表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
726/978

夜の食事

ドース  竜王

ドライム ドースの息子。門番竜。

ブロン  獣人族の男の子。

プラーダ 五村で働く悪魔族メイド。

エルメ  ヴェルサの元で働く悪魔族メイド。

ベトン  昔、グッチと揉めた悪魔族。



 深夜の草原。


 ドースの放った魔法の光で照らされると、あちこちが大きく掘り返されている。


 大きい穴が空いている場所もある。


 激しい戦闘があったのだろう。


 プギャル伯爵は、こんな場所にいてよく生き延びたものだ。


 実はすごく強いとか?


 いや、執事さんがプギャル伯爵の保身は信頼できると言っていた。


 交渉でなんとかしていたのかもしれない。


 ……


 それでも十分に凄いな。


 うん。



 さて、俺は食料と調理器具を持ってきている。


 というか、俺の荷物はそれだけだ。


 正直、行方不明になったプギャル伯爵を探すために出てきたが、俺個人が人探しで役に立てるとは思っていなかった。


 行方不明になった人を探した経験などないのだから。


 しかも時間は夜中。


 なので、邪魔にならないよう、指示に従う人手として動くのが最良と考えていた。


 それゆえ、自分の食事ぐらいは自分で用意していこうと背負ってきたのだが……


 まあ、プギャル伯爵は無事に見つかったので出番はなかった。


 残念。


 いや、出番がないのは良いことだ。


 悲しんではいない。


 悲しんではいないのだが……


 プラーダがお腹を鳴らした。


 なんでも、朝からなにも食べていないらしい。


 ………………


 それはよくない。


 よくないぞ。


 夜中だが、しっかりと食事をしなければ。


 まあ、野外での食事というのも悪くないものだ。


 いやいや、急いで街に戻る必要はない。


 幸いなことに、食材と調理器具があるんだ。


 ああ、本当に幸いなことに。


 ということで食事にしよう。



 俺は荷物を広げ、調理を開始し……おっと、まずは火を用意しなければ。


 ふふふ。


 昔とは違い、早く火を作れるようになった。


 自分の成長を感じる。


 ん?


 ドースやドライムも料理を作るらしい。


 ドライムはなんだかんだと料理をやっているのは知っているが、ドースは作れるのかな?


 竜王だろ?


 あ、ベトンさんは座っていて。


 ブロン、エルメ、プラーダが俺、ドース、ドライムの手伝いをそれぞれしてくれるが、複数人の手伝いが必要なほど難しい料理じゃない。


「いえ、その、そうではなく……えっと、事情を聞くのでは?」


 ベトンさんが心配そうにそう言っているが、君たちに逃げるつもりがないのだから、少し遅くなっても問題ないだろう。


 事情は料理を食べながらでも聞ける。


 うん、聞ける。


 俺は調理を続けた。



 よし、完成。


 簡単な汁物で悪いけどね。


 ドースのほうはどう?


「こっちもできあがった。

 ……村長、そう意外そうな目でみるな。

 これでも若いときは自分で料理をやっておった。

 これぐらいはできる。

 ドライムはどうだ?」


「もう少しダイコンに味がみるのを待つのがよいかと。

 こちらは私が見てますので、お先にどうぞ」


 そうだな。


 それじゃあ、わんと皿を用意して……


 ベトンさん。


 すまないが、そこの箱に椀と皿が入っている。


 取ってくれるかな?


 そう、それ。


 ありがとう。


 ああ、ベトンさんはモチは何個入れる?


 モチってのはこの白いの。


 二つね。


 三つでもかまわないよ?


 ははは、じゃあ三つね。


 ブロン、ドース、ドライムはどうする?


 二つ、三つ、三つね。


 プラーダとエルメは?


 三つと四つ。


 ああ、数は大丈夫だ。


 一緒に探す人たちにもと思って、多めに持ってきてるから。


 それに、モチはもうすぐ新しくくから、消費しないといけないんだ。


 遠慮はいらない。


 ドースとドライムは一つ追加ね。


 プラーダは三つ追加?


 合計、六個だぞ?


 食べられるのか?


 ……朝から食べてないんだったな。


 六個、了解。


 ブロンとエルメは食べてから考えると。


 それでもいいぞ。


 ベトンさんはどうする?


 三つのままで十分?


 そう?


