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王城のティゼル

ランダン  魔王国四天王の一人。内務担当。

ホウ=レグ 魔王国四天王の一人。財務担当。

グラッツ  魔王国四天王の一人。軍務担当。

ビーゼル  魔王国四天王の一人。外務担当。


メットーラ アルフレートたちの世話役の一人。混代竜族。

アサ    アルフレートたちの世話役の一人。四村のマーキュリー種の一人。

アース   アルフレートたちの世話役の一人。ウルザの土人形。

リグネ   ハイエルフ。リアの母親。


ティア   ティゼルの母親。天使族。

ルィンシァ ティアの母親。天使族。


フラウ   ビーゼルの娘。村長の奥さんの一人。



 私はティゼル。


 お父さまのことを一番に考える、天使族の娘。


 今日も元気に頑張ろうと気合を入れながら、朝ご飯を食べる。


 うん、美味しい。


「ティゼル、またゴーにぃたちを使っただろう。

 結婚してまだ数年なんだから、少しは遠慮しないと」


 私と一緒に朝食を食べているこちらの優し気な男性は、アルフレートお兄さま。


 私はアル兄と呼んでる。


 アル兄は私のことが心配なのか、自室とトイレ以外では私を一人にしてくれない。


 常に誰かと一緒にいることを求めてくる。


 ちょっと過保護じゃないかな。


「ゴー兄だけじゃないわ。

 シー兄、ブロ兄にもなにかさせてるわよね?」


 同じく、一緒に朝食を食べているこちらの妙にカリスマのあふれる女性は、ウルザお姉さま。


 私はウルねぇと呼んでる。


 ウル姉も私のことが心配なのか、私を一人にしてくれない。


 二人からの愛を感じるわ。


 腰に結ばれたひもで物理的に。


 愛って、物理的に感じるものだったのかしら?


 もっとこう、精神的なものだったと思うのだけど?


 ちなみに、この紐の先には、魔王のおじさんが繋がっている。


「あー、アルフレートにウルザよ。

 ティゼルがゴールたちを使うのは、私が頼んだからでもあるのだ。

 大目にみてもらえないだろうか」


 さすがのアル兄もウル姉も、魔王のおじさんから言われれば仕方がないと、これ以上はなにも言わない。


 ……


 あれ?


 アル兄もウル姉も、私と魔王のおじさんを繋ぐ紐をじっと見てるわね。


 私が紐を引っ張って魔王のおじさんに助けての合図を送ったのがバレたのかな?


 あ、二人同時に、大きなため息をいてる。


 どうやら、バレていたみたい。


 さすがはアル兄とウル姉。


 見事な観察力とめておきましょう。


 しかし、バレてもアル兄とウル姉がなにも言わないのは、この朝食の席に魔王の奥さんである学園長がいるから。


 魔王のおじさんが、奥さんをほうって私のようなかわいいと会話せずに意思を通じ合っている仲なんて、言えませんよね。


「アルフレートさん、ウルザさん。

 私のことは気にせず、しかってかまいませんよ」


 あれ?


 学園長にもバレてる?


