調査団先発隊
リグネ ハイエルフ。リアたちの母親。王都の学園で働いている。
オージェス 炎竜。王都でアルバイト生活中。
ハイフリーグータ 風竜。王都でアルバイト生活中。
キハトロイ 大地竜。王都でアルバイト生活中。
イースリー 人間。ウルザの友達。
ミヨから依頼されたシャットの街の調査を引き受けることになり、即座に行われることになった。
「では、いってくる」
調査団先発隊の隊長に任命されたリグネが俺に敬礼してくれた。
「いってまいります」
そして、リグネに率いられたオージェス、ハイフリーグータ、キハトロイの混代竜族の三人も俺に敬礼してくれる。
俺は敬礼を返した。
うん、俺は留守番。
調査を引き受けたからと、俺が真っ先に行く必要はないそうだ。
なるほど。
そのあたりでミヨは妻たちを説得したのか。
しかし、わざわざリグネたちを王都から呼び寄せなくてもいいと思うのだが……
王都にいるアルフレートたちは、不自由しないだろうか?
ん?
アルフレートからの手紙を預かっている?
なぜそれを先に言わない。
アルフレートからの手紙は、近況とリグネたちをよろしくといった内容。
元気にやっているようでなにより。
ウルザはイースリーと仲良く遊んでいるらしい。
二人で王都の賭場を荒らした?
なにをやっているんだ?
大人が一緒にいるのだろうけど、賭場とか危険な場所には近づかないように返事に書いておこう。
ティゼルはダルフォン商会に入り浸っているのか。
迷惑をかけていなければいいが……
アサとアースにフォローをお願いしておこう。
メットーラは学園にいるだろうアルフレートに専念してもらいたい。
俺が手紙を読んでいるあいだに、リグネたちは出発。
転移門で五村に移動して、向かうようだ。
リグネと混代竜族の三人だけで大丈夫なのかな?
先発隊の目的は偵察だから、数が多すぎても困ると。
なるほど。
大暴れするわけじゃないんだな。
ちょっと安心。
危険があれば、すぐに撤退してもらいたい。
とりあえず、俺が調査に行くのはリグネたちが帰ってからになるので、それまでは待機。
待機と言ってじっとしている必要もない。
子供たちと遊ぼう。
……
子供たちはグーロンデと勉強中か。
邪魔はできない。
仕方がない。
となれば、勉強を頑張っている子供たちのために、なにかお菓子でも作ってみようかな。
そう思って台所に行くと、試食係は任せろといった顔で妖精女王が待っていた。
まあ、いいけどな。
さて、なにを作ろうか?
夏の収穫は終わったが、まだまだ暑い。
アイスクリーム。
いや、アイスクリームは作り置きがある。
アイスクリームの新味の開発をするのも手だが、子供たちの勉強が終わるまでに開発する自信はない。
それじゃー、パフェ。
フルーツパフェなんかどうだろう。
王都でやっているアースの店で出されていた“フルーツ盛りのアイス添え”はパフェと呼ぶかどうか悩んだが、俺のイメージするパフェを作ってみよう。
フルーツは冷凍保存されているものが豊富にあるな。
よし。
完成したパフェを妖精女王に渡す。
ご満悦のようだ。
よかった。
しかし、パフェを入れる適当なガラス容器がなかったので、ミスリルグラスを使ったのだが……
見た目がイマイチだな。
いや、ミスリルグラスは綺麗なんだけど、透き通っていないからなー。
やはりパフェグラスが必要。
ガラス技師に、パフェグラスを作ってもらったほうがいいかな?
