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空飛ぶ絨毯を作る一族


 魔王に空飛ぶ絨毯フライング・カーペットのことを自慢していると、魔王国にも空飛ぶ絨毯を作る一族がいると教えてもらった。


 空飛ぶ絨毯を作ることを生業なりわいにしているのだけど、作り方は公開されていない。


 その一族の秘術なのだそうだ。


 しかし、それなりに歴史のある一族なのだそうだが、作られた空飛ぶ絨毯の数は少ないそうだ。


「村長の言う方法で作っているのだとすれば、それも納得だな」


 そうかな?


 数を揃えて声をかければ、量産できそうではあるが?


「まず、未使用の絨毯と、核になる魔石を用意するのが大変だ」


 なるほど。


「その上で、声をかけるとあるが……これはある種の魔法だ」


 魔法?


「正確には魔法の前段階だな。

 なので、ある程度の魔力を持つ者がやらねば意味がない」


 え?


 それだと、俺の声かけは無駄?


 俺がショックを受けていると、空飛ぶ絨毯がそんなことはありませんよとなぐさめてくれた。


 魔力は込められなくても、声かけは大事なのだそうだ。


 ありがとう。


「えーっと、絨毯がそう言っているなら、魔力がない者の声かけも役に立っているのだろう。

 しかし、やはり動くまでとなると、魔力を持つ者の声かけが必要」


 そうか。


 メインで声をかけていたルーの魔力が大事だったということか。


「うむ。

 あのルー殿で二十日ということは、普通の魔族だと数十年かかるだろう。

 量産など無理だろう」


 ルーですら途中で集中力が切れたのに、数十年。


 不可能だな。


 しかし、それをやっている一族がいるのか。


 凄いな。


「しかし、その一族が作る空飛ぶ絨毯は、そこの絨毯ほど表現力はゆたかではないぞ。

 村長の声かけがよかったのかもしれないな」


 魔王がそう言うと、空飛ぶ絨毯は嬉しそうに魔王に近づいた。


 魔王に乗るかと誘っている。


 空飛ぶ絨毯が人見知りしないのはいいことだ。


 ん?


 魔王を乗せてどこに行く気だ?


 あ、ルーに見せつける気だな?


 ルーはねると大変なんだから、やめてくれ。


 ……はぁ。


 そろそろルーと和解してもらいたいものだ。





 結界の穴をどうするかが議題の、ドースとドライムの相談に参加。


「結界の張りなおしは無理だな」


 ドースの結論。


 理由は、その結界を張る技術を持つ者がいないこと。


 資料を調べ、技術を復活させてと考えると百年単位で時が必要なのだそうだ。


 ドースの予測では、千年ぐらいかかる。


 そうなるとドースが担当する案件ではなく、孫、曾孫が担当する案件。


 かわいい孫や曾孫にそんな仕事をさせたくはないので、張りなおし案は却下。


 いまある結界をなんとか修復して使い続けたいそうだ。


 気持ちはわかるが、それでいいのか?


「あの結界の目的は、この地の魔物、魔獣を出さないことだ」


 うん、そう聞いている。


「それゆえ、結界も一種類ではない。

 複数組み合わせて作られている」


 そうなの?


「うむ。

 簡単に説明すると、大型に合わせた結界、中型に合わせた結界、小型に合わせた結界、超小型に合わせた結界がそれぞれ複数枚ある」


 そうなのか?


 けっこう、大規模な結界だったんだな。


 まあ、だからこそ張りなおすのは難しいのか。


「今回、問題となっているのは小型に合わせた結界で、もっとも外側にある。

 その結界に穴は開いているが、その内側にも小型に合わせた結界がまだあるのだ。

 そう、大事おおごとにはならん」


 なるほど。


 ……


 あれ?


 それなら、どうしてインフェルノウルフは、結界を抜けられたんだ?


