ラナノーンの火
二月二日、二回目の更新になります。ご注意ください。
ペガサス 去年の夏に購入されて村にやってきた。
オージェス 魔王国の王都でエンジョイしている混代竜族。
ハイフリーグータ 魔王国の王都でエンジョイしている混代竜族。
キハトロイ 魔王国の王都でエンジョイしている混代竜族。
アース ウルザの土人形。王都で喫茶店を経営中。
ラナノーン ラスティの一人目の子。女の子。ドライムの孫。ドースの曾孫。六歳ぐらい。
ククルカン ラスティの二人目の子。男の子。ドライムの孫。ドースの曾孫。赤ちゃん。
ため池を、ポンドタートルたちが列を作って泳いでいた。
一列、二列、三列と綺麗に変化させるので、見てて飽きない。
そして思う。
増えたなぁと。
ぱっとみて百はいる。
まあ、いいんだけどな。
ため池を狭く感じたら、言ってほしい。
広げるか、新しく作るから。
ポンドタートルは手がかからないから、これぐらいはしてもいいだろう。
若い個体が細い水路に嵌まって、助けを求められるぐらいは許容範囲。
ポンドタートルに対抗したのか、ペガサスが列を作って飛んでいた。
……
お世辞にも綺麗な列ではないな。
まあ、飛ぶってことは、前後左右に上下も加わるってことだから難しいのだろうけど。
ところで、いつのまに数が増えた?
去年は六頭じゃなかったか?
いや、出産したら増えるのはわかるけどな。
それにしても十三頭になっているのは増えすぎだろ?
七頭、産んだのか?
違うよな。
産んだのは二頭。
その二頭はまだ幼くて飛べず、俺の横で羨ましそうにお前たちを見ているのだから。
はい、新しくやってきた七頭、こっちに集合。
いつ、どこからやってきたのかな?
村に到着したのは昨日?
もともとは王都近郊の村で飼育されていたけど、魔物や魔獣がやってきて危なくなったから放たれた?
放たれたって、それでいいのか?
いや、村としては魔物や魔獣のエサになるペガサスを近くに置いておくほうが危ないのか。
ペガサスにしても、飼育小屋で囲われているよりも放たれたほうが安全だしな。
それで、そこからここまで飛んできたのか?
違う?
この場所はドラゴンに教えられた?
どこのドラゴンだ?
……
王都の混代竜族の三人?
名前はオージェス、ハイフリーグータ、キハトロイだったな。
その三人が魔物や魔獣を退治しているところに遭遇し、村の場所を教えられたのか。
なるほど。
しかし、よく飛んでこられたな?
周囲の山は高いし、森は危険だと言われているのだが……
え?
短距離転移門を使って五村に移動し、そこから転移門でここまで来た?
混代竜族の三人はそこまで教えたのか?
違う?
混代竜族の三人からティゼルを紹介され、ティゼルの手配で移動してきたのね。
それなら納得。
屋敷に戻れば、そのあたりの詳細が書かれたティゼルからの手紙が届いているだろう。
それじゃあ、一時預かりってことでいいのかな?
もといた村が安全になったら戻りたいだろ?
ティゼルに買い取られているから、ここで定住するつもり?
それならかまわないが……
最初にいる六頭と喧嘩するなよ?
あと、ここでの生活に慣れたら、飛ぶ練習をしろ。
さっきの列、乱れていた原因はお前たちだぞ。
まあ、飛ぶよりも走るのが好きなら、そっちを頑張るのもありだが……
俺は視線を、馬やユニコーンたちに向ける。
走る方面はライバルが多いからな。
新しくやってきたペガサスたちはやる気な顔をしていたから、大丈夫だろう。
しかし、どうして到着した昨日に報告がなかったのかな?
クロの子供たちやザブトンの子供たちも……
俺がそう疑問に思うと、クロの子供の一頭が報告してくれた。
到着したとたん、倒れた?
環境の変化がきつかったのかな?
起きてから報告と思っていたら、今になってしまったと。
わかったわかった。
怒ってないから。
そう謝らないでくれ。
なんでもかんでも報告されても、俺も困るからな。
ティゼルの手紙には、ペガサスを買ったので村に送ったというシンプルな報告。
誰から買ったとか、そういったことは書かれていないってことは、気にしなくていいのかな?
あとはティゼルの近況とアースの店で新しく欲しい食材の一覧と……
ティゼルはグラッツに渡した特別製の味噌に興味があるようだ。
やたらと細かく聞いてくる。
グラッツに自慢でもされたのかな?
生産したら、ティゼルたちにも送ってやろう。
それと……
魔王を主人公にして、映画撮影が進んでいると?
イレたち撮影隊が頑張っているのか。
ふむ。
ん?
インフェルノウルフと和解するシーンがあるから、村で撮影したいと。
出演してほしいと言われたら困るが、撮影に協力するぐらいかまわないさ。
イレたちなら、無茶も言わないだろうしな。
変な遠慮をするなと返事を書いておこう。
ドライムが戻ってきた。
結界の穴はふさがったのだろうか?
「応急処置だがな。
かなり昔から空いていたようで、修復は無理だ。
あれを完璧にするなら、結界を張りなおしたほうが早い」
張りなおすのか?
「そうなると父に相談しなければならんが……」
ドライムが近くを歩くドースを見た。
ドースの腕にラスティの子であるククルカンがいたからではないだろうが、面倒なことは後回しと首を横に振られた。
「私も面倒なことは後回しにしたい」
ドライムはそう言って、ドースのところに向かった。
ククルカンを奪いに行ったのだろう。
ククルカンを抱えて喧嘩したら、怒るからな。
俺がそう言う前に、ラナノーンがドースとドライムを注意していた。
うん、ラナノーンはしっかりしてきたな。
ラナノーンはまだドラゴンの姿になれないが、本人は気にした様子がない。
まあ、ラスティやライメイレンも、ドラゴンの個体差は十年単位と言っているので、焦る必要もないし、焦らせる必要もない。
のんびり、ゆっくりすればいいさ。
ラナノーンの注意を受けたドースとドライムだったが、声が小さくなっただけだった。
だからかな?
ラナノーンが火を吹いた。
比喩ではなく、リアルに。
口から。
ラナノーンは「失礼しました」と謝罪してからドースからククルカンを奪い、ドースとドライムに一礼して離れて行った。
……
子供の成長は早い。
俺はドース、ドライムと一緒にお茶を飲みながら、子育ての話をした。
すみません。
少しのあいだ、更新が緩やかになります。
ご容赦ください。
感想、ポイント、誤字脱字報告、ありがとうございます。
これからも頑張ります。