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保護

ドライムが一緒に戻らない理由を追加しました。


 昼。


 俺は空飛ぶ絨毯フライング・カーペットに乗りながら、そろそろ収穫時期に入る畑を見回っていた。


 年に三回ある収穫の二回目。


 夏の収穫。


 夏なのに実っている稲穂に、最初のころは違和感があった。


 いまは大丈夫。


 慣れた。



 俺の乗る空飛ぶ絨毯の横を、クロとユキが、後ろに鬼人族メイドが一人、歩いている。


 なので、飛行速度はゆっくりめ。


 ……


 俺、このまま空飛ぶ絨毯に乗る生活をしていたら、太るんじゃないかな?


 しかし、空飛ぶ絨毯は乗ってほしいと強く希望している。


 空飛ぶ絨毯として生み出したのだから、乗ってやりたいとも俺も思う。


 うーん、収穫が始まるまでは、このままでいいかな?


 収穫が終わったときが問題だな。


 説得できるかな?


 あと、最近、馬やケンタウロス族たちの俺を見る目が少し怖いのが気になる。


 別にお前たちをないがしろにしているわけではないんだぞ。


 馬は馬で、それなりの年齢になっているだろうし。


 いや、おとろえは全然感じないけど。


 少し前も、牧場エリアでほかの馬たちを率いて先頭で走っていたし。


 食べている物がいいからかな?


 それとも、俺が知らないだけで馬の現役年齢は長いのかな?


 競馬だと、八歳馬はピークを過ぎているからほとんど引退すると聞いたことがあるが……


 あれは競走馬サラブレッドだからか?


 乗馬用の馬は、もっと長く活躍するのかもしれない。


 それとも、こっちの世界の馬は強いのかな?


 わからん。



 畑の見回りを終え、次は子供たちのいるプールの様子を見に行こうと思ったところで、ビーゼルが慌ててやってきた。


 なにかあったのかな?




 俺は魔王国の王都の東側にいた。


 目の前に大きな山脈が壁のようにある。


 普段、逆側から見ているが、ここまで近づいたことはあまりないからな。


 ちょっと新鮮だ。


 俺と一緒にいるのは転移魔法を使ってくれたビーゼル、それと護衛役のガルフとダガ。


 あと、そろそろ大根の収穫かなと様子を見に来ていたドライム。


「村長、あちらに」


 ガルフがしめす方向に、魔王を中心とした一団がいた。


 一団というには数が少ないかな?


 魔王と、護衛の兵士が六人。


 あと、アルフレートとウルザだ。


「父さん」


 寄ってくる二人を抱きしめる。


 魔王は来なくていいんだぞ。



 少し間を置いて。


 ビーゼルから大まかな話は聞いているが、魔王から詳しい話を聞く。


「インフェルノウルフがいるから、村長のところのインフェルノウルフかなと思って近づいたら殴られた」


 殴られたが、怪我はないようだ。


「あの程度ではな」


 魔王は胸を張る。


 怪我はないようだが、顔の右側がちょっと赤くなっていることは言わないでおこう。



 攻撃されたが、万が一、俺のところのインフェルノウルフだったら困るから、魔王はアルフレートとウルザを呼んで確認を頼んだ。


「村で見覚えがないのは確かなんだけど。

 大樹の村以外で生まれている可能性も捨てきれないからクロイチを呼ぼうかなと思ったんだ」


「でも、クロイチを呼んで喧嘩けんかになったら、この辺りがひどいことになるでしょ?」


 たしかに。


 森は大事だ。


 ウルザがアルフレートを止め、俺を呼んだほうが安全と言ったのを魔王が採用したと。


 色々と気を使わせて、申し訳ない。



 事情はわかったので、次は問題のインフェルノウルフだな。


 どこにいるんだ?


 あっち?


 ……山脈のふもと付近、岩場になったような場所でせていた。


 大きい身体の状態のままなので、それなりの距離があってもよくわかる。


 しかし、なにをしているんだ?


 落ち込んでいるようにも見えるが……


「村長のところの個体か?」


 違う。


 俺のところの個体なら、どこで生まれても一度は俺に顔を見せにくる。


 見た感じ、六歳ぐらいのオス


 前後一歳を含めても、見覚えのない個体だ。


 しかし、見覚えがないからと放置はできない。


 ここにいると、冒険者たちに討伐されてしまう可能性がある。


 これもなにかのえんだろう。


 大樹の村に連れ帰ってやろう。


「連れ帰る?

