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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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グランマリア


 私の名はグランマリア。

 少しは有名な天使族の戦士。

 ティア様の指示の元、色々とやってきました。

 その所為か気付けば、同僚のクーデル、コローネと合わせて“皆殺し天使”とか呼ばれています。

“皆殺し天使”

 そんなに皆殺しにはしていないつもりなのですが、どうしてそんな名が付けられたのか不思議です。

 ひょっとして、百年ほど前にオーガの群と戦ったのが原因でしょうか?

 あの時はなんだかんだで百匹ほどのオーガを倒しましたが、何匹かは見逃したから皆殺しではない筈です。

 まさか、今は亡き王国の一件でしょうか?

 あれは不幸な事故でした。

 敵軍に全力で攻撃したら、そのまま突き抜けて味方に……

 ええ、本当に不幸な事故でした。

 しかし、あれだと……皆殺しには全然足りない気がします。

 敵味方、半壊レベルでしたし。

 第一、あの時はティア様と私だけで、クーデルとコローネとは別行動。

 三人纏めて“皆殺し天使”の名が付くのはおかしいですね。

 うーむ。

 まあ、この件は横に置いておきましょう。

 大事なのは、私はティア様の忠実な部下であるという事です。

 周りにどう呼ばれようが、そこの部分さえ間違わなければ良いのです。


 さて、ティア様は仇敵ルールーシーを追いかけて単独行動中。

 何が切っ掛けかは知りませんけど、ティア様はルールーシーとは顔を合わせる度に戦っています。

 戦っていますけど、決着が付きません。

 お互い、良い感じの所でウヤムヤにするからです。

 ひょっとしたら仲が良いのかもしれません。

 そうなのかなとティア様に聞いたら、怒られました。

 なんでも、ルールーシーの背後には強大な吸血鬼一族が居るので、殺してしまうと後が面倒だという事です。

 逆に天使族の私達も、誰かが殺されると一族が総力を持って復讐してくるので殺されないようです。

 なるほど。

 これまで、そんな事を考えた事がありませんでした。

 グランマリア、一つ賢くなった。

 というやつですね。

 賢くなった私は、殺せないなら戦わなければ良いのに、とかは言ったりしません。

 頑張ってください。

 そう言って微笑むだけです。

 ともかく、今回はルールーシーが賞金首になった事をからかいに行ったのだと思います。

 その間、私はクーデルとコローネと共に、とある山に住む山賊退治。

 本来なら無視するのですが、依頼として受けたので仕方がありません。

 お金が無ければ、天使族でも生活ができないのです。

 山賊は元傭兵団らしいのですが、私達三人で仕掛ければ数分で終わります。

 これで良い感じの額が貰えるのですから、笑いが止りません。

 もう少し、山賊が増えてくれれば良いのですが、一回潰すと数年は出てきませんから困ったものです。

 さて、クーデル、コローネの方も問題無しのようなので、報酬を貰って寝床でのんびりしましょう。

 ああ、のんびりと言っても訓練とかはしますよ。

 いつ、いかなる時でも戦いを忘れてはいけません。

 そうでなければ、不意に強敵が目の前に現れた時に死んでしまいますから。

 死なない為に、生き残る為に、そして勝つ為に努力は惜しみません。

 などなどをしていると、何年か振りにティア様が戻って来ました。

 ルールーシーは上手くからかえたのでしょうか?

 ……え? 旅の準備?

 急げ?

 あ、はい。

 えっと……あの、どこに?

 死の森?

 な、なかなか危険な場所に行くのですね。

 わかりました。

 一番良い装備を出します。

 あれ?

 リザードマン達も連れて行くのですか?

 それは構いませんが……途中で鶏を買う?

 あの意味が……

 いえ、文句があるわけではありません。

 頑張ります。



 死の森は厳しい場所です。

 好んで入る場所ではありませんし、入るなら単独で行きます。

 そっちの方が逃げやすいからです。

 寝る時の見張り要員?

