閑話 心の整理
こんにちは。
はじめましての方、はじめまして。
一般天使族です。
名前?
名前は勘弁してください。
目立ちたくないんです。
派閥とかも言えませんって。
偉い天使族の後ろに並んでいる一人だと思っていただければ十分です。
名前がないと不便?
では……スクルドとお呼びください。
はい、偽名です。
昔の偉い天使族の名前を参考にしました。
さあ、どうぞそうお呼びください。
ほほほほほ。
レギンレイヴさまから、姉の名を使うなと叱られました。
長からは、スクルドさまと同じ働きを期待していいのかなーって嫌味を言われ、補佐長からはボディに一発いただきました。
無言でのパンチはずるい。
避けられないじゃないですか。
まあ、調子に乗った私が悪いのですけどね。
さてさて。
私はいま、大樹の村にいます。
大樹の村です。
長や補佐長から話は聞いていましたが、本当にあったんですねー。
こんな危ない場所に村が。
そして、本当にいたんだ。
ティアさまやグランマリアさま、クーデルさま、コローネさまを娶った男性が。
まさか実在するとは。
孫が欲しいルィンシァさまやラズマリアさまたちの妄想だと思っていたのに。
ティアさまの長女であるティゼルさまとはお会いできませんでしたが、次女のオーロラさまとはお会いできました。
うん。
さすがはティアさまの娘で、ルィンシァさまの孫だ。
優秀そう。
いや、すでに私より上かもしれない。
ここは変にお姉さんぶらずに、丁寧に接して将来に繋げるのが良いでしょう。
わかっています。
わかっていて、逆らうのが私。
全力でお姉さんぶりました。
ついでにティアさまやルィンシァさまの失敗談も話しました。
オーロラさまは困った顔をしながらも、笑ってくれました。
ふふふ、かわいらしいですね。
ルィンシァさまから呼び出されました。
屋敷の裏ってどこ?
狂暴な鶏がいる中庭のことですか?
まだこの村に詳しくないんですけど?
あ、ルィンシァさまがいた。
屋敷の裏って、大きい木の裏のことだったんですね。
……
ルィンシァさまの無言の打撃を私は避けます。
同じ打撃を二度くらうほどボケてはいません。
そして、殴ってきたということは殴り返しても大丈夫ということ!
ふははは。
普段の恨みを込めての左連打。
それをルィンシァさまが腕で払う。
だが、甘い。
それは私の仕掛けた罠だ!
ルィンシァさまが左に意識を寄せたのを見ての必殺の打ち下ろしの右ストレート!
上体逸らしで避けられた?
そんなあっさり?
読まれてた?
いや、それよりもまずい。
私の脇腹ががら空き。
ルィンシァさまが踏み込んだ。
巻き込むような打撃がくる。
この距離だ。
避けられない。
ならば耐えろ!
頑張れ私の脇腹!
あばら骨の一本や二本はくれてやる!
そのあとで反撃だ!
ルィンシァさまの拳が私の脇腹に当たった。
……
無理、耐えられない。
なにこの威力!
そんなに失敗談を話したのが駄目だったのー!
孫にいい顔したいお祖母ちゃんって、こんなに怖いんだー!
私の身体は横にくの字に曲がりました。
通りかかった白いスライムに治癒魔法をかけてもらい、復活しました。
危ないところでした。
とっさに翼を出して浮いていなければ、死んでいたでしょう。
まあ、浮いたのでごろごろと遠くまで飛ばされてしまいましたが。
ここはどこでしょう?
そして、そこに控えてらっしゃるのはティアさまですか。
そうですか。
わかっています。
いいでしょう。
もう一試合です。
あ、白いスライムさん。
申し訳ないけど、もう少しだけここにいてもらえませんか。
うん、すぐにお願いすることになると思うから。
ええ、すみません。
このお礼は必ず。
では、行くぞ最強!
最強は最強だから最強なんだなぁ。
空を見ながら、私はそう思います。
悔しくないと言えば嘘になります。
でも、私は前線でばりばり戦うほうではなく、後方でいろいろと手配したり準備したりするほうなので。
まあ、登る山が違うと思っておきます。
ええ、負け惜しみです。
あ、えーっと、インフェルノウルフの誰かはわかりませんが、ご心配をおかけしました。
白いスライムさんに治癒魔法をかけてもらったので大丈夫です。
デーモンスパイダーさんも、ありがとうございます。
ええ、自分で起きられます。
あ、屋敷の場所だけ教えてもらえますか?
ちょっと現在地がわからなくて。
飛べばすぐにわかるのですけど、打撃戦のあとで飛ぶのはちょっと危ないですから。
とくに殴られた側は。
あちらですか。
すみません。
案内まで?
助かります。
私はインフェルノウルフとデーモンスパイダーに案内され、屋敷に戻りました。
グランマリアさまの娘、ローゼマリアさま。
クーデルさまの娘、ララーデルさま。
コローネさまの娘、トルマーネさま。
三人に挨拶をしました。
お姉さんぶりました。
ええ、グランマリアさま、クーデルさま、コローネさまの失敗談をたっぷりと話してあげました。
まだ小さいので話の意味はわかっていないでしょうが、喜んでもらえたようです。
なによりです。
では、屋敷の裏に参りましょうか。
グランマリアさま、クーデルさま、コローネさまの順番でいいですか?
さすがに三対一はなしですよ。
なしですからね?
ん?
なんですか?
どうして、殴られるようなことをと?
まあ、簡単に言えば八つ当たりです。
こちとら必死でガーレット王国を支えていたのに、あっさりと潰されましたからね。
不満もありますよ。
天使族の一員ですから、長の指示には従いますが……
心の整理がつきません。
なので、こっちの勝手な心の整理に、つき合ってもらっているわけです。
すみませんね。
迷惑をかけて。
あと、多分ですが同じようなことを何人かすると思いますが、遠慮なくつき合ってやってください。
ああ、他種族には喧嘩を売りませんし、売らないように指導はしていますよ。
勝てそうな相手のほうが少ないですし、勝てそうな相手に勝っても後ろが出て来るでしょ?
村長?
あれが一番の危険人物じゃないですか。
わかりますよ。
これでも、貴女たちより長く天使族をやっていますからね。
一応、これでも私、マルビットさまやルィンシァさまより上の世代なんですよ。
そうは思えないってよく言われますけどね。
さて、ぐだぐだ喋ってもなんですから、そろそろやりましょうか。
ルィンシァさま、ティアさまとの二試合を経験して強くなった私をお見せしますよ。
ちょうど、白いスライムさんにも来てもらえたようですからね。
一般天使族 「レギンレイヴさまよりはさすがに年下」
キアービット「お母さまの失敗談を教えてもらえると聞いて!」
一般天使族 「長の失敗談は、天使族の威厳に関わるからさすがに……」
マルビット 「キーちゃん、屋敷の裏に行こっか」
インフェルノウルフ「あれ? この人……」
デーモンスパイダー「気絶しない?」
一般天使族 「経験値が違うのですよ、経験値が!(過去に気絶してるから耐性がある)」