 足りなかったら言ってね。


 それじゃあ、食事にしようか。


 野外での食事なのでテーブルや椅子はない。


 だから、それぞれが程よい大きさの岩に座る。


 一番よさそうな場所にベトンさんが座るのかと思ったら、そこにドースを呼んで座るように勧めていた。


 年長者を大事にする姿勢。


 悪くない人のようだ。


 そんなふうに感心しているのだから、ドースはその席を俺に譲ろうとしないように。


 魔法で地面を操作してテーブルと椅子を作る?


 いや、駄目じゃないが……事情を聞くためにも、ある程度近いほうがいい?


 そう言われるとそうだな。


 わかった。


 任せる。



 野外に似合わない豪華なテーブルと椅子が完成。


 それなりの強度だけど、土製なのでそのまま食器を置くのは抵抗がある。


 持ってきている布を敷いてテーブルクロスに。


 俺の作った汁物が入った椀、ドースが作ったいため物の乗った皿を人数分、置いていく。


 ドライムのほうはまだ少しかかりそうなので、先に食事を始める。


 ちなみに、ドライムが作っているのはダイコンの煮物にものだ。


 弱火の火が消えないように見張る必要がある。


 なので、少し離れた場所で食事を楽しんでもらう。


 では、いただきます。



 うーん、ドースの炒め物。


 美味しい。


 下味もちゃんとついている。


 正直、意外だ。


 竜族は総じて村の食事を喜んでいたので、料理のレベルが昔の鬼人族たちと同じと思っていたが、この炒め物は今の鬼人族たちと同じレベルだ。


 竜族の里では、ちゃんとした料理がされていたのか。


「いや、そういうわけではないぞ」


 ?


「竜族の里というか神代竜族のおきてでな、文明や文化は世界の平均であるべしというのがあるのだ」


 どういうことだ?


「簡単に言えば、世間で一般と呼ばれる程度の生活をするようにという掟だ。

 良い生活をしたければ、世界を育てよということだな」


 なるほど。


「しかし、文明や文化を育てすぎると、危険なこともある。

 神代竜族は行き過ぎた文明や文化を規制する立場でもある。

 なかなか難しいのだ」


 そういや昔、万能船を作ったことでルーとドースがなにやら言ってたな。


 しかし、それだとするとドースが料理できるのはなぜだ?


「…………役目を負う前の若者が好奇心でいろいろと危ないことをやるのは、よくあることであろう?

 あの頃は、掟なんぞ邪魔だとしか思わんかった」


 ドースも若いころがあったということか。


「そういうことだ。

 まあ、立場が立場だ。

 こういった機会でもないと料理なんぞできんがな」


 大変だな。


「うむ。

 大変なのだ。

 大樹の村では鬼人族のメイドたちが見張っておるしな」


 ははは。


 見張っているわけじゃないだろうけど、厨房ちゅうぼうは彼女たちの縄張りだからね。


 ちゃんと言えば、使わせてもらえるよ。


 子供たちも、ドースの作った料理なら喜ぶだろう。


「喜んでくれるだろう。

 しかし、その倍ぐらいライメイレンの機嫌が悪くなる」


 ひょっとしてライメイレンは?


「あー……丸焼きは得意だ」


 ……


「食べられる量は、その日の機嫌によるけど」


 な、なるほど。


 今度、アンたちに頼んで、さりげなく料理を教えるように動いてもらおう。


 うん、それがいい。


 ライメイレンがそれなりに料理できるようになれば、ドースも堂々と子供たちに料理がふるまえるようになる。


 いいことだ。


 ん?


 ベトンさん、どうした?


 お代わりなら、すぐに入れるよ。


 ああ、ドライムのダイコンの煮物もそろそろできるだろうから、そっちもすぐに配るよ。


「いえ、そうではなく、その……えっと、私たちの事情を聞くのはどうなったのかなと……そのためにテーブルを作ったのですよね?」


 ……

 わ、忘れてないぞ。


 うん、忘れてない。


 これから聞こうと思っていたんだ。


 ははは。


 ……


 ごめんなさい。


 忘れてました。





遅くなってすみません。

国民年金の控除証明書が行方不明なのが悪いのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
人気作になった弊害なのか、ジコチューな読者が増えたね。 アンタらが心配すべきは、作者どのの体調だろ!? 内容がどうだの、アップの頻度だのツベコベ言うんじゃないよ! 作者どの、いつも楽しく読ませていただ…
[一言] うん、ちょっと待とうか。この一話を使って丸々料理事情というか食事事情とかを語られただけなんだけどwww …問題は本来間延びしたと文句も言いたい所なのに、これだけで普通におもろいのはちょっと卑…
[気になる点] なんだか本当に更新してくれなくなったな。待つのに疲れた
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