狐たちの移住
関係する動物。
冬眠中だから忘れていたけど、ポンドタートル……亀がいたな。
でも、亀を含めると、エビとかカニも含めないと駄目なのかな?
などと考えながら、五村の北東に位置する山にできあがる神社を見ていた。
うん、できあがっている。
実は、建設が始まった段階で五村やシャシャートの街の商人たちが大挙して、協力させてほしいと言ってきた。
たぶん、俺が新しい事業を始めようとしていると勘違いしたのだろう。
そういったことじゃないと説明したのに、資金を提供されてしまった。
もちろん、ゴロウン商会からも。
どうしたものかと少し考えたけど、ヨウコからの気にせずに使ってやれとのアドバイスに従い……
ああ、失礼。
ヨウコはこう言ったんだ。
「蛇の神たちを祭る神社の建設という理由は伝えたコン。
商人たちがどう思っているかは知ったことじゃないコン。
遠慮なく使えばいいコン」
そのアドバイスに従い、遠慮なく資材を買い集めて、大工の手伝いをしてくれる人を千人ほど雇ったら、こうなった。
うーん、数は力だなぁ。
建物が次々に完成していく。
見事なものだ。
あと数日で完成するだろう。
ん?
五村に続く道も整備するからもう少しかかる?
そうだな。
それも考えないといけなかった。
まあ、普通の道で……
そう思ったけど、すでに石畳と灯篭が設置され始めているな。
東にある国々の雰囲気を採用した?
間違っていないから大丈夫だぞ。
うん。
悪くないと思う。
ところで、石畳の道の左右が広く整地されているのはなぜだ?
絶対に発展するから必要?
そうなのか?
ヨウコの指示?
ならば問題なし。
ヨウコが必要と言うなら、必要なのだろう。
異論はないよ。
ところで、大工を手伝う人は千人しか雇っていないのに、どう見てもそれ以上の数がいるのはなぜかな?
善意の手伝い?
ありがたいけど、タダ働きはさせられない。
しかし、だからと言って給金は出せない。
出してしまうと、雇われていなくても無理やり参加すれば雇われたことになるという、悪い前例を作ることになる。
だから俺にできるのは……
食事の用意だな。
近くにいたヨウコの部下に食事の調達を頼んだら、すでにヨウコが手配していた。
さすがだ。
それじゃあ、細かいことはヨウコに任せて俺は建物の内装を考えよう。
本殿や宿舎、社務所の内装はある程度決まっているが、決まってないのは麓に造る神殿の内装。
神殿内を小さい部屋に区切り、一つの部屋はだいたい十二畳ぐらいの広さで四十ほどの部屋数があるのだが。
この四十の部屋の内装がまったく決まっていない。
現状、部屋があるだけだ。
祭る神によって好みがあるだろうしな。
どうしたものか?
まあ、格差をつけるのも逆に問題か。
全て共通で、部屋の手前に参拝用の場所を用意し、奥にご神体を設置する場所を造る。
あとは信仰する者たちで好きに飾っていけばいいと思う。
…………
信仰する者が来ない神もいるかな?
その場合は……銀狐族たちに頼んで飾ってもらおう。
恥ずかしくない程度に。
加減が難しいかな?
まあ、そのあたりは銀狐族が来たときに改めて相談しよう。
っと、そろそろ日が落ちるな。
急いで帰らないと、村の夕食に遅れる。
リアたちや大工、大工を手伝ってくれる人たちにも声をかけて……
えーっと、冬だから徹夜作業は駄目だぞ。
ちゃんと帰るように。
灯りや暖を用意して、頑張ろうとしない。
夜の建設現場の警備は、五村の警備隊がしてくれることになっているから資材や道具が盗まれることもない。
安心して帰るように。
そうこうして数日が経過し、銀狐族がやってきた。
五村にではなく、神社が建てられた山に人目を避けて来るようにヨウコが伝えていたので、狐がいっぱいいても騒がれることはない。
子狐、かわいい。
しかし、無事の到着はよかったが、俺の予想より早い到着だ。
宿舎が完成していてよかった。
外に放り出す心配はない。
ところで、銀狐族は総勢で九十二人とコンは言っていたな。
人の姿になれるのが二十三人だったっけ?
人の姿が四十人ぐらいいるように思えるんだが?
「村長。
その質問の前に、しないと駄目なことがあるコン」
ヨウコに止められた。
しないと駄目なこと?
