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ヨウコの説明

ナナ   五村で働くマーキュリー種。五村の密偵。

ヒー   五村で働くマーキュリー種。五村の軍の中心。

ロク   五村で働くマーキュリー種。五村の文官。

フタ   大樹五村間の転移門の管理をしているマーキュリー種。

ミヨ   シャシャートの街で働くマーキュリー種。


ベル   四村で働くマーキュリー種。マーキュリー種の代表。

ゴウ   四村で働くマーキュリー種。ベルのサポート役?

ヨル   温泉地で働くマーキュリー種。兵装担当。


キネスタ 元エルフ帝国の皇女。現クロトユキの店長代理。


 銀狐族のコンさんは一命を取りとめた。


 かなり危ないところだったらしく、世界樹の葉があってよかった。


 コンさんは意識を取り戻したが、すぐにまた気を失ってしまった。


 現在はヨウコ屋敷の一室で、大きいきつねの姿のまま寝ている。


「面倒がなくていい。

 起きていたら、自決するだなんだとうるさいだろうからな」


 自決?


 どうして?


「村長に殺気を向けたからな。

 一族を守るために死んでびるということだろう」


 殺気?


 ああ、だから【万能農具】の槍が勝手に出たのか。


 暴走したのかとあせったけど、俺を守ろうとしてくれたんだな。


 そして、ヨウコがコンさんを押さえたのも納得。


 しかし、なぜ急に殺気などを?


 いや、俺が断ったからだろうけど。


「そのあたりの説明と、こやつらの現状を説明したいのだが……

 寝ている者の横でする話ではない。

 和室に行くぞ」


 いいけど、コンさんはどうする?


 起きたら自決の可能性があるんだろ?


「ザブトンの子が見張っておる。

 知らぬうちに死ぬことはない。

 安心せよ」


 ヨウコの視線を追って天井を見ると、数匹のザブトンの子供がいた。


 なるほど、任せたぞ。



 たたみの上は落ち着くなぁ。


 そして、コタツ。


 うん、いいね。


 五村は冬でもそこまで寒くはならないけど、冬は冬。


 小山とはいえ山頂にあるヨウコ屋敷では、コタツはありがたい存在になる。


「村議の者や我の部下が、ここのコタツを知って強請ねだって来おった。

 買いたいならゴロウン商会に頼めと言っておいたので、マイケルから村長に話が行くかもしれん」


 了解。


 この部屋にまねかれるぐらいの関係者なら、融通ゆうずうはしよう。


 何人ぐらいだ?


「フタ、ロク、ナナ、ヒーの四人は確定だ。

 あと、ミヨも求めていた。

 こっちはゴロウン商会ではなく、褒賞メダルで求めるかもしれんな」


 五村やシャシャートの街で働くマーキュリー種の五人か。


 実は四村よんのむらのベルやゴウのところや、温泉地のヨルのところにはコタツがある。


 普段の頑張りから考えても、褒賞メダルに関係なく渡してもいいかもしれない。


「村議では……三人ほど、この部屋から出たがらんかった。

 ここに住むとまで言っておったな。

 あと、聖女とピリカ、元四天王の二人……そう、名の長い者とその相方だ」


 結構な数になりそうだな。


「マイケルが調整するであろうから、無茶な数は頼まれんだろう。

 ただ、クロトユキの店長代理が、コタツを店に設置できないかと言っておった」


 クロトユキの店長代理?


 キネスタか。


 店の冬仕様としてコタツを設置するのは悪くないか。


 検討しておこう。


 ところで、キネスタはなにをしにここに来てたんだ?


「新商品を見せにだ」


 ヨウコに?


「うむ。

 村長代行として、村長が経営している店の商品は知っておかねば困るからな」


 ああ、雑談などで話に出たときに「知らない」とは言えないか。


 すまない。


 気が回っていなかったな。


 今度から、新商品ができたらヨウコにも見せよう。


「実際に店で出すかどうかは店長代理に任せておるのであろう?

 今のままでかまわん。

 出していない商品を知って、下手に話題に出しても迷惑であろう」


 その心配もあるか。


 それじゃあ、いまのままでと。


「……さて、落ち着いたか?」


 ん?


 ああ、そうだな。


 少し前の自分は、コンさんを刺したと動揺していた。


 コンさんが殺気を放ったからとわかってもだ。


 うーん。


 慣れないと駄目なんだろうけど、慣れても駄目な気がする。


 まあ、この話はあとだ。


 ちょっと考えた程度で結論が出て、覚悟が決まる話でもない。


 いまはヨウコの話を聞こう。


「では、あやつらの現状と願い、あとはあやつの行いの説明をするとしよう」


 頼む。


「と言っても、我も詳しくは知らぬのだがな。

 わかる範囲での説明になる」


 うん。


「あやつら銀狐族は、困窮こんきゅうしておる。

 一族の数が減り、縄張りが減り、さらには外部からの仕事も減った」


 外部からの仕事ってのは、コンさんが言ってた暗殺のことか?


「そうであろう。

 生活の糧を得るための手段だ」


 ……なるほど。


「まあ、暗殺だけが仕事ではないはずだ。

 我の知っておる時代では、情報収集や護衛などの仕事もしておった。

 今回のセイテンと共にやってきたのも、護衛の仕事であろう」


 じゃあ、どうして暗殺なんてアピールしたんだ?


「もっとも金になったのがそれなのだろう」


 あー、なるほど。


「そして、あやつらが求めるのは安住の地。

 生きるにしろ、子を増やすにしろ、安心して住める場所は必須だ」


 ふむ。


 コンさんにも言ったが、五村に移住するのは駄目なのか?


