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空飛ぶ絨毯の作成日誌

ガット  ハウリン村の村長の息子。大樹の村に移住、鍛冶担当。

ソウゲツ 虎。



炎色反応の描写にミスがありました。

すみません。

銅の粉、鉄の粉を、錆びた銅の粉、錆びた鉄の粉に変更しました。


 空飛ぶ絨毯フライング・カーペットを作り始めて、二日目。


 褒め言葉のレパートリーに限界が来たようだ。


 勢いで誤魔化そうとしているのを感じる。


 魔導書にはそれでいいと書いてあったから、いいのだろう。




 四日目。


 ルーがなにを言っているか理解できない。


 でも褒めているのだろう。


 がんばれ。




 七日目。


 ルーの様子がおかしい。


 まあ、動かない絨毯に向けて全力で褒め続けているわけだからな。


 むのも仕方がない。


 なので、休ませる。


 代わりに、リアたちハイエルフに褒めてもらう。


 魔導書にも、同じ人が褒め続ける必要はないと書いてあったから大丈夫だろう。


 任せた。


 そしてルー。


 綺麗な物を見るんだ。


 魔導書にも、こういったときは綺麗な物を見るべきだと書いてあった。


 今は夜。


 ならば星空。


 星空を見るんだ。


 どうだ?


 満天の星だぞ。


 ……


 反応が薄い。


 駄目か。


 それじゃあ、たき火!


 火の揺らめきは心を落ち着かせる。


 どうだ?


 ……駄目だ。


 ルーは小さな声でたき火を褒めている。


 もう褒めなくていいんだ。


 たき火が反応しない?


 そりゃそうだけど……


 わ、わかった。


 俺はたき火にびた銅の粉や錆びた鉄の粉、塩などをふりかける。


 ほら、色が変わったぞ。


 ルーの褒め言葉に反応したんだ。


 ただの炎色反応だが、それなりに効果があったようだ。


 ルーの目に生気がもどったように思える。


 よかった。


 ん?


 ルーと一緒にたき火を見ていた子供たちが、俺を見ている。


 やってみたい?


 いいけど、たき火に近づきすぎないようにな。


 あと、一気に投げるのは危険だから禁止だぞ。


 ガット、君は鍛冶場で見てるだろ?


 そんなに驚かないように。


 炎の魔術師とかそんなんじゃないから。




 十日目。


 復活したルーが戻って褒めているが、絨毯は動かない。


 魔導書ではそろそろだと書いてあるんだけどなぁ。




 十五日目。


 動かない絨毯に、ルーが切れた。


 魔法で燃やそうとしないように。


 あと、研究者ならもっと気長に。


 失敗も当然ある。


 その失敗を重ねて、成功を探すんだろ。


 あと少し、頑張ろう。




 二十日目。


 絨毯が動いた。


 そして飛んだ。


 すごい。


 ほんとうに飛ぶんだな。


 次はしつけだが、とりあえずは絨毯が飛んだことを喜ぼう。


 ……


 どうした絨毯?


 なぜ俺のところに来る?


 お前を褒め続けたのはルーだぞ?


 いや、たしかにルーは途中で燃やそうとしたけど……


 かばってもらった恩は忘れない?


 それは嬉しいが、お前がそういった態度を取ればとるだけ、ルーの視線が怖くなるんだが?


 ほら、ルーが魔法の詠唱を始めた。


 詠唱しなくても魔法を使えるのに、詠唱しているってことは止めるチャンスを与えているということだ。


 今だ。


 今しかないぞ。


 早くルーに謝るんだ。


 ええい、俺の背に隠れるな。




 二十一日目。


 俺は空飛ぶ絨毯に乗った。


 グランマリアなどに連れられ、空の散歩をしたことはあるが、絨毯に乗って空を飛ぶのは初めての体験だ。


 まあ、場所は室内で、高度は三十センチぐらいだけどな。


 まだ重い物を乗せて高くは飛べないらしい。


 今後の成長に期待する。


 よしよし。


 俺は空飛ぶ絨毯から降り、ルーと交代する。


 ルーが空飛ぶ絨毯に乗ると、ルーが乗った部分だけ床に落ちた。


 ……


 絨毯よ。


 どうしてそういうことをするのかなー。


 ほら、またルーが魔法の詠唱を始めたじゃないか。


 ルー、魔導書にも書かれていたけど、脅すのは逆効果だから。


 冷静に。


 冷静になるんだ。




 空飛ぶ絨毯は、子供たちを乗せて飛んでくれた。


 高度は俺のときと変わらず、三十センチだけど。


 安全でいい。


 遊び疲れて寝てしまった子供をベッドに運ぶなどで活躍し、鬼人族メイドたちからは受け入れられた。


 これからも頑張ってほしい。


 おっと、子供を乗せて屋敷の外に行くのは駄目だぞー。


 子供を乗せるのは屋敷の中だけ。


 村の中ならかまわないと思うが、万が一を考えるとな。


 いや、絨毯を信用していないんじゃないんだ。


 魔物とか魔獣がやってきたとき、三十センチの高さまでしか飛べないのは危ない。


 速度もそれほどでないだろ?


 ははは。


 落ち込むな。


 生まれたてなんだから、当然だ。


 鳥だって、卵からかえったばかりでは飛べない。


 雛が飛ぶまで、かなり時間がかかる。


 お前は生まれてすぐに飛べたのだから、才能は十分。


 これからは伸びる一方だ。


 よしよし。


 魔導書には、絨毯が飛びだしてからはめすぎるなと注意されていたが、甘えてくるのだから仕方がない。


 まあ、叱るところはしっかりと叱るようにしよう。



 ところでアイギス。


 どうしたんだ?


 胸を張って?


 なにを自慢して……ああ、そうか。


 たしかにお前は卵から孵った瞬間から飛べたな。


 飛ぶより走るほうが速かったけど。


 怒るな怒るな。


 お前の成長にも期待している。


 風呂で使うお湯の温度も丁度良くなってきたしな。


 この調子で、あと少しだけ頑張れ。


 ああ、ソウゲツの太ももの毛は、戻りつつある。


 完全に戻ったら、もう一回、謝りに行こうな。


 一緒に行ってやるから。





 後日。


 空飛ぶ絨毯に乗っているアイギスを見かけた。


 ……


 鳥としての在り方(アイデンティティー)、大丈夫なのかな?


 わしはどうしようかなと少し悩んだあと、アイギスと一緒に絨毯に乗っていた。


 いや、べつにいいけどな。





●宣伝

「異世界のんびり農家」のコミックス七巻が、三月九日発売予定です。

よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 壊れたルーかわい〜
[一言] >ルーの様子がおかしい。 >まあ、動かない絨毯に向けて全力で褒め続けているわけだからな。 始祖さんに記憶封印の魔法を教えて貰えば、毎日新鮮な気分で褒められるんじゃないかな? 明日の自分に言伝…
[一言] 村長「星空を見るんだ。 月がきれい。どうだ?」 ルー「あなたったら」
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