すぐに見つけた
ブロンとはすぐに合流できた。
プギャル伯爵家の執事さんが一緒だったので、現在の情報を教えてもらう。
うーむ。
残念ながら、すでに発見されていたという肩透かしはなかった。
そして、ほとんど手がかりがない。
そのうえ、転移門で別の場所に移動している可能性もあるか……
「最悪に最悪を重ねることも考えて対処しなければなりませんが、ご当主さまも無能ではありません。
とくに保身に関しては信頼ができます」
保身に信頼できるって……
「誘拐だったとしても、誘拐犯と交渉して無事でいるということです」
なるほど。
「転移門の先に関しては別の班が動いておりますので、私どもはシャシャートの街を中心に捜索をします。
ご協力、よろしくお願いします」
そうだな、急いで行動しよう。
えーっと、全員でかたまって行動しても仕方がないな。
数人で班を作って捜索するか?
「あ、それなのですが、当家の者がいないとご当主さまが出てこない可能性があります」
出てこない?
「危機から身を隠している場合です。
見知らぬ者から声をかけられても、ご当主さまは出てきません」
あー、なるほど。
「ですので、申し訳ありませんが当家の者の同行をお許しください」
許すもなにも、こっちが同行する側だ。
なんでも言ってほしい。
いや、捜索の指揮権を渡されても困る。
こっちは捜索のプロでもなんでもないのだから。
とりあえず、俺たちは同行してくれたハイエルフやリザードマンをいくつかの班に分け、捜索を開始する。
俺はドース、ドライム、グッチ、ブロン、それと執事さんと一緒になった。
なったのだけど……
俺たちはもっとこう……違う班のほうがよくないか?
ブロンにそう確認したが、ブロンはこの組み合わせが最適だと譲らない。
「目を離せない者は一か所にまとめるべきです」
そ、そうか。
ドースやドライムは目が離せないか。
……
確認だけど、俺は目が離せない側じゃないよな?
「村長はドースさんやドライムさんを抑える側ですよ」
よかった。
捜索、頑張ろう。
すでにプギャル伯爵の関係者で捜索エリアを決め、広く薄く探すことはされているそうだ。
なので、俺たちは自由に捜索することになった。
自由にと言われても困るな。
現在位置はビッグルーフ・シャシャートの前。
つまり、シャシャートの街のほぼ中心。
東西南北、どこに進むべきか。
「今日の昼、街の南でイベントがありました。
人の多い南が怪しいです。
とくに南東にはこの街の者じゃない人たちのキャンプ地があります。
そこを探しましょう」
グッチがそう強く主張し、ブロンが賛成した。
しかし、ドースが反対する。
「北西だ」
ドースの意見に、ドライムが賛同する。
「私のダイコンも、北西と言っている」
ドライム、ダイコンを使って腹話術をするんじゃない。
食べにくくなるぞ。
それで、ドースとドライムの北西の根拠は?
まさかダイコンで占ったわけじゃないんだろ?
「あー……」
俺の質問に、ドースが少し考えてから教えてくれた。
「竜族に仕えているのは悪魔族だけではない。
ほかにもいろいろといる」
ん?
まあ、そうだろうな?
「そして、仕えているからと常にそばにいるわけではない」
というと?
「この街にもいる。
その者からの報告で、ここから北西の方向。
街の外で怪しい結界を張った者がいるそうだ。
そのタイミングで、行方不明者の話。
関係ありそうではないか?」
確かに。
なるほど、そういった情報があったから連れていけと言ったのか。
……
最初っから、そう言ってくれないかな?
人命がかかっているのだから。
んー……?
違うな。
ドースやドライムは強大な力を持った竜だ。
だが、だからといって人命を軽く扱ったりはしない。
なのに、ここで情報を出し惜しみする理由はなんだ?
プギャル伯爵は無事ということか?
俺がそう目で訴えても、ドースとドライムは教えてくれなかった。
無事を祈ろう。
そして、俺たちの進む方向は決まった!
北西だ!
ブロン、問題ないか?
よし。
執事さん、問題ない?
よし。
グッチ、なぜそんな絶望した顔をしている?
いや、絶対に北西にプギャル伯爵がいるかわからないから、別行動でもかまわないぞ。
「い、いえ。
ぜひ、おそばに居させてください」
それはかまわないが……
「あー、グッチよ。
後続で来る者たちの案内を頼む」
俺が答える前に、ドースがグッチにそう言った。
グッチはいろいろと諦めた顔をしていた。
そしてブロンの手を取って、なにかいろいろと頼んでいた。
なんだろう?
怪しい場所があるなら、一直線にそこに向かう。
……
全然、怪しい場所がわからない。
進む方向はドースに任せた。
すると、執事さんの様子が変化した。
「ありがとうございます。
ご当主さまを発見しました。
すみませんが、先を急がせてもらいます」
執事さんは俺たちに一礼をしたあと、凄い速さで駆けていった。
とりあえず、執事さんの向かった方向でいいのか。
そう思ってあとを追うと、ぐったりしている男性を担いだ執事さんが戻ってきた。
「この通り、ご当主さまは無事です」
この通り?
気絶しているように見えるが?
「ご安心を。
これはご当主さまの保身術奥義の一つ、“やられた振り”です」
じゃあ意識はあるのか?
「いえ、中途半端なことをするのが逆に危険なので、気絶はしています。
この様子ですと、数日は起きないでしょう。
私はこのまま、ご当主さまを安全な場所にお連れします」
そうだな。
まずは安全な場所に。
あと、探している者たちにも連絡しないといけない。
「連絡はお任せを。
それで、みなさまにはお手数ですが、今回の件の元凶らしき者たちがこの先にいますので、その者たちから事情を聞いていただけますでしょうか?」
元凶?
「なぜ、ご当主さまを連れ去ったかです」
ああ、そうだな。
気になるところだ。
しかし、プギャル伯爵を連れ去るような連中だ。
危険じゃないか?
いや、ドースとドライムがいるとはいえ、危ない場所には近づかないほうが……
「村長。
大丈夫だ。
そこにはプラーダがいる」
ドライムの言葉に、ちょっと驚く。
まさか、プギャル伯爵を連れ去ったのって、プラーダなのか?
「それはわからんから、事情を聞きに行こう。
なに、危ないことにはならん」
そ、そうか?
ドライムがそう言うなら、わかった。
事情を聞きにいこう。
俺は執事さんにそう伝え、さらに進むことにした。
しかし、その場で留まっているかな?
逃げたりしていないだろうか?
逃げてなかった。
現場にいたのは三人の女性。
見知ったプラーダとエルメ。
それと、見知らぬ……
「ベ、ベトンと申します」
ベトンは怯えながら、ドースとドライムに挨拶をしていた。
さて、事情を聞こうか。
あ、うん、ちゃんと聞くから、プラーダとエルメは誰それが悪いを連呼しないように。
更新が遅れ、すみません。
書籍十二巻の校正や特典作成など、いろいろやってました。
書籍十二巻は三月末、コミックス九巻は四月頭の予定です。
よろしくお願いします。
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「いいね」がもらえるように頑張らねば。