 どうやって?」


 魔王がそう聞いてくるが、なにを言っているんだ?


 ビーゼルの転移魔法があるだろう。


 以前、召喚魔法で王都付近に呼ばれたクロイチを戻してくれたのを忘れたのかな?


「いや、そうではなく……

 あのインフェルノウルフが素直に従うのか?」


 言えば大丈夫だろ?


「えーっと……」


 ものは試しだ。


 やってみたらわかるさ。


 ああ、ガルフとダガは少し離れてて。


 興奮させちゃうから。


 俺は一人、インフェルノウルフの前にやってきた。



 俺が近づいても、インフェルノウルフは動かない。


 やはり見覚えのない個体だな。


 俺など、気にもしない太々ふてぶてしい態度が新鮮だ。


 だが、ある程度の距離まで俺が進むと、伏せていたインフェルノウルフは立った。


 うーん、大きい。


 クロたちも大きくなれるが、俺の近くではあまり大きくならないからな。


 とりあえず、大きくなっているこの身体をなんとかするか。


 このままだと、さすがにビーゼルの転移魔法でも運べないだろうし。


 立ったインフェルノウルフを気にせずに俺が進むと、さすがに気にさわったのか俺をにらんでいる。


 まあ、そう興奮せずに。


 俺がそう言ってさらに進むと、インフェルノウルフが飛び掛かってきた。


 うん、予想通り。


 俺は【万能農具】を槍にして、飛び掛かってきたインフェルノウルフの両方の後ろ足を横からまとめてはらった。


 インフェルノウルフの体がゴロンと転がり、仰向けになった。


 そこですかさず、脇腹をでる。


 これでもかと撫でる。


 よーしよしよしよし、どうした?


 慣れない場所で怖かったのか?


 大丈夫だぞ。


 すぐに仲間がいる場所に連れていってやるからなー。




 ビーゼルの転移魔法で、ガルフ、ダガ、インフェルノウルフと一緒に大樹の村に戻る。


 アルフレートやウルザも一緒にと言いたかったけど、学園での生活がある。


 まあ、元気な姿を見ることができてよかった。


 次に会うのは冬かな?


 それとも村の武闘会に参加しに戻って来るのか?


 また会える日を楽しみにしておこう。


 ドライムは残って、インフェルノウルフがここに来たルートを調べるそうだ。


 そういや、門番竜として死の森の魔物や魔獣が外に出ないようにする役目があるんだったな。


 大根の収穫は、戻ってくるまで始めないからきっちり調べてほしい。



 村に連れ帰ったインフェルノウルフを、まずクロとユキに紹介。


 クロとユキがインフェルノウルフの群れのトップだからな。


 そこをないがしろにはできない。


 クロとユキが受け入れることを決め、新入りと認定。


 まずはこれで一安心。


 次は……風呂だな。


 うん、汚れているから。


 そのままだと、屋敷に入れない。


 俺が洗ってやってもいいのだが……


 俺が新入りを洗うと、新入りだけを特別扱いにはできないから、ほぼ全頭を俺が洗うことになる。


 さすがに、それは体力的に厳しい。


 俺がどうしようか悩んでいると、クロの子供が四頭、やってきた。


 お前たちが新入りを風呂に連れていってくれるのか。


 それは助かる。


 助かるが……えっと、その、わかっているよな?


 面倒をみるとやってきた四頭のクロの子供は、全てメス


 そして、パートナーがいない四頭だ。


 新入りのインフェルノウルフが、だましたなという顔で俺をみている。


 いや、そんなつもりは欠片もない。


 この世に生を受けたことをなげくんじゃない。


 わ、わかった。


 俺が洗ってやろう。


 四頭にも手を出させない。


 いいさ。


 ちょっと大変なことになるだけだ。


 そのかわり、お前はお前で頑張ってここに馴染なじむんだぞ。


 困ったことがあれば遠慮せずに、俺に言うように。






次回は新入りのインフェルノウルフ視点の予定です。

どうしてあそこにいたのか辺りの話です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒラクが先手を譲った戦いは珍しい?
[良い点] 応用へん [一言] 基本編 667話 村のとある日常
[気になる点] しまった、ドライムの記述があったのを見落としてました。 申し訳ありません。
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