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浮遊庭園

 四村よんのむらでの用事は終わったが、万能船の出航準備ができていない。


 トウの話では、あと二時間ほどかかるそうだ。


 なので、四村をぶらぶら。


 フェンリルたちは……ゴウが用意した直径十メートルぐらいの円盤に乗って遊んでいる。


 行きの万能船で怖がっていたフェンリルたちもだ。


 これは地面からあまり離れていないから、怖くないと。


 なるほど。


 見えている地面は空を飛ぶ四村のだから、実際はかなりの高度なのだが……


 それが感じられなければ、大丈夫なわけか。


 理解はできる。


 ああ、だからってそんなに暴れたら壊れるんじゃないか?


「あの程度では大丈夫です。

 まあ、乗った直後は少し沈み、降りた直後は少し浮きますが、すぐにもとの高さになります」


 ゴウとクズデンは居住環境の改善案をまとめに城に戻ったので、残ったベルが説明してくれた。


 たしかに、フェンリルたちが乗ると少し沈み、フェンリルたちが降りると少し浮く。


 だが、すぐにもとの高さに戻っている。


「大きな重量が動けば、どうしても反応してしまいますので」


 フェンリルたちは、一頭でもそれなりに重いからな。


 仕方がないだろう。


 しかし、これは円盤のサイズが大きくなっても同じなのか?


「いえ、サイズが大きくなれば、重量の変動に対する許容量が増えますので大丈夫です。

 人の乗り降り程度では、微動だにしないはずです」


 へー。


 ところで、この円盤は自力で浮遊しているのだろうけど、この場所での固定はどうやっているんだ?


 四村の移動に置いていかれるんじゃないのか?


「四村を包む力場フィールドがありますので。

 でなければ、気圧や風圧でとても生活は……」


 たしかにそうだな。


 しかし、ゴウはこれを四村の周囲に浮かせるのだろう?


 四村を包む力場は大丈夫なのか?


「そのあたりを強化できる目途めどが立ったので、今回の提案です」


 四村の機能は、武装以外は全盛期を取り戻しつつあるらしい。


「ただ、問題もありまして……

 竜族です」


 竜族?


「はい。

 万能船のときに、竜族の監査が入ったと聞いております。

 あの円盤……正式には、浮遊庭園と呼ばれるものですが、ある意味で万能船と似た機能を備えていますので」


 似た機能?


 つまり、腕か?


「え?

 腕、あったほうがいいですか?」


 い、いや、ないならいいんだ。


「ゴウに言って、腕の装着を検討させますよ」


 便利そうではあるが、ゴウは嫌がりそうじゃないか?


「嫌がるでしょうねぇ。

 ふふふ」


 わかっていたら、そういう方向に話を持っていかないように。


 まあ、言い出したのは俺だけど。



 話を戻して。


 ルーが万能船を造ったとき、たしかにドースと今後の製造に関して色々と話し合っていた。


 ドースも嫌がらせで止めているわけではなく、ドラゴン族が魔道具の進化速度を管理しているからだったはずだ。


 しかし、万能船のように自由に浮遊移動できるわけじゃないんだろ?


「いえ、できます」


 そうなの?


「小さな太陽城みたいなものですから」


 そう言われると……そうか。


「なので、浮遊庭園を使って、地上との往来もできますよ」


 どういうことだ?


昇降機しょうこうきとして使えるということです」


 昇降機……つまり、エレベーター。


「四村を着陸させるのは大変ですが、小さな浮遊庭園なら着陸しても影響が小さいですしね。

 私たちが生まれた時代では、一人乗りできるサイズのものを建物内で使っていました。

 ああ、王侯貴族か大手の商人だけですよ。

 庶民には手が出る値段ではなかったので」


 なるほど。


 つまり、いまフェンリルたちが乗っている円盤が、そのまま地上に向かって降下することができるわけか。


「安全な速度での降下ですので、危険は少ないですよ」


 そう説明したとしても、フェンリルたちが恐怖におののくだろうなぁ。


 俺とベルの会話を聞いていたのか、フェンリルたちがゆっくりと円盤から降りて、距離を取り始めた。


 ははは。


 無理に乗せたりしないよ。


「また話が逸れました。

 すみません。

 話を戻します。

 ええと、ドラゴン族にこの浮遊庭園の使用を止められる可能性があります」


 だが、それならゴウは話を進めないだろ?


 俺に説明する前に、ドースたちに話をすると思うのだが?


「ドライムさまに相談をしております」


 そうなんだ。


「ハクレンさま、ラスティさまは、子育てに忙しそうでしたので」


 あー、そうだな。


「そこに、ダイコンを持って踊っているドライムさまが通りかかり……」


 通りかかったのか。


 まあ、でも、ドライムに相談できたなら、問題はないんじゃないのか?


「それがその……」


 ?


