大樹の村で探す者 ナナ=フォーグマ
ナナ 五村で働くマーキュリー種。五村の密偵。
ヒー 五村で働くマーキュリー種。五村の軍の中心。
ロク 五村で働くマーキュリー種。五村の文官。
フタ 転移門の管理をしているマーキュリー種。
ミヨ シャシャートの街で働くマーキュリー種。
こんにちは。
私の名はナナ。
ナナ=フォーグマ。
太陽城の管理のために生み出されたマーキュリー種です。
現在は五村で働いています。
仕事内容は……いろいろやっていますとしか言えないですね。
まあ、便利屋みたいなものです。
ええ、裏側の。
さて、私は定期的に大樹の村に顔を出しています。
村長に忘れられないようにです。
おっと、恋愛感情とかそんなのではありませんよ。
ただ、忘れられないようにするための努力です。
私はお世辞にも目立つ顔立ちではありませんし、服装も一般的な村娘になるように心がけています。
つまり、覚えられにくいのです。
自覚はあります。
五村でも、何年も一緒に仕事をしている人に、初対面の挨拶をされたことがありますから。
それをみていたヨウコさまに、名札をつけるように勧められたときの私の気持ち、想像できますか?
仕事の邪魔になるので名札はつけませんでしたが、数日は名札を持って活動しましたよ。
そして村長。
村長は私のことをちゃんと覚えてくれています。
さすがは村長です。
……
だったら、なぜ私は村長に忘れられないように、定期的に顔を出すのでしょうか?
疑いたくはないのですが、村長が私と会うときは、必ずヨウコさまが一緒なのが気になるからです。
そして、村長が私をみたとき、ヨウコさまに助けを求めるような視線を送っています。
その視線が送られると、ヨウコさまが村長に耳打ちをしているのです。
なにを言っているかは知りませんが、気になります。
ええ、気になります。
村長のことは信じていますが、気になります。
もう一度。
気になります。
おっと、怖い目になっていたようです。
鬼人族メイドの一人に注意されました。
すみません。
さてさて、気をとりなおして元気に村長に挨拶をと思うのですが……村長はどこにいったのでしょう?
そして、屋敷のそこかしこで伏しているドワーフのみなさまはどうなされたのですか?
映画で飲まれているお酒は、お酒じゃない可能性に気づいた?
はぁ、まあ、撮影のことを考えればそういったこともあるのではないでしょうか?
出演者がお酒を飲んで酔っぱらっちゃ駄目ですしね。
とりあえず、気にしなくていいとのことなので気にせず、村長を探します。
大きな部屋の真ん中にあるテーブルに、五段重ねの大きなケーキがありました。
そのケーキのあるテーブルの周囲を、妖精女王と村の子供たちが無秩序に踊っています。
あれはなんでしょう?
五段重ねの大きなケーキにたいする喜びの舞と。
グーロンデさんが教えてくれました。
ありがとうございます。
そしてオルトロスのオルくん。
いい加減、覚えてくれませんかね?
会うたびに不審者として吠えられるのは、心が痛いです。
グーロンデさんは村長の所在を知りませんでした。
判明したのは、あの五段重ねのケーキを作ったのは暇をもてあました村長だということ。
なるほど。
村長は暇をもてあましているのですね。
となると……
屋敷のなかにある工房に向かいました。
山エルフたちと変な物を作っていると予想して。
工房には山エルフたちしかいませんでした。
残念。
ただ、山エルフたちは村長の所在を知っていました。
助かります。
ところで、作っているのは魔動バリカンですか?
五村でも評判がいいですよ。
近く、まとめて発注がいくと思いますので、よろしくお願いしますね。
あれ?
喜ぶと思ったのに、疲れた顔をされました。
なぜでしょう?
