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援軍?


 はい、金貨がきましたー。


 私がピンチです。


 私が誰かわからない?


 またまたー。


 え?


 本当にわかってない?


 そんなー。


 私はプラーダ。


 逃げたいけど逃がしてくれそうにない相手を前に、孤軍奮闘している悪魔族です。




 うーん、おかしい。


 グッチさまの手勢が来ない。


 私がシャシャートの街に到着したのは朝。


 そのタイミングでベトンの気配に気づいたので、グッチさまに連絡しています。


 ベトンと私が出会い、この場に移動した段階で昼過ぎ。


 十分な時間が経過しています。


 この場に来れるようにちゃんと目印も残しているのに、どうして来ないのでしょうか?


 このままでは、やられてしまいます。


 ええ、やられちゃいますよ。


 私は戦うタイプじゃないんです。


 対してベトンは戦うタイプ。


 そんなの勝負になるわけないじゃないですか。


 ……


 あれ?


 どうして私、まだやられていないのでしょうか?


 考えられることは……一つ。


 ベトン、弱ってますね!


 なにがあったかは知りませんが、私を倒せないぐらいに。


 よし、光明。


 いける。


 いけるいけるいけるいけるいける……わけないでしょう!


 なにこれ?


 思考が誘導されていますね。


 ベトンの得意分野でしたか。


 危ない危ない。


 というか、なぜ私はベトンの得意分野をいままで意識しなかったのか。


 それに気づけば、理解できました。


 ここは彼女の結界内です。


 この場に来た段階で、すでにベトンの策にまっているということですか。


 つまり、私が認識している場所じゃない可能性が高い。


 グッチさまの手勢が来ないのは、そのためですね。


 あ、時間も惑わされていたようです。


 私が結界を意識したからか、太陽がいきなり沈みました。


 かなりの時間、私はベトンと戦っていたようです。


 うぬぬ。


 どうりで金貨が尽きるのが早いと思った。


 まいりました。


 どうしましょう。


 私がまだ健在なことから、ベトンが弱っているのはたしかです。


 ですが、私の攻撃手段である金貨は尽きています。


 この状態が続けば、私は終わりです。


 くっ、まだまだラーメンを食べたかった。


 マルーラのカレーも。


 大樹の村で出される料理もあと一回……いや、十回ぐらい。


 でもって美術品とか、もっともっともっと観たかった。


 あー。


 誰か助けてー。


「私が助けましょう」


 え?


 誰?


 私とベトンの戦いに、横から顔を出したのはメイド服を着た悪魔族の女性。


 グッチさまの手勢?


 そう思いましたが違いました。


 彼女の着ているメイド服は、私の着ているメイド服とは違います。


 ひと言でいうなら、クラシック?


 少し古いタイプのメイド服です。


 そして、思い出しました。


 彼女はエルメ。


 ヴェルサさまのメイドです。



 ヴェルサさま。


 グッチさまより古い悪魔だそうですが、その実力を私は知りません。


 ですが、グッチさまが丁寧に挨拶していたので、相当の実力者なのでしょう。


 そのヴェルサさまに仕えるメイドですから、やはり相当な実力者と考えていいでしょう。


 ええ、ベトンの結界内に乱入してきたのですから、期待していいでしょう。


 私は素直に助けを求めます。


「助けてー、助けてー」


「プラーダ、もう少しプライドを持ちなさい」


 ベトンが文句を言ってきますが、無視します。


「プラーダさん。

 彼女の言うとおり、もう少しプライドを持ってもいいのでは?」


 うっさいわ。


 命の危機を前に、プライドがなんの役に立つというのですか。


 いいから助けてください。


「はいはい。

 わかりました。

 ですが、実は私は戦えません」


 ……は?


 なぜ?


 どうして?


いにしえの契約です」


 それ言えば、なんでも誤魔化せると思わないでくださいよ!


「そう言われても、悪魔族は契約には従うものでしょ?」


 ぐぬぬ。


「ですが、貴女を助ける手段がないわけではありません」


 つまり?


「私は戦えませんが、戦える人を連れてくることは可能です」


 おおっ!


 では、それでお願いします。


 近くにグッチさまの手勢がいるはずですから、その方たちを!


「残念ですが、それは難しいでしょう」


 どうして?


「シャシャートの街にある魔法陣を処分して、帰ったようですから」


 ……


 帰った?


 は?


 帰った?


 冗談ですよね?


「冗談を言うタイミングではないでしょう?

 ですがご安心を。

 あの悪魔に対抗しうる人物を連れてきます」


 ほ、本当ですね?


 ベトンに対抗できる人物を連れて来れるのですね?


