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冬のとある日

ナート    獣人族の女の子。ガットの娘。ウルザの妹分?

トライン   鬼人族。アンの息子。

イースリー  ウルザの学友。


オーロラ   天使族。ティゼルの妹。

ローゼマリア 天使族。グランマリアの娘。

ララーデル  天使族。クーデルの娘。

トルマーネ  天使族。コローネの娘。



 アルフレートが、リリウス、リグル、ラテの三人とまた出かけるようだ。


 今日は一村いちのむらに行くらしく、クロの子供たちの護衛の数が多い。


 途中の川で落ちないようにな。


 気をつけて行くんだぞ。


 そして、少し遅れてついていくハイエルフの護衛たち。


 ……


 前に見たときより棒が長くなっているが大丈夫か?


 歩き方も、大股というか足を大きく上げて……


 もこもこの防寒着もさらに厚くなっていることから、なんだか違う生物のようだ。


 いや、迷彩めいさいとしては正解なのかな。


 子供たちをよろしく頼む。




 アルフレートたちを見送ると、俺は屋敷の遊戯室に移動する。


 遊戯室の一角では、人だかりができていた。


 その人だかりの中央には、イースリー、ウルザ、ナート、トラインが囲む麻雀卓。


 子供大会かな?


「違う。

 最強位決定戦だ」


 近くで見ていたドライムが教えてくれた。


 なんでも、ここ最近の麻雀の成績上位者が揃った卓らしい。


 へー。


 イースリーはともかく、ウルザやナート、トラインが強いのは驚きだ。


 少し見ていると、誰もがれない流局りゅうきょくが多い。


 また、上がったとしても点数が小さい。


 あまり見所がない。


「なにを言う。

 高度な戦いが行われているぞ。

 ほれ、誰かに大きい手が入ると、残りの三人で潰しにかかっている。

 今回はウルザの手がいい。

 だが、それを察してナートとトラインが鳴いてウルザの手番を減らし、その隙にイースリーが上がりを目指している」


 それだとイースリーが上がって終わりじゃないのか?


「ここでイースリーがナートとトラインの働きを無視して大物手を上がったら、その次からイースリーは三人に徹底して狙われる。

 さすがのイースリーも、それは遠慮したいのだろう。

 わざと手役を潰し、安手で上がろうとしている」


 へー。


 しかし、それだと、どうすれば決着がつくんだ?


「もちろん、このままでは勝負がつかない。

 だから、どこかのタイミングで抜け出す。

 周りにいるものは、それがいつかと見守っておるのだ」


 見るのにも技量がいるのか。


 俺にはわからんな。



 ところでドライム。


 あっちの卓はなんだ?


 ドースにギラル、ドマイムにクォルンで囲んでいるが、麻雀を教えているのか?


「あそこは最弱王決定戦だ。

 一応、父に決まったのだが抵抗してな。

 麻雀に詳しくない者を引き込んで、継続している」


 あ、うん、わかった。


 ドライムは抜けられたんだな。


「この村には長くいるほうだからな。

 麻雀にも触れる機会はほかの者より多い」


 それはなにより。


「こっちも質問だ。

 アルフレートたちが出歩いているが、なにをやっているのだ?」


 ん?


 ああ、王都にいたときの生活を教えてまわっているんだ。


 村の住人全員が屋敷にいるわけじゃないからな。


「わざわざ自分で行って、語っているのか?」


 本人がそうしたいって。


「ふむ。

 王として育っておるな」


 そうなの?


「うむ。

 喜ばしいことだ。

 私も協力は惜しまん。

 必要なときは声をかけてくれ」


 わ、わかった。


「遠慮なぞせんでいいからな。

 わははははは」


 あ、ありがとう。


 アルフレートたちにも伝えておくよ。


 俺はもう少しだけイースリーたちの麻雀を見物した。




 屋敷の客間の一室に、珍しく猫たちが勢ぞろいしていた。


 父猫のライギエル、母猫のジュエル。


 姉猫のミエル、ラエル、ウエル、ガエル。


 妹猫のアエル、ハエル、ゼエル、サエル。


 虎のソウゲツの姿はない。


 つまり、猫たちだけの会議かなにかかな?


 ……


 これは会議ではなかった。


 母猫のジュエルが姉猫、妹猫たちを叱っているだけだ。


 父猫のライギエルはこの場から離れたそうだが、その素振りを見せるとジュエルに叱られると考えて、じっとしている。


 あ、俺に気づいた。


 助けてとサインを送ってくるんじゃない。


 ほら、姉猫や妹猫たちも俺に気づいたから、一斉に俺の背後に走って隠れた……違うな。


 俺の足を押して、俺をジュエルに差し出した形だ。


 俺を巻き込むんじゃない。


 で、なにが原因で叱られているんだ?


 窓から外を見たらわかる?


 窓の外を確認。


 なんだろ?


 雪景色の中庭だが……とくに変わったことはないと思うが?


 手前?


 雪の塊がいくつかあるが……


 あ、わかった。


 雪ダルマだ。


 たぶん、複数体あったであろう雪ダルマが、無残にも全て壊されている。


 猫たちが壊したのか?