 死の森で野営とか死にたがりのする事です。

 まあ、この森に住む奇特なエルフや、近くに住む獣人族などは安全地帯を知っているらしいのですが、私達は知りません。

 なので、死の森に入ったら、寝ずに高高度を飛んで移動。

 これが一番です。

 中途半端な高さで飛ぶと、死の森に住むデーモンスパイダーの糸に絡め落とされます。

 デーモンスパイダー。

 本当にやっかいな相手です。

 姿を見た時は死ぬ時と言われるほど、恐れられている魔物なのです。

 天使族の私達には、相性的にも天敵と言って良い相手でしょう。

 森には他にもやっかいな魔物や魔獣が居ます。

 やたら素早く、魔法も使う魔獣、インフェルノウルフ。

 一頭ならなんとか出来ても、複数居ると死を覚悟します。

 まあ、滅多に複数居る事は無いのですけどね。

 巨大なヘビ、ブラッディバイパー。

 大抵の魔法を無効化し、その巨大な身体を武器に暴れる魔物です。

 特にやっかいなのが、その再生力と生命力。

 傷付けても傷付けても回復していき、身体を半分に千切られても再生する生命力は、対戦者の心を折ってくれます。

 まあ、その再生力を利用して、エサにしている猛者な魔物が居たりするのですが……

 あー、考えれば考えるほど恐ろしい森です。

 なので、そんなのが居る森の中を集団で動くのはかなりリスクの高い行動です。

 ティア様、私、クーデル、コローネ、そしてリザードマン十五名。

 リザードマン達もそこそこ戦えますが、今は荷物を多く持たせているので無理はさせられません。

 私達が頑張るしかありません。


 寝ずの行軍を考えていましたが、ティア様はしっかりと交代で寝るように言われました。

 目的地がどこかは知りませんが、先が長いからでしょう。

 ふふふ。

 わかりました。

 とりあえず、一番最初に寝るのは私でお願いします。

 実は森に入ってから緊張しっぱなしでかなり疲れているのです。

 クーデル、コローネ、貴方達もですか?