「浮遊庭園が独立しているから問題なのであって、それを解決するために四村と浮遊庭園をロープなどで結び、四村の一部と主張すれば問題ないとのアドバイスをいただきまして……」


 えー……


 それでいいの?


「ですよね?

 それでいいのと思いますよね?

 ですが、ドライムさまのお言葉ですし、ゴウもそれを受けて前向きに話を進めだしまして……

 正直、私は不安がいっぱいです」


 な、なるほど。


 えーっと、ベルには苦労をかけるなぁ。


 一応、俺からドースに円盤……えーっと、浮遊庭園の話をしておくよ。


「よろしくお願いします」


 あと、個人的なお願いなんだけど。


「はい、なんでしょう?」


 浮遊庭園の話に問題がなかったら、ロープだけじゃなく吊り橋もかけて、飛べない者でも移動できるようにしてくれると助かる。


「あ、なるほど。

 承知しました」




 村に戻ってドースに早速報告。


「四村の拡張が目的であろう?

 ドライムから聞いておる。

 ロープで繋いでいるなら問題ない」


 ドライム、ちゃんとドースに報告していたんだ。


 すまない。


 ちょっと心配していた。


 だが、浮遊庭園に関してはそれでいいのか?


「うむ。

 ただ、昇降機の利用はこの森の中だけにしてほしい。

 要は万能船と同じ扱いを希望する」


 わかった。


 ゴウたちに言っておく。


「対価は必要かな?」


 いや、いいよ。


 値段が高いみたいだし、普及させようとは思わないから。


 普及させたら絶対に落下事故が起きる。


 ベルたちの生まれた時代なら、空飛ぶ絨毯フライング・カーペットなどを利用して空を飛ぶ魔法使いも珍しくなかったらしいが、いまの時代だとなぁ。


 天使族の休憩場所には適しているかもしれないけど。






 おまけ


「あ、浮遊庭園の案、通ったんだ」


 ルーが俺にそう言ってきた。


 知ってたのか?


「そりゃね。

 万能船を造ったのは私よ。

 似たようなものを造ろうと思ったら、私に相談しに来るでしょ?」


 なるほど。


 ゴウはルーにも相談していたのか。


「だけど、あれってかなりお金がかかるはずなんだけど……四村で出せるの?」


 ああ、俺が出すことにしたよ。


 四村の生活環境の改善が目的。


 香辛料の収穫量を増やしたかったからもあるけど。


「……」


 なんだ?


 変な顔だな。


「えーっと……」


 どうした?


「お金がかかる原因は、私が用意する魔法素材なの」


 え?


「その魔法素材のほとんどが、この村の薬草畑や温泉地で取れる鉱石なんだけど……」


 つまり?


「私が村で用意できる物に、適切な価格をつけたのがあの値段なのであって……村長が支払うって話になるなら、お金が行って戻ってくるだけなんだけど」


 ……


 えーっと、外部から仕入れるのは?


「ゴロウン商会やダルフォン商会に頼めばできるけど、商会の仕入先がこの村になるわよ。

 まとまった量を用意できるの、この村ぐらいだから」


 ……


帳簿ちょうぼの上でだけ、お金を動かしておく?」


 面倒なことをして、文官娘衆たちに負担をかける気はない。


 一番簡単な方法で。


「じゃあ、お金のやりとりはなし。

 大樹の村が四村に素材を支援するという形にするわね」


 それでたのむ。


 だが、四村の拡張が目的でゴウから相談を受けたんだろ?


 最初っからそっちで話を進めてくれれば……


「村長、普段は各村の独立採算を求めているでしょ。

 だからよ」


 むう。


 たしかに。


 なんでもかんでも、世話をするのは違うと思う。


 つまり、ルーの行いは正しい。


 だが、今回は生活環境の改善が目的。


 急務。


 あと、香辛料の収穫量が増えれば、回収できるだろうなぁと思って。


 だから、俺の行いも問題はない。


 ないはず。


 ……


 四村だけ特別扱いはよろしくない。


 一村いちのむら二村にのむら三村さんのむらにも、困ったことがないか確認に行くとしよう。


 五村は、困ったことがあればヨウコが言ってくるだろうから大丈夫。


 まあ、あとで聞いておくけど。





ドース「作った程度では文句は言わんよ。ただ、考え無しに世間に広めようとするなら注意するけど」

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― 新着の感想 ―
[一言] あ、五村の地下商店通りの上下移動
[気になる点] 万能船でハウリン村に行ったことがあったと思うのですが、判定はセーフ…?
[一言] 木でユニコーンやカボチャ馬車を乗せたメリーゴーランドを作れば お子様から羨望の眼差しで スゴイ 誰もが出来ないことをする憧れる お父さん株爆上がりかもしれない 村に遊園地が出来て乗りたいと村…
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