 そして、魔王のおじさん、学園長が怖いからって、紐を引っ張って私に助けを求めないで。



 うーむ。


 長々と叱られてしまった。


 もっと上手にやらないと駄目ってことね。


 頑張ろうと思う。


「ティゼル、そろそろ行くか」


 魔王のおじさんが立ち上がりながら、そう言った。


 朝食は全員、食べ終わっている。


 叱りながら、叱られながらも食べていたからね。


 私は魔王のおじさんの肩に乗り、王城に向かう。


 魔王のおじさんのお手伝いをするためだ。


 アル兄、ウル姉、学園長は学園の校舎に向かう。


 アル兄、ウル姉は学園長のお手伝いではなく、学園に通うほかの生徒との交流会が中心。


 将来のことを考えたら、ここでの交流は重要だ。


 頑張ってほしい。




「おはようございます」


 王城の正門を守る衛兵たちの挨拶を受けながら、私と魔王のおじさんは入城。


 四人の護衛と八人の文官が現れ、そのまま一団となって執務しつむ室に向かうのだけど、このときから魔王のおじさんの仕事は始まっている。


 魔王のおじさんは文官の報告に耳を傾け、手短に指示をしていく。


 ここでの内容は誰に聞かれても問題ないものばかり。


 私と魔王のおじさんが執務室に入るけど、一緒にいた護衛と文官は入り口まで。


 執務室では、三人の文官と一人の将軍が待っている。


 内務ランダンのおじさん外務ビーゼルのおじさん財務レグさん軍務グラッツのおじさんの四人から派遣された文官と将軍。


 つまり、四天王の代理人たち。


 魔王のおじさんでも、気を抜けない相手だ。


 ……


 うん、どうして四人とも、魔王のおじさんじゃなく、私に報告をしているのかな?


 魔王のおじさん、窓の外を見てないでちゃんと聞かないと。


 たしかに私の発案した内容ばかりだけど、だからって丸投げは問題があるんじゃ……いや、貴方たちも私のほうが話が早いって言ってる場合じゃなくて。



 とりあえず、火急の内容はすばやく処理。


 余裕があるのは、魔王のおじさんに投げる。


「魔国八将?

 なんだ、これは?」


 昔あった魔王国の将軍関連の役職。


 これを復活させてはという意見があるのだけど?


「八将ということは、将軍を八人選ぶのか?」


 ここでの将は、軍を率いる将軍じゃなくて、強い人って意味でいいんじゃないかな?


 この役職を復活させたい人たちは、広大な魔王国の領土に対して、抑えとなる人が少ないのを問題視しているみたい。


「各地には、力を持つ貴族や代官がおるではないか?

 それでは駄目なのか?」


 それだと、魔王国じゃなくてその力を持つ貴族や代官の権勢が強くなっちゃうのが問題でしょ。


 ある程度の力は許容しなきゃ駄目だけど、中央を脅かすほどは不要よ。


「しかし、そう言われても……この八将も、どうせ軍の上層部か、貴族たちの持ち回りになるのであろう?」


 実力主義の魔王国とは思えない考えね。


 目的は、中央の威信の維持なんだから、軍とか貴族とか関係なく、中央が選んだ強い人でいいのよ。


「それだと、ゴール、シール、ブロン、アルフレート、ウルザ。

 あとは、メットーラにアサ、アースか?

 ああ、リグネ殿もいたな。

 九将にするか」


 こっちの身内を自然と引き込まないように。


 見逃せるのは、混代竜族のオージェス、ハイフリーグータ、キハトロイぐらいかな。


 あの三人、人の姿だと弱いけど、竜の姿になればマシになるわよ。


「ふむ。

 しかし、彼女たちには野球で頑張ってもらわねばならぬからな。

 そういえば、各地に野球場と球団を作る計画はどうなっているのだ?」


 難航中。


 見知らぬ集団競技を広めるのは難しいわ。


 シャシャートの街か五村ごのむらに呼んで、実際に見せるのが一番じゃないかな。


 もしくは、こっちから球団を二つ連れていって、やってみせるとか。


「うーむ。

 野球関連は私の個人予算でやっているから、二つの球団を移動させるのはなかなか……移動費とか宿泊代とか」


 あれ?


 各地にある軍の施設を使えば、宿泊費は浮くでしょ?


「公私混同はできんだろう」


 国は王の持ち物だ! みたいな感じでもいいと思うけど。


「暴君はちょっと……

 民衆に討たれるとか、考えたくない」


 なるほど。


 じゃあ、そのためにも魔王のおじさんの凄さを宣伝しないとねー。


「派手なのは困るぞ」


 大丈夫、大丈夫、任せておいて。


 あ、そろそろシー兄、ブロ兄たちから報告が来るかな。


 お父さまから来た情報だから、裏取りとか必要ないと思うけど、一応はやらないとね。


 そうそう、リドリーのベイカーマカ商会が五村に進出したけど、魔王のおじさんのほうでしたい商会とかある?