 わかりました。

 公平に年齢順で……くじ引きで順番を決める事になりました。

 仕方がありません。

 今の状態を考えると、交代で寝るのは必須の事だと思います。

 進みが遅くなりますが、油断せずにいきましょう。


 途中、グラップラーベアを遠目に見かけ、避ける為に迂回したのでティア様の目指す目的地への到達がかなり遅れました。

 グラップラーベアは、ブラッディバイパーを殺せる巨大な熊です。

 私達でもブラッディバイパーを殺すのは至難の業ですので、その攻撃力の高さが察する事ができます。

 四人で掛かればなんとかなるかもしれませんが、その間にリザードマン達がどうなるかわからないので迂回の判断となったのです。


 ティア様の目指す場所は、死の森の中央にある住居との事です。

 ……

 そんな場所に住居などあるのでしょうかと半信半疑でしたが、到着した時には驚かされました。

 死の森のど真ん中に、畑があるのです。

 ビックリです。

 しかも、驚きはそれだけではありません。

 あのルールーシーが居たのです。

 ティア様と殴り合うかと思ったら、なぜか再会を喜び合っていました。

 なんなのでしょう。


 その後、色々とありました。

 驚きの連続です。

 もっとも驚いたのは、インフェルノウルフやデーモンスパイダーが村に定住している事ではなく、あのティア様に旦那様が出来た事です。

 相手はこの住居の長。

 ……

 驚くのは失礼かもしれません。

 いや、でも、しかし……

 色々な事は横に置いておいて、おめでとうございます。

 ほら、クーデル、コローネ、貴方達も固まっていないでお祝いを言った方が良いですよ。

 詳しく話を聞くと、なんとその旦那様はルールーシーも娶っているとの事。

 猛者ですね。

 ええ、猛者です。

 逆らわないようにしましょう。

 村と呼ぶには小さいですが、村長みたいな存在なので村長と呼ばせて貰う事にしました。

 他の者も、そう呼んでいるようですし構わないでしょう。


 ティア様の命令で、私達もここに住む事になりました。

 一緒に来たリザードマン達もです。

 私の役割は、クーデル、コローネと共にこの住居と畑……いえ、村ですね。

 村を守る事。

 撃退できるなら撃退し、無理なら応援を呼ぶのが使命です。

 無理ならという部分にプライドが刺激されましたが、死の森の危険度と村の戦力を考えれば仕方がありません。

 死にたくはありませんので、その様にします。


 ……


 甘くみてました。

 村の防衛は、インフェルノウルフのクロさん達と、デーモンスパイダーのザブトンさん達が主に行っています。

 なので、私達は村の外の見張りをする事になります。

 飛行しても構わないとの事ですが、高く飛び過ぎると見張りになりません。

 なので森の上空を程よい高さで飛行しながら見張るのですが……

 予想以上に攻撃を受けます。

 特にデスラーテルがうっとおしい。

 ヤツらは一匹一匹はそれほど強く無いのですが、群で私に飛び付き地面に引き摺り落とそうとしてきます。

 何度か危ない所がありました。

 私達の苦戦を見たのか、インフェルノウルフが何匹か私の下を守ってくれるようになりました。

 情けなさを感じつつも、デスラーテルに襲われる事はなくなったので感謝します。

 今度、休憩時間にフライングディスクで遊んであげましょう。

 ふふ。

 怖いと思っていたインフェルノウルフと遊べるようになるとは思っていませんでした。


 なんだかんだと日が進み、変わった事と言えば何度か来客の案内をしたぐらいで平穏なものでした。

 平穏ですが、退屈ではありません。

 見張りは命懸けですし、何度かインフェルノウルフ達と共同して村に向かう魔物を退治したりしました。

 ここに来る前より、遥かに強くなったと実感しています。

 しかし、そんな実感が脆くも崩れます。

 グラップラーベアとブラッディバイパーが戦い、その震動が村にまで伝わって来たのです。

 遠くからですが、土煙の高さでその戦いの激しさを感じます。

 しかも、戦いながら村に近付いている気がします。

 これはマズいです。

 村の移転を考えるレベルの災害です。

 村長にそう進言しようとしたら、変な事を言われました。

「グラップラーベアとブラッディバイパーって、美味いのか?」

 え?

 何を?

 村長、あまりの事態にパニックですか?

 いえ、私は食べた事がありませんので味は知りません。

 村長が周囲を見回すと、ハイエルフのリアが食べられると伝えました。

「なるほど。
 食べられるのか。
 なら、狩ろうか。
 村に来て被害を出されても困るし」

 えっと……狩ろう?

 ああ、村総出で対応するのですね。

 なるほど。

 インフェルノウルフ、デーモンスパイダー、ティア様、私達、ハイエルフにリザードマンが協力すればなんとかできるでしょう。

 ふふ。

 頑張りますよ。

「グランマリア。
 俺を二匹が居る場所に運べるか?」

「それは可能ですが……」

 何かおかしい。

 疑問は解消しましょう。

「……私と二人で行くのですか?」

「そうだけど……何か問題があるのか?」

 ……

「い、いえ。
 承知しました。
 精一杯、努めさせて頂きます」

 私は覚悟が足りなかったようです。

 そうですよね。

 ふふふ。

 こういった時に命を捨てるのが勤めです。

 忘れていました。

 村長が周囲に何か指示していますが、私の耳には入ってきません。


 グラップラーベアとブラッディバイパーが村長によって瞬殺されました。

 夢でも見ているのでしょうか。

 いや、違いますね。

 村長が凄いのです。

 流石はティア様とルールーシーの旦那様です。

 できれば、私もこういった方と結ばれたいですね。

 あ、いけないいけない、現実逃避をしてしまいました。

 頑張って獲物を見張りましょう。



 トラブルは続きます。

 今度はドラゴンです。

 ドラゴンの来襲です。

 全身が硬直し、恐怖に震えます。

 流石にドラゴン相手に勝てると思うほど、私は自惚れていません。

 しかし、役目を忘れてはいません。

 なんとかしなければ。

 慌てた私を気にせず、来襲したドラゴンは別のドラゴンと格闘を始めたと思えば、別のドラゴンが別方向から村に向かうという事態。

 パニックです。

 私は何も出来ず、オロオロとしている間に収束しました。

 ラスティスムーン。

 天使族にも名の知られている凶暴なドラゴンです。

 まさか、村に来ている温和なドライムさんの娘とは思いませんでした。

 いや、詳しく話を聞くとドライムさんって、あの門番竜?

