿横の神殿に。


 大きい建物だ。


 そして、中を小さい部屋に区切っているのだが、その小さい部屋は通路に対して片側だけにした。


 集合住宅のように小部屋を向かい合わせにすると、神たちも落ち着かないだろうとのニーズの意見が採用されたからだ。


 結果的に、小さい部屋の向かいにある壁も装飾に使えることになり、空間が広く感じられるようになった。


 悪いことではない。


 まあ、隣の範囲まではみ出さないように注意は必要だろうけどな。



 いくつかの小さい部屋を見てまわる。


 蛇の神や、虎の神、猿の神、象の神、牛の神、山羊の神……


 うん、まだまだ飾りが少ないが、見ていて楽しい。


 竜の神……


 この神に関しては十二支に入っているので、ドースに話を聞いた。


 竜の神はいるのかと。


 答えはどちらでもないとのことだった。


 竜は神によって生み出されたので、神の一種。


 なので神と扱ってもいいのだが、地上にいるので神ではないとのことだ。


 よくわからない。


 それで祭ることに関してはどうだと聞くと、ドースからは問題ないと言われた。


 それはよかったが、ご神体となる物がなかったのでドースになにかないかと聞いたら、俺が彫ればよかろうとのこと。


 それで彫ったのだけど、十二支に引っ張られたのか、ドースたちのような西洋竜ではなく、蛇に手足がある東洋竜の神の像になった。


 しかも、五頭。


 中央に一頭とそれを取り囲む東西南北に位置した四頭の東洋竜。


 その五頭全てが口を大きくあけ、怒り狂ったかのような表情をしている。


【万能農具】が力を入れた作品に感じられるな。


 迫力がある。


【万能農具】の知り合いなのかな?


 でもって、この東洋竜五頭の像をドースに見せたら、腰を抜かして驚かれた。


 本物かと思ったらしい。


 昔はこういったスタイルの竜もいたそうだ。


 ドースが頭の上がらない世代に。


 たぶん、ライメイレンも驚くとのこと。


 ライメイレンのお祖母ちゃんがこんな感じだったの?


 へー。


 それで、これをご神体代わりにしても?


「う、うむ。

 も、問題ないぞ」


 そう言われたのでご神体にすることになった。


 ただ、その会話の最中、ドースはけっして像を直視しなかった。


 よほど知り合いに似ていたのだろうか?



 そして銀狐族に設置を頼んで、初めて見たのだが……


 この竜の神の部屋だけ、装飾が完了しているな。


 ドースとライメイレンが家族や部下に命じた結果か。


 なるほど、めちゃくちゃ豪華だ。


 隣の部屋がかすむんじゃないかな?


 あと、素人の俺でもわかる貴重品っぽい物が並んでいるのはどうなんだろう?


 警備として悪魔族が数人、配置されているのね?


 それは安心……え?


 銀狐族が嫌がったりしなかったか?


 大丈夫?


 一緒に食事する仲?


 そうなの?


 銀狐族は他種族を嫌うって聞いていたんだけど?


 俺の奥さん(ハクレン)お父さん(ドース)の部下と説明したら、受け入れてくれた?


 それはよかった。


 ああ、それでも数日は警戒されたのね。


 なるほど。


 まあ、これから参拝客としていろいろな人が来るだろうし、他種族だからって敵意をふりまき続けるほど銀狐族も好戦的でもないか。


 ヨウコもそのあたりは厳しく指導しているらしいし、大きな問題にはならないだろう。


 神社の運営の心配が一つ減ったな。


 ん?


 参拝客?


 違った、ドライムだ。


 銀狐族に案内され、こちらにやってきた。


「村長も来ておったか。

 ここに先祖の像があると聞いて、奉納品をもってきたのだが……うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 ドライムは像を見て気を失った。


 少しして目を覚ましたドライムに聞いたら、ライメイレンのお祖母ちゃんに叱られた昔の記憶がよみがえったらしい。


 叫ぶほどか?


「叫ぶほどだ」


 そうか。


 あと、グラッファルーンやハクレン、ギラルも同じような感じになるから見せないほうがいいとのこと。


 わ、わかった。


 そう頷いて横を見ると、ギラルが像を見に来ていた。


 ……


 遅かった。





本年最後の更新になります。

今年一年、ありがとうございました。

来年も頑張ります。

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― 新着の感想 ―
村長の彫刻の腕、神の域に達したのか…www
多分ご先祖さま本人そのものなんだろうな……。 万能農具で彫ると村長が認識してなくても御本尊様の形になるからな……猫(魔神)とか創造神とか。(農神花さか爺バージョンからは目を逸らしつつ)
信楽焼たぬきがたぬき視点だと性的なの好き
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