宿舎に案内
前話で。
丸顔狐族を
丸顔狐族に修正しました。
すみません。
よろしくお願いします。
俺の発言で、丸顔狐族のポンとその仲間の二頭が動揺していた。
「ば、馬鹿な……私たちが狐じゃないなんて……」
「お、おじいちゃんたちが、私たちは狐だって言ってたのよ。
タヌキなはずはないわ」
「いや、俺は前々からそうじゃないかなって……」
あ、正確にはポンと仲間の一頭だけだな。
動揺しているの。
「待て待て待て……じゃなくて、待つんだコン!
丸顔狐族は、昔から狐の一族として立場を持っていたコン!
いまさら狐じゃないなんて、ありえないコン!」
代わりにヨウコが動揺している。
珍しい。
まあ、それはともかくだ。
たしかに俺の知識で判断するのは危ない。
ここは異世界だ。
前の世界の常識を持ち込んではいけない。
タヌキっぽい狐がいるのかもしれない。
なので専門家を呼ぼう。
《知識》を司る悪魔、ヴェルサ!
種族名とかを付けている悪魔だ。
彼女なら、丸顔狐族の正体がわかるだろう。
幸いにして、ヴェルサは五村にいる。
執筆活動に忙しいところ申し訳ないが、来てもらった。
「……タヌキね。
正確には里タヌキの丸顔族」
判定が下された。
やはり、タヌキだったか。
ヴェルサ、ありがとう。
今度、差し入れを届けさせるよ。
……差し入れは食べ物だから。
モデルじゃないから、期待しないように。
ん?
この神社のこと、始祖さんに相談したのかって?
一応、動物の神たちを祭る施設を建設するって話はしているよ。
ただ、詳しい話はまだしていない。
始祖さん、忙しいみたいだしな。
村に来ても、すぐにヴェルサのところに行くからなかなか会えなくて。
照れるな照れるな。
仲がよくてなによりだ。
ああ、始祖さんに会ったらこの神社のことを伝えておいてくれると助かる。
こっちが考えていたよりも早く完成しそうというか……ほぼ神社関係は完成している。
現在は五村と神社を繋ぐ道とその周辺に手を入れているところだ。
神社が本格的に運営を開始する前に、始祖さんにはチェックしてもらいたい。
賽銭を求めても大丈夫かとか聞きたいし。
大丈夫だとは思うけどね。
五村に戻るヴェルサを見送り、タヌキたちを見る。
「わ、私たちはタヌキだったのか……」
「目がくりくりしてて、狐たちのなかでもっともかわいい一族と言われたのは、私たちがタヌキだったから……」
「ヨウコさま、語尾をポンでお願いできますか?
ええ、ポンです。
不思議と頭に浮かびまして……
あ、親しみやすい。
やはり俺たちはタヌキだったんだ」
三頭は、タヌキと自覚できたようだ。
まあ、だからどうしたという話だがな。
「村長。
タヌキであったら移住はどうなるのかポン?
認めぬのかポン?」
ははは、そんなわけないだろ。
タヌキと指摘したのは排除したいからではなく、なぜ狐を名乗っているのかが気になったからだ。
狐だろうがタヌキだろうが関係ない。
ちゃんと規律を守るなら、認めるぞ。
「おおっ、さすが村長だポン」
ヨウコだけでなく、コンさんたちも喜んでいる。
心配させてしまったようだ。
申し訳ない。
好奇心が抑えきれず……
残念ながら疑問だった狐を名乗っている理由は知らないみたいだけど……
「私が生まれる前から、丸顔狐族はいたポン。
まさか、狐じゃないとは思わなかったポン」
まあ、丸顔狐族がタヌキだとわかったからって、関係が変わるわけじゃないだろ?
仲良くしていけばいいさ。
「そのとおりだポン」
……
語尾はポンのままで行くのか?
「おっとだコン」
うん、ヨウコはそっちのほうがしっくりくるな。
ああ、普段の口調が駄目ってわけじゃないぞ。
本当だ。
怒るな怒るな。
っと、時間を取ってすまなかった。
宿舎に移動しよう。
俺はヨウコと共に、銀狐族たちを宿舎に案内する。
宿舎は平屋建ての集合住宅だ。
玄関からまっすぐ伸びる廊下の左右に配置された合計十二の部屋。
廊下の突き当りは、裏口になっている。
そして、玄関すぐのところには共同の台所とリビング。
トイレは、玄関と奥の二か所にある。
それぞれ、六つ用意した。
合計十二。
うん、部屋単位で使うトイレを決めてもいい。
俺としては部屋ごとに台所と手洗いを設置したかったけど、上下水の管理と火災対策でこうなった。
大丈夫かなと思ったら、銀狐族は大喜びだ。
部屋の広さは十二畳ほどで、三人から四人家族を想定しているんだけど……
問題ない?
こんな広い部屋、初めて?
よかった。
この十二部屋ある集合住宅が、現在十六棟ある。
うん、建てすぎだと俺も思う。
でも、あとで追加するより最初っから多く作っておいたほうが建設費を抑えられると現場責任者が言うから。
どの棟を使うかとか、部屋割は任せるから好きにしたらいい。
ただ、宿舎全体の責任者と、使う棟ごとの責任者を決めてほしい。
これはコンさん以外でお願いする。
コンさんには神社全体を見てもらうつもりだから。
ん?