ああ、それも問題があるか。
シャシャートの街や五村ではガラス製品を作っている者はいるが、実は作れる物というか形が決まっている。
これは手作業で瓶などを大量生産する必要があったガラス技師たちの境遇による弊害……ではなく、ただの縄張り争い。
器ガラス、板ガラス、美術ガラスの三つの派閥に分かれて、互いに作る物を細かく決めている。
技術発展の妨げだなと思うけど、ガラス技師の商売を守っている側面もある。
単純に悪いことだとは言い切れない。
決まったガラス製品なら、安定して入手できるしな。
しかし、こちらが欲しいものを求めるとなると、面倒になる。
五村に住むガラス技師なら、ある程度の融通を利かせてくれるけど、それに甘えて派閥を無視させるわけにもいかない。
これは……自作するしかないか。
いや、さすがにガラス作りは自信がない。
パフェグラスは保留としておこう。
ところで妖精女王。
パフェを食べ終わったのはわかるけど、置いてある濃い砂糖水漬けにしてあるフルーツは、子供たち用だから食べないように。
これは甘さを足しているわけではなく、カットしたフルーツの色が悪くならないようにしているだけだから。
ええい、食べたいならヨーグルトと一緒に食べるように。
ジャムを足してもいいから。
ああ、その前にパフェの感想は?
「満足」
それはなにより。
勉強が終わった子供たちにフルーツパフェを配っていると、ハイエルフの一人が駆け込んできた。
五村でヨウコの手伝いをしている一人だ。
どうした?
五村で爆発?
違う?
そうじゃない?
リグネたちが向かったシャットの街がある辺りで、大きな爆発があったらしい。
それなりに離れたシャシャートの街や五村からでも確認できる爆発だったそうだ。
時間的にリグネたちは無関係かなと思ったけど、混代竜族の三人がドラゴンになって飛んで行った場合は、爆発に巻き込まれた可能性が高い。
リグネたちは無事なのか?
飛んでいるドラゴン三人を確認した?
リグネも乗っていたと。
つまり無事か。
よかった。
それじゃあ次だ。
爆発の原因はなんだ?
リグネたちは爆発に関わっているのか?
俺の疑問への回答は、リグネたちが戻って来るまでお預けのようだ。
俺の前でグッチが頭を下げていた。
爆発の原因だそうだ。
正確には、爆発物を溜め込んでいた原因。
長年、シャットの街を、危険物の集積場所にしていたそうだ。
廃墟なので、誰も困らないだろうと。
一応、安全を考えて人が近づかないように魔法を施していたそうだが、その魔法が綻んだのか、冒険者が魔法を突破したのかはわからないが、シャットの街が発見されてしまった。
調査に行くことがグッチの耳に入っていれば、事前に警告なり止めることができたのだが、グッチは五村でいろいろと忙しかった。
忙しい理由は聞かないでおく。
ああ、そう謝らなくていい。
爆発の原因はグッチかもしれないが、グッチが悪いわけじゃない。
シャットの街に到着したリグネたちが魔物と遭遇し、火系の魔法で追い払ったら爆発物に引火したという流れ。
爆発は事故だ。
まあ、リグネたちは危ないところだったが……
リグネたちは怪我一つなく、爆発に関してもグッチを責める気はないそうなので、この件はここまでだな。
いや、逆に爆発させた物をこっちが弁償しなきゃ駄目だな。
俺がそうグッチに申し出ると、廃棄品なのでと断られた。
うーん。
なにか代価を考えておこう。
ところで怪我一つないリグネたちは、どうやってあの爆発を避けたんだ?
話を聞くに、爆発現場の中心地にいたんだろ?
「爆風より速く走ったら大丈夫だ」
……
ま、まあ、リグネならできるのだろう。
「死ぬほど修業した結果だ」
「疾きこと、風の如く」
「殺意のない爆発では私の鱗を焦がすことすらできません」
混代竜族の三人は胸を張ってそう答えてくれた。
……
「炎竜族のオージェスは生まれつき炎耐性があるので、彼女を盾にしました」
俺の疑念の眼差しに耐えかねたキハトロイがそう自白した。
正直でよろしい。
そして、改めて無事でよかった。
お久しぶりになってすみません。
全部、花粉症が悪いんです。(責任転嫁)
感想、誤字脱字の指摘、レビュー、ありがとうございます。
励みになります。
これからも、頑張ります。
よろしくお願いします。