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空飛ぶ絨毯の作り方とプールサイド


 空飛ぶ絨毯フライング・カーペットの作り方が書かれた魔導書がある。


 だから、空飛ぶ絨毯を作ってみようとルーが言った。


 俺も興味があったので、協力する。


 用意するのは適当なサイズの絨毯じゅうたん


 このとき、注意しなければいけないのは絨毯が新品でないといけないこと。


 できたてである必要はないが、絨毯として使われてはいないことが大事らしい。


 なぜだろうか?


 疑問に思うが、とりあえずは魔導書通りにやってみる。


 次に、核となる魔石を糸などで編み込む。


 魔石は小さくてもいいけど、総量はそれなりにいるらしい。


 森で狩った猪の魔石なら一つで大丈夫と。


 なるほど。


 編み込んだ部分がぼっこりと不格好だが、気にしない。


 それで次の工程は、声をかけることと。


 ……


 声をかける?


 どういうことかなと魔導書を読み込む。


 ……


 えーっと、とりあえず絨毯をめるそうだ。


「こんな綺麗な絨毯、みたことない!」


 褒める人数は多ければ多いほど、声は大きければ大きいほどいいらしい。


「素敵な絨毯!」


「私もこんな絨毯、欲しいわ!」


「織り目がいいね!」


「触り心地も最高!」


「いける! いけるよ!」


「これ、やれちゃうんじゃないかな!」


 意味がわからなくても、褒めることが大事。


 これを十日ぐらい続けたら、絨毯のはしを確認してください。


 ほら、ぴくぴくと動いていませんか?


 そうなればこっちのもの、このまま褒め続けて相手を乗せてあげてください。


 絨毯が飛びます。


 ……


 ほんとうか?


 この手順でいいのか?


 一応、先を読む。


 絨毯が飛んだからと、そこで安心してはいけません。


 これからが一番、大事な工程です。


 そう、しつけです。


 褒められて生まれた絨毯は、当然ながら褒められ慣れているので、注意されたり、命令されたりするのを嫌います。


 個体差はありますが、作者はこれまで四十近くの魔法の空飛ぶ絨毯を生み出しましたが、ほぼ間違いないです。


 命令されるのが嫌いな絨毯を、なんとか使役するのが腕の見せ所です。


 頑張りましょう。


 なるほど、魔導書の大半を占めている育成日記部分が、この躾に関してなのか。


 躾に失敗すると、飛んでいるときに乗せている物を落としたり、勝手に飛んで行ったりするらしい。


 ……


 箱を運んでいた空飛ぶ絨毯って、持ち主が自分で作った空飛ぶ絨毯なのではないだろうか?


 そして、躾に失敗して落としてしまったとか?


 今度、箱たちに聞いてみよう。


 とりあえず、このやり方で大丈夫みたいだから、ルーは褒め続けて。


 あと、協力してくれる人は通りかかるたびに褒めてもらえれば。


 できる範囲でいいから。


 協力、よろしく。


 俺は魔導書を読み込んで、躾部分に関してまとめておくよ。


 うん、褒めるのは任せた。


 いや、だってな。


 冷静に見ると、壁にかけられた絨毯に向かって全力で褒めている大人の姿。


 ちょっと参加しにくい。


 あと、褒めるなら、子供たちを褒めたい。



 ちなみにだが、インテリジェンス・ボックスやインテリジェンス・ソードも似た感じの作り方だそうだ。


 ただ、褒めると飛ぶので、目的に応じて変化させないといけないらしい。


 インテリジェンス・ボックスの場合は……物語を聞かせるのか。


 でも、戦闘物はいまいちで、恋愛物がおすすめと。


 へー。





 夏の暑い日が続くが、プールの近くでは元気な声が聞こえる。


 オルトロスのオルがプールサイドで休んでいた。


 オルは普段とは違い、帽子と上半身だけだが服を着ている。


 服じゃなく、水着か。


 ザブトンに特別に作ってもらったのか。


 よかったな。


 なかなか似合っているぞ。


 それで、水着を着たから珍しく一頭ひとりでここにいるのか?


 違う?


 グーロンデも一緒?