「お任せください。

 まあ、連れて来る時間、プラーダさん一人で頑張ってもらわねばなりませんが」


 さ、最速でお願いします。


「なに、すぐですよ。

 強制的に連れて来ますから」


 エルメさんはそう言って、姿を消した。


「私の結界を簡単に出入りしてくれちゃって……腹立たしいわね」


 ベトンが怒っています。


 ひょっとして、私は怒っているベトンを相手に時間を稼がないといけないのかな?


 ……


 そのようです。




 頑張りました。


 私、頑張りました。


 エルメさんがベトンに対抗できる人物を連れて来るまで、逃げ切りました。


 よし、勝った。


 そう思ったのですが……


 エルメさんが連れて来た人物は……


 その、なんというか……


 恰幅かっぷくのいい年配の男性?


 ごめんなさい。


 自分をいつわりました。


 太っている魔族の中年男性です。


 いい服を着ているから、身分は高そうだけど誰ですか?


 めちゃくちゃ弱そうなんですけど?


 エルメさん、エルメさん、別の人、別の人をお願いします!


「彼だけで大丈夫ですよ。

 ほら」


 ほらと言われましても。


 あ、私は味方。


 味方ですよー。


 敵はあっち。


 はい、向こうです。


 連れて来られる前にエルメさんに説明されていたのか、太っている魔族の中年男性は腰の剣を抜いてベトンに斬りかかりました。


 おおっ、見かけによらず、それなりにするどい斬撃。


 ベトンを上下に両断します。


 が、駄目です。


 ベトンに剣は通用しません。


 なにごともなかったように、ベトンは立っています。


「なるほど、本物の悪魔族のようだ」


 太った中年男性は、ベトンから少し距離を取り、剣を改めて構えます。


「いきなりの不意打ち、失礼した。

 名乗らせてもらおう。

 私の名はワトガング。

 ワトガング=プギャル。

 魔王国の伯爵の地位を預かるものだ」


 え?


 魔王国のプギャル伯爵?


 ちょっとエルメさん、そんな人を連れて来て大丈夫なんですか?


 あとで揉めるのは困るんですけど。


 私の動揺を気にせず、ベトンはプギャル伯爵に名乗ってます。


「ベトン=グリ=アノンよ」


「ベトン……歴史書に名を残す大悪魔が相手とは……光栄だ」


「ふふふっ。

 魔族が悪魔族に勝てると思っているの?」


「古い価値観だな。

 勝てぬ相手に勝つための努力は積み重ねてきた。

 いくぞ!」


 いくぞって、待って。


 ベトンに剣は通じない……


 プギャル伯爵は、ベトンに近づく途中で剣を捨て、素手で殴った。


 それだけじゃない。


 殴った勢いのまま、ひじ打ち、そして肩からの体当たり。


 どれも効いてる。


 ベトンが驚いた表情を見せている。


「有名なのも困りものだな。

【病魔】のベトン。

 やまいに剣は通じぬ。

 病に対抗できるは、鍛えた肉体。

 殴り合いなら、私はそれなりにやれるぞ」


「ぐぬ……許しません」


 ベトンの意識が完全にプギャル伯爵に行きました。


 よし、助かった。


 と、喜んでもいられません。


 私は思い出しました。


 プギャル伯爵は、ゴールくんの奥さんのお父さんです。


 ギリギリ、守らないといけない範囲と私は判断します。


 つまり……


「そこの悪魔族のメイド。

 防御は任せた」


 そういうプギャル伯爵の言葉を断れません。


 って、ちょ、うわっ、自分の身を守るだけでよかったさっきより面倒になってませんか、これ!


 ああっ、前に出るときは一声かけてー。





花粉「やあ、少し早いけど今年も来たよ。よろしくね」

作者「……帰れ」



どうして戦っているかの説明ができなかった。

次こそは。



今年も一年、よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] プギャル伯爵、いろいろな意味で予想外な特濃強キャラでびっくりですw 日本中の野山が昔大量植林されて放置されたスギだらけなせいで花粉は年々増えるばかりですねぇ(泣)超々高齢化社会に突入した隣…
[一言] 迷宮ポルチーニは、大樹の村のダンジョンに自生してますな。(467話 日常に戻る) 鬼人族メイドが数人カゴを抱えて飛び出て収穫しても取り切れないくらい生えてるみたい。
[良い点] >大樹の村で出される料理もあと一回……いや、十回ぐらい 五村のラーメンやマルーラのカレーも人々を虜にする美食ですし、シャシャートの街や五村で一般的に食べられている料理もレベルが格段に上が…
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