ああ、狐の姿で入ってもかまわないぞ。
ただ、狐の姿で建物に入るときは、足を拭くように。
板張りだけど、土足厳禁なんだ。
ヨウコの意向でな。
玄関と裏口の近くに靴箱があるけど、そこに水の入った桶とタオルを用意しよう。
うん。
あ、部屋に畳が欲しい者は、部屋がある棟の責任者に伝えるように。
その責任者が宿舎全体の責任者に。
最後に、宿舎全体の責任者がヨウコに申告してくれ。
しばらくはヨウコを窓口にするけど、ヨウコは五村の村長代行で多忙だ。
交代になる可能性がある。
そのあたりは了承しておいてくれ。
さて、君たちの当面の目標は、ここでの生活に慣れること……いや、ここでの生活方法を決めることだ。
宿舎を用意したけど、山の中で暮らしたいならそれでもかまわない。
強制はしないから、個々によく考えてほしい。
食事に関しては、しばらくはこちらで用意するが、将来的に自給自足を目指してもらう。
畑や果物のなる木が必要なら用意しよう。
ただ、畑の世話をするのも、果物のなる木を管理するのも君たちだ。
もちろん、農業の道具も用意する。
最初だけだがな。
畑に頼らず、神社での仕事でお金を得て、食糧を購入するのも手だ。
これもよく考えてほしい。
神社での仕事?
神社での仕事は基本、敷地内の施設の運営と管理だな。
簡単に言えば、祭られている神のお世話と、敷地内の警備と清掃だ。
ただ、これだけではお金が得にくいから、物販を考えないといけない。
アイディアはいくつかあるから、その気があるならヨウコに伝えてくれ。
これで説明は終わり……待った。
すまない。
大事なことを伝え忘れていた。
人の姿で神社で働く者は、この装束を身にまとってもらう。
男性が斎服っぽいもので、女性が巫女服っぽいものになる。
拒否権はない。
本当にすまない。
ザブトンの子供たちに、衣装の話をしたら乗っちゃって……
だから人の姿になるときに服ごとなのは避けて、この装束を身にまとうように。
獣耳と尻尾は出したままで隠さない。
そういう指示をもらっているんだ。
よろしく頼む。
うん、すまない。
それじゃあ、しばらくは自由にしていいから。
ん?
ああ、五村やシャシャートの街、五村の近くにあるエルフの里には、この山への立ち入りの制限を伝えているから、誰かが入ることはないと思うし、入るなら事前に連絡が来る。
だからといって無警戒なのは困るぞ。
山から好戦的な魔獣や魔物は排除したけど、中立的な魔獣や魔物はいるし、狐やタヌキ以外の動物も住んでいる。
獣としての用心は忘れないように。
そうそう、山の周囲にいるトレントたちはこっちで用意した警備だから、攻撃しちゃ駄目だぞ。
ひっかくのも止めてやってくれ。
よし、いい返事だ。
……?
銀狐族たちの輪から離れ、ポンがやってきた。
どうした?
「ここに狐の神を祭ると聞いていますが、ほんとうですか?」
ああ、ヨウコは不要だと言っていたが、銀狐族に神社を管理してもらうからには狐の神も祭ってやらないとな。
「おおっ、ありがとうございます。
それでその……私たちがタヌキであることは受け入れたのですが、タヌキが狐の神を祭っていいものでしょうか?」
そうか。
これまでずっと狐だと思って狐の神を信仰していたのに、タヌキとわかって祭りにくくなったか。
「はい」
だが、信仰は自由だ。
ポンが何者であろうが、信じる神を敬い、祭ればいいんじゃないかな。
「はい、私もそのようにしたいです。
ですが……その、それではタヌキの神に申し訳がなく……」
……そうか、そうだな。
タヌキがいるのだから、タヌキの神もいる。
そのタヌキの神に悪いか。
もっともな考え方だ。
うーむ。
では、両方を敬い、祭ればいいだろう。
「え?」
どうした?
駄目なのか?
「い、いえ、しかし……え?
両方?」
そうだ。
狐の神とタヌキの神、両方を敬い、祭ればいいだろう。
なにが問題なんだ?
「…………目が覚めた思いです。
両方の神を敬い、祭っていきたいと思います」
頑張るように。
ああ、わかっているだろうけど、ここには狐の神以外の神も祭るからな。
「承知しております。
ほかの神々に、無礼な真似はいたしません」
よろしい。
ポンが銀狐族たちの輪に戻っていった。
……
反省だな。
好奇心を優先して、デリケートな部分を指摘してしまった。
言っていいかと確認はしたが、あそこで言っちゃ駄目と言える者はいないだろう。
全員が丸顔狐族を狐だと思っていたのなら、俺がなにを言うかわからなかっただろうしな。
ポンたちには、なにか償いを考えないと……
そういえば、タヌキの神のご神体はなかったはず。
ご神体代わりに、タヌキの神の像を彫ってみようか。
それが償いになればいいが。
ポン「丸顔狐族がタヌキってこと、故郷に伝えに行ったほうがいいですかね?」
村長「さっきの様子から……パニックになりそうだな。やめておけ」
誤字報告で作中の「祭る」は「祀る」だろうと指摘されており、私も「祀る」のほうがいいと思うのですが、「祀る」は常用外なので使っていません。
すみません。
誤字報告、助かってます。