 オルの視線は、プールサイドに併設された着替え用の小屋に向けられている。


 なるほど、グーロンデは水着に着替え中か。


 ふむ。


 グーロンデが来るのを待ってもいいが、いまはギラルが不在だ。


 旦那不在の人妻の水着姿を褒めるわけにもいかない。


 褒めるぐらいいいじゃないかと軽く考えるのは危険だ。


 いや、ほかの者がどう考えるかは自由だ。


 ただ、俺は危険だと考える。


 しかし、水着姿を見てもなにも言わないのも失礼。


 ほかに誰かいればなんとかなるのだが、オルでは駄目だ。


 つまり、この場からすぐに立ち去るのが正解。


 オルに挨拶して、俺は子供たちが遊んでいる場所を目指した。



 子供たちを海岸に連れて行きたかったのだが、道中がいろいろと問題なので実現できていない。


 ビーゼルか始祖さんの手が空いていればよかったのだけどな。


 まあ、ほぼ半日拘束(こうそく)することになるから、無理は言えない。


 とくに始祖さんには、少し前に撮影機や再生機を回収するためにヴェルサの家に往復してもらっている。


 遠慮しなければ。



 プールで遊ぶ子供たちを見守っているリザードマンと鬼人族メイドたちに挨拶。


 子供たちにも挨拶。


 ん?


 どうした?


 子供の一人が、プールサイドにある船をみている。


 船で遊びたいのか?


 かまわないが、リザードマンたちの言うことをちゃんと聞くんだぞ。


 子供たちが乗る船は、山エルフたちの力作だ。


 子供の一人乗りだが、足元のペダルを回転させることで、外輪が回って前進。


 手元のハンドルでかじの操作。


 よくできている。


 大人用の船の発注をしたいぐらいだ。


 ただ、大人が乗るとなると船の規模が大きくなるからな。


 それに、山エルフたちはいま、四千五十一番の箱と一緒になって箱専用の台車を作ることに夢中だ。


 台車にゴーレムの要素を足せばもう少し簡単にできそうだが……


 まあ、隙を見て伝えよう。



「村長はプールには入らないのですか?」


 ああ、様子を見にきただけだ。


 あと、子供たちの食事の相談。


「食事の準備はしていますので、プール組(こちら)は大丈夫です」


 そうか。


 了解。


 っと、水着に着替えたグーロンデとオルがやってきた。


 いまは大丈夫。


 近くにリザードマンたちや鬼人族メイドたちがいるから。


 そして、グーロンデの水着姿は似合っている。


 綺麗だ。


 だが、言わない。


 俺は当たりさわりのない挨拶だけ。


 あとは近くにいるリザードマンたちや鬼人族メイドたちに任せる。


「グーロンデさまの水着、似合ってますね。

 素敵です」


 鬼人族メイドたちの言葉、俺はうなづく。


 これが精いっぱい。



 気を使いすぎだろうか?


 トラブルになるより、マシだと思う。


 ん?


 リザードマンの一人が俺の肩を叩く。


 どうした?


「村長。

 ヒイチロウさまとグラルさま、それにライメイレンさまが来られました」


 いつものメンバーだが……


 ライメイレンは若い姿をしている。


 そして、水着だ。


 えーっと……


 ヒイチロウに集中しよう。





学者A「褒めれば飛ぶって発見した人、天才じゃね?」

学者B「飛ぶとわかっていない状態で絨毯を褒め続けたわけですから、変な人という評価のほうが強いのでは?」



村人A「グーロンデさまとライメイレンさまって、年齢的に同世代じゃないの?」

村人B「グーロンデさまのほうが少し若いぐらいらしいわ。ハクレンさまよりは上だけどね」



ドース「若い姿で水着を着るって……お前」

ライメイレン(無言で殴る)



ギラル「なぜ俺には見せてくれんのだぁ!」

グーロンデ(無言で殴る)

オル(プールで疲れてダウン)


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― 新着の感想 ―
ブタもおだてりゃ木に登る、つまり絨毯も褒めちぎれば空だって翔ぶ!! とかハイになったやつがいたのかもな
[一言] >学者A「褒めれば飛ぶって発見した人、天才じゃね?」 魔力漏洩で狂ったいくつかの世界の重要な法則のひとつかな…?
[一言] 水晶の再生機複数で自動で褒め言葉を与えてみるとか。
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