 知らなかった。

 超有名竜じゃないですか。

 知って、腰が抜けるかと思いました。

 すみません、三流ドラゴンとか思ってて。

 反省します。

 でも、ドライムさんだってお酒飲んだり、お料理を食べたりしかしてなかったわけですし……いえ、すみません。

 思い込んだ私が悪いのです。


 なんだかんだでラスティスムーンが村で生活する事になり、村の凶暴さ……ではなく、村の防衛力が上がりました。

 私もその一角を担う為に、頑張っていきたいと思います。


 ルーさん(そう呼ぶようになりました)が出産し、ティア様が妊娠しました。

 めでたい事です。

 まあ、やる事はやっていますから、そうなるのも当然です。

 実は私も村長のご寵愛を頂く身ですので、いつかそうなるかもしれません。

 夢が広がります。

 とか思っていたら、またドラゴンです。

 ラスティさんよりも大きなドラゴンが来ました。

 この時、ラスティさんは里帰り中。

 ドラゴンは村の上空を旋回した後、近くの森を焼きました。

 敵、確定です。

 クーデル、コローネと共に一気にドラゴンに突貫しました。

 この時の私は、冷静ではありませんでした。

 冷静になれば、ドラゴンの敵意が変なのもわかります。

 村に火を放つならともかく、近くの森に放ったのはなぜなのか?

 村長もその辺りに気付き制止しますが、私達は止りませんでした。

 ラスティさんの時にみっともなくパニックになっただけの自分を許す為にも、攻撃しかないと思い込んでしまったのです。

 三位一体の攻撃。

 上手く決まれば、ティア様ですら倒せる攻撃です。

 全力で行いました。

 ペシッと落とされました。

 ペシッです。

 尻尾で軽く蹴散らされました。

 ショックです。

 ここまで力差があるとは。

 そして、村を守れない事にここまで激しい後悔があるとは。

 私は墜落しながら悲惨な未来を考えていました。

 ですが、墜落は途中で終わりました。

 ラスティさんです。

 人間形態のラスティさんが、地面にぶつかる寸前に私を受け止めてくれたのです。

 クーデル、コローネも誰かに受け止められています。

 誰なのでしょう?

 ドライムさんが居ますので、お知り合いでしょうか?

 疑問に思う私の上空では、ドラゴンは村長との戦いが始まりました。

 ここに居ては危ないと、急いで移動します。


 私を撃墜したドラゴンと村長の戦いは、村長の勝利で終わりました。

 流石は村長です。

 ですが、どうもドラゴンの方は本気ではなかったようです。

 本気になれば、村ごと村長を消滅させて勝利する事も出来たのかもしれませんが、ドラゴンはそうしませんでした。

 お話から、村長の腕試しの面が強いのでしょう。

 森に火を放ったのに、村に火を放たなかったのはその為でしょうか。

 ともかく、村長はドラゴンに認められたようです。

 ドラゴンの上から目線に、少しムカつきます。

 ですが、こちらから敵意を見せるのも得策ではないでしょう。

 ドライムさん、ラスティさんと共に来たドラゴン達も居ます。

 敵対せずが正解でしょう。

 村長もそのように判断し、歓待するようです。

 一応、負傷した私達に報復するかと聞かれましたが、そんな気はありません。

 怪しい行動をした云々を除けば、負けた私達の力不足が問題なのです。

 負傷も魔法で回復して貰った身で、何かを要求するのは恥の上塗りです。

 恥の上塗りですが……

 可能でしたら鱗の一枚でも頂ければ、新しい装備を……

 いえ、要求しません。

 はい。

 宴で一発芸の一つでも見せていただければ、それで十分です。


 私を撃墜したドラゴン(ハクレンというらしいです)の一発芸は、抱腹絶倒でした。

 思い出しただけで笑いが出るので、詳しい話は割愛します。


 ドラゴンが帰った後、日常が戻って来ました。

 いつもと違うのは、私の生活にあった訓練の量が少し増えた事です。

 私はまだまだ弱い。

 これからも頑張っていきたいと思います。

 そして、もうこれ以上、私達の存在意義を脅かす強キャラが村に定住しない事を祈ります。



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