ああ、同じのを量産するのはあまり好きじゃないと。
なるほど。
理解はしますが、五村の発注分までは、頑張ってくださいね。
なんでしたら、私の権限で今、発注しますよ。
とりあえず、五百個ほど。
いえ、冗談ではなく。
それぐらいの発注がいきますよ。
頑張ってください。
私は悲鳴を上げる山エルフたちを放置し、工房を出ました。
山エルフたちの情報では、村長はハイエルフたちの家の近くでなにかを作っているそうです。
なにを作っているのでしょう?
クロさんの子たちや、ザブトンさんの子たちに挨拶をしながら、私は村長のいる場所を目指しました。
……
村長発見。
村長はハイエルフのみなさんと一緒になって、草を編んでいました。
私が村長に近寄ろうとすると、ハイエルフのみなさんが武器を持って私の前に立ちふさがりました。
またですか。
私ですよ、私。
ナナです。
ナナ=フォーグマ。
わかってもらえたようで、嬉しいです。
ですが、いい加減、覚えてくれませんかね。
それは無理?
恐ろしい。
人を傷つける言葉を平然と放つとは。
さすがはハイエルフです。
村長に報告しておきましょう。
覚えられないのは私が悪い?
非を認めず、責任をこちらに押しつけてくるとは……
さすがはハイエルフです。
村長に報告して、注意してもらいましょう。
村長、ハイエルフのみなさんが酷いんですー。
村長はハイエルフのみなさんの味方でした。
酷い。
え?
村長も私が悪いと言うのですか?
たしかに地味なのは自覚はしていますが、それをなんとかしようと頑張っているのに……
そうじゃない?
では、どういうことですか?
……
ええ、たしかに普段の私はスカートですが、今日はズボンです。
動きやすいようにです。
最近、走ったり跳んだりする仕事が多いもので。
髪型もズボンに合わせて変更していますが……
まさか、それで私と判別できていないのですか?
いや、これで変装と言われても……
ただのお洒落ですよ。
歩き方のクセとか、匂いとか、心臓のリズムとかを変えていないでしょ?
心臓のリズムを変えるのはやりすぎ?
そんなことありませんよ。
通常時の心臓のリズムで判別したりされたりは、どこだって普通にやっていますよ。
ええ。
嘘じゃありません。
五村に侵入してくる密偵対策で、やっていますし。
変える方法?
緊張状態の維持で、変わります。
慣れると自由自在ですよ。
あ、子供には教えないでくださいね。
危ないですから。
話が逸れました。
まさか、私のお洒落で、私とわかってもらえなかったとは。
そう言えば、五村で村長に会うときも、村長に会うからとお洒落をしていました。
むう。
反省。
普段は、できるだけ同じ服装、同じ髪型でいるようにしましょう。
まあ、それはそれとして、村長に覚えてもらうために私は村長と行動を共にします。
なにを作っているのですか?
鎧?
草で作っているのですか?
動物の骨や皮を煮詰めた汁を塗ればそれなりに堅くなり、軽量の鎧になると。
なるほど。
私も作ってみていいですか?
ありがとうございます。
後日。
変装とはなにかを教えようと、本気で変装して大樹の村に行きました。
転移門を抜けたところでアラクネのアラコさんに捕縛されました。
そうか、そうなるか。
鬼人族メイド「あの歩き方、ナナさんですね」
グーロンデ「魔力の保持形状でわかります」
オル「見慣れぬやつ! お母さんに近づくなっ!」
山エルフ「五村の人かな?」
ザブトンの子たち「気配でわかる」
クロの子たち「匂いでわかる」
ハイエルフ「変装して村長に近づくな!」
村長「さすがに変装されると、わからない」
ナナ「変装ではありません。ただのお洒落です!」
ヨウコ「いや、見ればわかるだろ?」
ナナ「さすがヨウコさま!」
ヒー「ナナより、それがしの方が影が薄いので覚えてもらっているかどうか」
ロク「私も……出番がない……」
フタ「登場はミヨと一緒だったのに……くっ」
ミヨ「代わってくれるなら、喜んで代わるわよ」(書類の山を見ながら)
オル(犬)は意外と、匂いよりも見た目で判断しているところがある。
動物の骨や皮を煮詰めた汁=膠 です。