 魔法のまとにしたと。


 はぁ。


 誰が作ったか知らないが、一生懸命に作ったのだろう。


 それを壊すのはよろしくない。


 もうちょっと、叱られているように。


 こらこら、俺に抗議するんじゃない。


 反省のポーズで、ジュエルから叱られなさい。


 ん?


 ライギエル、どうした?


 あの雪ダルマを作ったのは天使族?


 ティゼルやオーロラ、ローゼマリア、ララーデル、トルマーネなど村の若い子たちのために頑張っていたと。


 見せ終わってはいるが、壊れたところを見せるのは忍びない。


 なんとかならないかと?


 たしかにその通り。


 わかった。


 雪ダルマを直しておこう。


 もとの形を知らないから、天使族たちにも声をかけて。


 ああ、一緒に行って謝ってくれるのか。


 すまないな。




 雪ダルマの事情を話したら、ティアが魔法でさっと直した。


 凄いな。


「ゴーレム操作の魔法の応用です」


 へー。


「しかし、その猫たちもやりますね」


 ん?


 どういうことだ?


「雪ダルマが壊れないように防御魔法を張ってあったはずですし、万が一、壊されたとしても爆発する仕掛けの痕跡がありました。

 猫たちは防御魔法を突破し、なおかつその仕掛けを回避したのですから、やりますねと」


 ……


 村で、なにを作っているんだ!


 危険物を設置するんじゃない!


「いえいえ、雪ダルマが冬のあいだ持つように防御魔法を張るのは基本です」


 爆発するのは?


「散り際は美しくという方針ですね。

 雪ダルマに抱き着いていても、死なない威力ですよ」


 本当だろうな。


「嘘なんか言いませんよ。

 中庭にはにわとりもいますし、子供たちも歩くんですから」


 わかった。


 だが、防御魔法はともかく爆発する仕掛けは禁止だ。


 周知徹底するように。


「はーい」



 姉猫、妹猫たちの事情が変わった。


 変な仕掛けがあったから攻撃した可能性がある。


 姉猫、妹猫たちは村の安全のために、雪ダルマを攻撃したのだ。


 そう思った俺に抱えられていたライギエルが「ないない」と首を横に振った。


 そうか、ないか。




 日が暮れる少し前。


 アルフレートたちが戻った。


 護衛のハイエルフたちが普通に歩いている。


 なにかあったのか?


 一村の住人にハイエルフたちが魔物と間違われ、攻撃された?


 あー、アルフレートたちを見守っているつもりでも、視点を変えればアルフレートたちを追いかけているようにも見えるもんな。


 怪我人は?


 なし?


 アルフレートたちがすぐに止めたと。


 よかった。


 あとで一村には俺から謝っておくよ。


 おどろかせてすまなかったと。





トライン 「ツモ! 三千、六千!」

村長   「大きいがりだ。これで流れがトラインに行くかな?」

ドライム 「いや、上がるときに失礼と言っていない。まだだ」

村長   「失礼ってなんだ?」

ドライム 「掛け声だ。ぬっ、まずい! トラインの背中が煤けている!」

村長   「え? なんで? え? 急に?」

ウルザ  「一つさらせば、なにかいろいろさらす……チー!」

ドライム 「ウルザの詠唱が始まった! これは大きく場が動く!」

村長   「だから、どういうこと!」

ドライム 「見てればわかる!」

ナート  「そろそろ私も混ぜてもらおうかな、ポン! そこから流れるように安牌切り!」

イースリー「安牌と言ってトスしないでください……ロンです。千三百」

ウルザ  「くっ、潰された」

トライン 「危なかった……いまのうちに背中の煤を払わないと」


こんな感じでやってました。





天使族A 「これが雪ダルマです!」

天使族B 「おおっ! たくましい!」

天使族C 「子供たちの成長を願い、大きい雪ダルマをいっぱい作りましょう!」

天使族D 「そうですね! 頑張ります!」

天使族E 「しかし、雪ですから壊れやすいのでは?」

天使族F 「防御魔法は基本でしょう」

天使族G 「なるほど」

天使族H 「完成! すごい! 頑張った私たち!」

天使族I 「しかし、春になれば溶けますよね?」

天使族J 「雪ですからね」

天使族K 「溶けて中途半端な姿をさらすのは無様です。爆破する仕掛けを作りましょう」

天使族L 「いいですね! こんな感じですか!」

天使族M 「完璧です! ティゼルさまたちに見せましょう!」


ローゼマリア、ララーデル、トルマーネ「きゃっきゃっ」(大喜び)

ティゼル 「すごい! なんて綺麗な防御魔法!」(大喜び)

オーロラ 「内にも緻密な仕掛けが!」(大喜び)


雪ダルマを見せたとき。


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― 新着の感想 ―
麻雀上手い人は山に積み込むんだが、全自動雀卓とか作ったのかな?
[気になる点] 護衛と不審者を間違えた一村が問題。 それに対しては、謝罪ではなく注意が普通
[一言]  都会の深夜 廃屋や空き地やビルの隙間で猫の会議とか 集会とか 人間には解らない習性があったような 野犬は群れるけど 野良猫は群れないような覚えがある じゃりン子チエのネコは 群れていたけど…
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