 私のほうからヨウコさんに紹介したら、話が早いわよ。


「それは助かるが、ゴロウン商会はいいのか?」


 あそこになにかしたら、私がお父さまに怒られるじゃない。


「できれば、私が推薦する商会にも手を出さないでほしいのだが……」


 出さないって。


 向こうが勝手に便宜べんぎはかってくれるだけで。


「行き過ぎた便宜の場合は、ランダンやホウが怒るぞ」


 うまくやるから大丈夫。


「そういう問題ではないのだが……まあ、いい。

 そろそろ、昼食だ。

 そのタイミングで紐をアサに任せるぞ」


 昼食後になにかあるの?


「他国からの使者が来ている。

 さすがにその場にティゼルを出したら怒られる」


 誰が怒るの?


お前の母親(ティア殿)とか、お前の祖母(ルィンシァ殿)とか。

 それに、天使族が魔王国側で前に出ると問題であろう?」


 あー、そっか。


 反魔王国勢力のガーレット王国には天使族の里があり、天使族はガーレット王国の王家に強い発言力を持っている。


 私は天使族の里どころかガーレット王国にも行ったことがないから関係ないと思っていたけど、ほかの人はそうは見ないものね。


 うん、手札が一枚増えた。


 私が外交の場に出るときは、盛大にやろう。


 ふふふ。


「頼もしい笑いだが、そういった場に出すときは村長の許可をもらわねばならんだろう。

 村長が反対したら駄目だからな」


 えー、なんでなんでー。


 魔王国のために頑張るのにー。


「大樹の村に悪影響がない範囲で、魔王国のため。

 だろ?」


 魔王のおじさんと利害は一致していると思うけど?


「たしかにそうだが、父親としての気持ちもわかるのでなー。

 娘にはいつまでも家にいてほしいものだ」


 うーん。


 村で暮らすのも悪くないけど、あそこはお父さまの力が凄すぎて、活躍の場がないのよね。


「そうか?

 ビーゼルの娘を手伝うとか、ラスティ殿を手伝うとか、いろいろあるだろ?」


 フラウお母さんにはフラシアがいるし、ラスティお母さんはラナノーンがいるから。


 私がでしゃばるのも問題があるのよ。


「でしゃばるもなにも、フラシアもラナノーンもまだ子供であろう?」


 子供だからよ。


 将来の手伝う可能性を、私が潰すわけにはいかないじゃない。


「……お前はお前で、いろいろと考えているんだな」


 当然よ。


 まあ、フラシアやラナノーンに手伝うつもりがなかったら、私の出番になるのだけど……まだまだ先の話。


 だから、私はこっちで頑張るの。


 魔王のおじさんも、助かってるでしょ?


「たしかにそうだな。

 できればあと五年は頑張ってほしい」


 どうして五年?


「五年もすれば、アルフレートとウルザがもう少し自由になるだろ?」


 まあ、五年もすれば……そうなるかな。


「アルフレートかウルザのどちらかが魔王を目指してくれれば、私は楽に引退ができると思うんだ。

 私の引退後は、ティゼルの好きにしたらいい。

 次の魔王の補佐をするのも、もちろん自由だ」


 もう引退のことを考えているの?


「まあな。

 人間の国も、あと数年でガタガタになるだろうし、魔王になっても苦労はない。

 ティゼルからも、アルフレートかウルザのどちらかに……希望はウルザだ。

 うん、あれは魔王になっても通用する精神力がある。

 こっそりと誘導してもらえれば」


 ウル姉が魔王って、想像するだけで怖いんだけど。


 いや、ウル姉はいい王にはなると思うよ。


 ただ、ウル姉は王よりも前線指揮官が似合うから……こう、ばーっと、人間の国を滅ぼして進む未来が……


「あ、私にも見えた」


 ……


 私と魔王のおじさんはにっこりと微笑み合って、この話題を終了。


 昼食のために食堂に移動した。






風邪、ひいてました。

急に寒くなりすぎだと思う。布団の強化が間に合わない。

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― 新着の感想 ―
ウルザって元英雄女王で人間側だったよね? ウルザの統治してた国が分裂して4カ国に成ったんだよね。
[一言] ティゼルみたいなキャラは一度肉体的な苦痛を味わってから本気に輝くんですよね^^将来が楽しみです
2024/01/19 05:28 クズヤロウ
[一言] 大演説からのAHEAD!!AHEAD!!GO AHEAD!!するんですね、分かりたく有りません(白目)
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