「あー……銀狐族の全てが人の姿になれるわけではないからな。

 五十年から百年ほど生きた個体が、人の姿になれる」


 そうなのか。


「うむ。

 しかし、人の姿になれん銀狐族は、ただの狐だ。

 人に狙われる」


 ……


「銀狐族は、珍しい銀毛だからな。

 毛皮は珍重ちんちょうされる」


 …………


「それゆえ、銀狐族は他種族を好まん。

 コンやそれに同行して来た者は五村に住めても、ほかの者は厳しいと言わざるをえん」


 同行してきた者?


「ああ、コンはセイテンの護衛で来たからな。

 何人か連れて来ている」


 そうなのか?


 それじゃあ、コンさんのことを知らせないと、ややこしいことにならないか?


「ザブトンの子がすでに捕らえておる。

 問題ない」


 え?


 捕えているの?


「当然だ。

 コンと同じように行動されてはかなわんからな。

 一部屋にまとめて閉じ込めただけだ。

 無体むたいな真似はしておらん」


 そうか。


 よかった。


 ……しかし。


 今回の件。


 雇ってくれじゃなく、保護を求めてくれればなんとかできたと思うのになぁ。


「困窮しておるとはいえ銀狐族にもプライドはある」


 ああ、まあ、そうか。


「ただ、対価が暗殺することでは、村長も困るであろうが」


 うん、困った。


「銀狐族を使って暗殺せねばならん相手などおらんからな」


 相手がいても暗殺なんかしないぞ。


「そうであったな。

 村長なら正面から乗り込むであろう」


 乗り込まない乗り込まない。


 まったく。


 ああ、今回の件はここだけで収めてくれ。


「ん?

 なぜだ?」


 村の者に知られると、揉める。


「……たしかにそうだな。

 我としても、ここで収めてもらえると助かる。

 うむ、とても助かる」


 報告はするけどな。


「……」


 ヨウコが凄く困った顔をした。


 しかし、俺としては五村であったことを黙っているのは難しい。


 刺したこととか、相談とかするだろうしな。


「仕方があるまい。

 それで、コンが殺気を放った理由なのだが……」


 俺に力を見せようとか、そういったことだろ?


 理解しにくい異文化だとは思うが、馬鹿にはしない。


 コンさんはコンさんで必死だったのだろう。


 交渉の仕方は覚えてほしいが。


 その後、ヨウコからいろいろと銀狐族の話を聞いた。



「そろそろ宴会に行かねばならん。

 ニーズの店に行くぞ」


 そうだったな。


 あー、コンさんとかコンさんの同行者は?


「セイテンの謝罪を受けて開く宴会だ。

 そこに揉めているコンたちはさすがに呼べん」


 そうなるか。


「それと、今回のコンの行動は、護衛として雇ったセイテンの面子めんつを潰した形になる。

 我がセイテンに事情を説明して、謝って収めるつもりだ」


 ヨウコが?


「我がいたからコンが動いたところもあるからな。

 これぐらいはしてやらんと」


 わかった。


「ああ、確認するが……

 村長はコンのことでセイテンを責める気は?」


 無関係なんだろ?


 ないよ。


「助かる」


 いやいや、ヨウコにはいろいろと助けてもらっているからな。


「その言葉、感謝する。

 あと、できればあやつらにもそう伝えてもらえるだろうか?」


 ん?


 ヨウコがちらりとやった視線の先を追うと……


 ザブトンの子供たちがいた。


 拳大サイズではあるが、古参のザブトンの子供たちだろう。


 風格がある。


 その古参のザブトンの子供たちが、足でヨウコを招いていた。


 宴会に参加するより先に、こっちに話があるだろうという態度。


 怒っているようだ。


 ああ、俺を襲ってきたコンさんと引き合わせたことで怒ってくれているのか。


 ありがとう。


 しかし、ヨウコも用心してザブトンの子供たちを部屋に入れたんだろ?


 そこまで怒らなくても……


 わかった。


 だが、セイテンとの宴会にヨウコ不在は困る。


 ヨウコとの話は、宴会のあとにしてもらえないだろうか?


 助かる。


 ということで、ヨウコ。


「わかっておる。

 飲みたい気分ではあるが、宴会では飲む量を減らす」


 それがいいと思う。


 酔っぱらっていたら、さらに怒られるからな。


 まあ、ザブトンの子供たちの話し合いには、頃合いをみて仲裁に入るから。


「うむ。

 できるだけ早く入るよう頼むぞ。

 絶対だぞ。

 見捨てたら、泣くぞ」


 ははは、さすがに泣かせるわけにはいかない。


 しっかりと仲裁しよう。


 ……


 あ、じゃあ、俺も宴会で飲み過ぎてはいけないな。


 注意しよう。





ザブトンの子供たち  村長とヨウコの話が終わるのをずっと待ってた。

ヨウコ        村長と一緒にいれば先延ばしできると思ってた。

寝てるザブトン    起きたら絞めると心に誓った。




説明回は、どうしても長くなる。

矛盾がないかとか、説明不足はないかとか見返す回数が、普段の倍以上になるので。


コンたちがどうなるかは、次回で。

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― 新着の感想 ―
[一言] 交渉が出来ない(話術がない)主人公にやり方を学べと言われる銀狐。 暗殺以外に護衛も生業にしている割に、暗愚なのか。 そりゃあ滅びる寸前だわ
[良い点] ヨウコずる賢いw ザブトン怖い
[良い点] 版画の多色刷りのように段々と絵が完成していく手法 大好きです [一言] 説明不足になるが、部外者に大樹の村の話はできない 村長の方が強いと言い態度でも示す → 伝わらず 銀狐族の生業を知…
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