「父さん。

 言いにくいのですが……

 内側の結界にも穴が開いています」


 これまで黙っていたドライムが、ドースに報告する。


「小型に合わせた結界だけですが、ほぼ一直線で穴が開いていまして……

 たぶん、内側から破られたのではないかと思います」


「結界の修復はどこまでやった?」


「一番、外側だけです」


「なぜ内側をやらなかった?」


「大根の収穫が近くて」


「……」


「……」


「大根の収穫より、結界の修復のほうが大事だろうが!」


「小型の結界はインフェルノウルフクラス用の結界ですから、重要度は低いですよ。

 ほぼこの村にいるんですから!」


 いや、まだまだいるだろ。


 野生のインフェルノウルフ。


「ドライム。

 門番竜の役目を忘れたわけではあるまいな」


「忘れてないから、結界の修復をしたんです」


「ぐぬぬ……大根の収穫が終わったら、戻って残りの結界の修復もするのだぞ」


「もちろん、そのつもりです」


 ドライムが胸を張るが、俺としてもそういった結界はちゃんとしておいてもらいたい。


 面倒事は困る。


 なので、俺からも頼んでおく。


 しかし、内側から破った魔物か魔獣はどうなったんだ?


「ドライム。

 結界の様子から、破られたのはどれぐらい前だ?」


「二千年ほど前かと」


「ふむ。

 それぐらい前となると、グッチに聞いたほうが早いな。

 どこにいる?」


「それが、私用で少し前から外出中です。

 珍しく真剣な顔で、尊厳そんげんを守るために必要なのですと言っていたので、許可したのですが……」


 グッチは五村ごのむらでヴェルサとなにかやっていると、ヨウコから報告を受けている。


 グッチの手が空いたら、教えてもらうとしよう。


 二千年前なら、いまの俺には関係ないだろう。




 村の道を、台車が疾走しっそうしていた。


 山エルフたちが作っている箱専用の台車の改良版だろう。


 直線だけでなく、右や左にも曲がれている。


 ふたの開け閉めしかアクションができないのに、どうしたのだろうか?


 ……


 蓋の開く角度で、アクションを伝えているのか。


 蓋が閉じている時は停止。


 少し開くで、右に曲がる。


 中ほど開くで、直進する。


 大きく開くで、左に曲がる。


 なるほどなるほど。


 速度は一定なのか?


 箱の中に速度を調整する魔石があって、蓋を開けたときに最高速度が決まるのか。


 へー。


 上手くいっているのか?


 まだ欠点がある?


 現在の構造だと、止まるときにどうしても少し右に曲がるのが欠点か。


 そのあたりを敏感びんかんに反応しないようにすると、今度は普段の操縦のときに困ると。


 うーむ。


 たしかに。


「それと、もう一つ欠点がありまして……」


 まだあるのか?


「速度を上げすぎると、蓋を中ぐらいの開きでキープするのが難しいようで……」


 ああ、空気抵抗が……


 箱の操る台車は、速度を上げつつ左に曲がりつつある。


 あ、完全に左に回転し始めた。


「ああなると、自力で止まるのが難しいのです」


 空気抵抗で蓋を閉めることができないから、止まれないんだな。


「実験中止!

 外部停止装置作動!

 保安員、網を投げて止めろ!」


 周囲に控えていた山エルフたちが、止まった台車に駆け寄った。


 箱は気を失っているようだ。


 無茶をする。


 欠点がわかっていて、四千五十一番の箱は台車に乗ったのか?


「今回は大丈夫と言ってましたので」


 心意気は認めるが、技術面で解決していないことを根性でなんとかしようとするのはやめるように。


 俺としては台車の操縦はゴーレムに任せ、箱はそのゴーレムに命令カードを見せて操る方法を推奨すいしょうしたい。






村長「二千年前なら、いまの俺には関係ないだろう」

ドラゴン(フラグだな)

住人たち(フラグだな)



ゴーレム「私の出番のようですね」

四千五十一番の箱「ゴーレムを使うのはなにか違う」

山エルフ一同「わかる」



少しのあいだ、のんびり更新になります。

すみません。


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― 新着の感想 ―
[一言] 社会人になってお金も余裕が出来たので、 現行発売分の書籍を買いまして、未書籍化の分を こちらで読み返し中だったのですが… なるほどここはそういう事だったのか… という発見があっていい!サイ…
[一言] 箱同士で謎に意思疎通できるみたいだから、箱を2つ乗せて、左右の車輪の速度をそれぞれの箱の開放度で操作すれば行けます。 箱同士が喧嘩したら酷いことになりますが。
[一言] 読み返し中 箱を開いた状態で逆さにおいて疑似閉まった状態にして操作レバーがはいるようにする とか?w でもハクレンが石投げたときに避けたよね 少しでも動けるならやりようはありそうw
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