表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
693/982

ジョローの商隊 中編


 俺の名は……まあ、名乗れないから適当でいいか。


 それじゃあ、ダンということにしよう。


 うん、ダン。


 いい感じじゃないかな。



 さて、俺はいま、魔王国に潜入している。


 目的は魔王国の調査。


 失敗は死に繋がる危険な任務だ。


 緊張感を持ち、仲間との連携を忘れないようにしたい。


 したいのだが……


 俺の目の前で、カレーの味で揉める仲間の姿があった。


 牛肉をメイン具材にしたビーフカレー派。


 豚肉をメイン具材にしたポークカレー派。


 鶏肉をメイン具材にしたチキンカレー派。


 海産物をメイン具材にしたシーフードカレー派。


 カツと呼ばれる油で揚げたものを乗せた、カツカレー派。


 カレー用に開発された専用のパンであるナンで食べる派。


 ナンにはバターチキンカレーが最強に決まっているでしょう派。


 それぞれが、自身の信じる味が至高しこうだと言って譲らない。


 みにくい。


 醜い争いだ。


 たかが食べ物で、こうまで争うとは……


 食べられるだけで感謝するということを忘れたのか?


 味にこだわるなとは言わない。


 不味まずいよりは、美味おいしいほうがいいに決まっている。


 だが、この店では個別に注文を受けてくれるのだ。


 好きな物を頼めばいい。


 そうでしょ、隊長?


「むう……カレーうどん。

 新しい体験だ。

 すごい」


 ……


 隊長。


 まとめようとしているのですから、派閥を増やさないでください。


 え?


 俺の派閥?


 いや、俺はべつに……


 し、強いていうなら……


 トッピング増し増し派だ。


 ホウレン草と、トマトのトッピングは至高だと思うのだ。


 そう、どのカレーに入れても大丈夫。


 つまり、全ての派閥がトッピング増し増し派に集えばこの醜い争いも収まるのではないだろうか!


 ねえ、隊長?


「カレーチャーハン……

 これも新しい体験だ。

 美味しい」


 ……


 調査隊、最大の危機だった。




 前々から、シャシャートの街では新しい料理があると聞かされていたため、俺を含めて全員の期待が高まって暴走してしまった。


 反省。


 だが、まあ、それも仕方がない部分がある。


 カレーは美味しい。


 それに、カレーに使われているライス。


 あれは俺たちの国でも生産されている食べ物だ。


 他国からは馬のエサと馬鹿にされることもあるのだが、ライスは俺たちの魂の食(ソウルフード)だ。


 俺たちは一年、国元から離れ、その魂の食であるライスを口にしていなかった。


 暴走してしまうのも、仕方がないことだ。


 しかも、ここで食べるライスは、国で食べるライスよりも美味い。


 俺たちがこのシャシャートの街に到着してから十日ほど経過しているが、ずっとカレーになるぐらいだ。


 ライス単品もあるが、ライスはなにかと一緒に食べるものだからな。


 カレーで問題はない。


 ちなみに、ナン派は、国で食べるライスよりも美味いことを認めたくない派だったりする。



 ふう。


 まったく、こんなに美味いライスをどうやって作っているのだ?


 この街に来るまで、ライスを生産しているところは見たことがない。


 魔王国がライスの生産を隠しているのか?


 いや、それだったら店で出したりはしないだろう。


 カレーの値段も高いとは言えない値段だった。


 つまり、このライスは魔王国では一般的なのだろう。


 いや、この辺りでは一般的と考えるべきか。


 となると……


 シャシャートの街の周辺を調べれば、この地でのライス作りがわかるか?


 そう言えば、五村ごのむらの噂があったな。


 一応、ちゃんとあるらしく、この街から一日ぐらいで着くと聞いている。


 複数人から聞いた情報なので、間違いないだろう。


 五村がライス作りの拠点の可能性はどうだろう?


 ありえそうだな。


 ……調べたい。


 だが、勝手はできない。


 俺は魔王国を調査するために、この場にいるのだ。


 私心は捨てろ。


 ……


 ライスは、このシャシャートの街の大事な収入源ではないだろうか?


 つまり、調べる対象?


 そうじゃないかな。



 俺は仲間に、ライスの生産地を調べる方針を提案した。


 仲間は反対しなかった。


 ふっ。


 さすがだな。


 しかし、全員で五村に行くわけにはいかない。


 俺たちの目的は、王都とこのシャシャートの街の調査なのだから。


 五村には選抜した数人で行けばいいだろう。


 何人にする?


 五人?


 わかった、五人だな。


 よし、希望者を募集する。


 希望者の数が多ければ、クジを作れ。




「クジなんて嫌いだー!」


 俺はシャシャートの街の広場で、叫んだ。


 いつのまに俺の横にいたのか、強そうな魔族の男性に、すごくわかるとうなづかれた。


 わかってもらえて、嬉しい。


 どこの誰か知らないけど。


 あ、野球の監督ですか。


 野球は聞いたことがありますよ。


 棒と玉でする競技ですよね。


 これから試合を?


 それじゃあ、観戦させて……参加していい?


 ですが俺は……


 なるほど、魔族だけではなく、人間も参加しているようですね。


 つまり、魔族も人間もかわらずに楽しめるということか。


 わかりました。


 頑張らせてもらいます。


 野球のルール、よく知らないけど。




 五村に調査に行くことはできなくて気落ちしたが、野球をやってすっきりできた。


 今度は、ホームランを狙ってやる。


 っと、違った。


 仕事を忘れてはいけない。


 この街の調査だ。


 だが、まだ序盤。


 危ない真似はせず、街で噂を拾うことに終始する。


 ……


 なんでも、この街の北に、変なゴーレムがでるそうだ。


 どう変なのかというと、ゴーレムなのにすごく速く動き、物を売ってくるとのこと。


 たしかに変だ。


 まず、ゴーレムなんて、動きが遅いことの代名詞だ。


 それがすごく速く動く?


 ……見てみたい。


 幸い、危険な存在ではないようだ。


 俺一人でも調べられるか?


 いや、この街から北に行けば行くほど、危険な魔物や魔獣があらわれるという話だ。


 さらには、その突き当りにある山には、ドラゴンが住む。


 これは俺の国まで届く、有名な話だ。


 こちらから手を出さない限り、ドラゴンがなにかをしてくることはないだろうが……


 調べられる場所まで、行ってみるという感じでいいかな。


 俺は仲間たちに、ゴーレムを調べたいと伝えた。


 がんばれと応援された。


 ……


 希望者、ほかにいないの?





すみません。

前後編で収まりませんでした。

中編です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] シムラー…じゃなかったダーン!そいつそいつ!!( ´`ω’)δ=σ"" 多分魔王国最重要人物がその監督だよ!!w
[良い点] 移動販売ゴーレム・・ とくし丸? [気になる点] これは、あれか ゴーレム探して北の森を彷徨い、大樹の村の西の川の下流に辿り着くとか、そんな感じかな?
[良い点] マルーラのカレーがC○C○壱みたいなメニュー展開にw [気になる点] 野球チームの具体的なメンバー内訳ってありましたっけ? 種族別で何人が入って1チーム構成してるとかの内訳見て見たいですね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