ああ、そうだった。
コンさんやキツさんが人の姿から狐の姿に戻り、狐姿の銀狐族が揃って俺の前に集合する。
そして、俺に一礼。
狐姿のコンさんが口上を述べる。
「我ら銀狐一族、総勢九十二人……いえ、九十二頭。
移住のお誘いを受け、参りました。
我が一族の命と忠誠、全て村長に捧げます」
これに対し、俺が偉そうに頷いて言う。
「その方らの命と忠誠、たしかに預かった。
励め」
銀狐族たちの揃った遠吠えが大空に響く。
これで移住者の受け入れの儀式は終わり。
こんなことしなくてもいいと思うし、コンたち以外の移住者にはやっていない。
しかし、ヨウコが大事な儀式だと言って譲らなかった。
「人の姿になれるとしても本質は動物。
最初にしっかりと上下を決めておかないと、あとで面倒なことになるコン」
そういうものかと納得はした。
無事に終わってなにより。
さて、その儀式に参加していない人の姿の者たちを俺は見る。
誰?
銀狐族じゃないってことだよな?
あ、ヨウコの知り合いらしい。
俺から挨拶すべきかなと思っていると、ヨウコが仲介してくれた。
「こちらにおわす御方が我の仕える村長だコン。
無礼は許さんコン」
えーっと、ヨウコ。
脅してる?
相手の腰が引けているよ?
「大丈夫だコン。
すまぬが挨拶を受けてやってくれ」
ヨウコがそう言ったからか、数人が前に出て片膝をついた。
「私は赤狐族のセキと申します」
「私は黒狐族のノワールです」
「私は丸顔狐族のポンです」
俺の名はヒラクだ。
よろしく。
えーっと、なぜここに?
「このたびは銀狐族の窮地に手を差し伸べていただき、まことにありがとうございます。
事情を知るも、助けることのできなかった私どもも安堵しております」
セキが代表して説明してくれるようだ。
つまり、銀狐族が心配で移住先を見にきたということかな?
「さらに一歩、踏み込みまして。
ヨウコさまと銀狐族のお手伝いができればと馳せ参じた次第です。
私どもも、こちらに移住させていただきたく願います」
銀狐族に話は通しているよな?
じゃないと一緒には来ないか。
そう思ったけど、コンさんが狐姿のまま首を横に振った。
「話は聞いておりますが、一切の返答をしておりません。
全ては村長とヨウコさまの決めることです」
なるほど。
ヨウコは?
「知っている一族だけど、知っている狐はいないコン。
だから、事前に話も聞いていないコン。
村長の判断に従うコン」
そうか。
確認だけど、移住するのはここにいる者たちで全員かな?
「はい。
我らはそれぞれの一族から、ヨウコさまと銀狐族を手伝うように選ばれた者です」
えーっと、あ、数えやすいように並んでくれてありがとう。
……十八人か。
宿舎は大きく建ててある。
許容範囲だ。
正直、さらに百人ぐらい増えても大丈夫。
人の姿になれるということだし、神社の運営には助かるな。
わかった、ただし……
「はっ。
村長、ヨウコさま、銀狐族の指示には従います」
よかった。
そのあたりが一番面倒な部分だからな。
それじゃあ、君たちの移住を受け入れる。
改めて、よろしくな。
「はっ。
我らの命と忠誠、全て村長に捧げます」
おっと、そうだった。
「その方らの命と忠誠、たしかに預かった。
励め」
「ははっ」
そう言って、赤狐族のセキが狐の姿に戻った。
赤毛というか、オレンジ色の毛だな。
おお、尻尾もふさふさ。
ほかの者たちも狐の姿に戻っていく。
赤狐族は……全部で十頭だな。
黒狐族は五頭。
残りは丸顔狐族で三頭か。
黒狐族は真っ黒な毛だな。
いやいや、問題ないぞ。
尻尾がしゅっとしたタイプでも、まったく問題ない。
問題ないぞ。
問題は……丸顔狐族だな。
うん、君たち。
あ、尻尾がふさふさなのはわかっているんだ。
なにせ、一番ふさふさだからな。
顔も種族名通りに丸いし。
えーっと、そうじゃなくて……
言っていいのか迷うけど、気になるから言うぞ。
いいかな?
ありがとう。
それじゃあ、言うぞ。
丸顔狐族って、タヌキだよね?
狐じゃなくて。
俺の発言に、全員が驚いていた。
え?
ヨウコも驚くの?
丸顔狐族のポン「なん……だと……」




