フラウたちの帰還
フラウ ビーゼルの娘。大樹の村の文官娘衆の取りまとめ役。
ユーリ 魔王の娘。
メットーラ 混代竜族。アルフレートたちの世話役として魔王国の学園に。
アサ 太陽城のマーキュリー種。アルフレートたちの世話役として魔王国の学園に。
アース 土人形。魔法の土で筋肉増強&人間姿を獲得。アルフレートたちの世話役として魔王国の学園に。
ランダン 魔王国四天王の一人。内政担当。
クロがダイエットを思い出した。
昨晩、フラシアがクロのお腹を撫でていたからな。
朝からやる気だ。
しかも、いろいろと反省したのか俺の付き添いを断っている。
本気度合いが見て取れる。
頑張れ。
しかし、ダイエットが成功するとフラシアが寄って来なくなると思うけど、いいのだろうか?
いや、ダイエットの決心を揺るがすようなことは言うまい。
ただ、応援するだけだ。
だからクロの子供たちよ、俺の後ろで賭けを行わないように。
しかも、ダイエット「できる」「できない」ではなく、何日続くかを賭けるなんて失礼だぞ。
クロはやるときはやる犬……違った。
クロはやるときはやるインフェルノウルフだ。
……
一日で終わるのが一番人気なのは悲しいなぁ。
山エルフたちが四千五十一番の箱と交流し、箱専用のテーブルを作り上げた。
蓋が開くと、中に収納されているテーブルが箱の前にせり出し、蓋を閉じればテーブルも自動的に収納される仕組みだ。
これまで、会話するために箱の中をのぞく必要があったが、このテーブルのおかげでのぞく必要がなくなった。
また、箱のサイズから物の受け渡しに若干の難点があったが、それも大きく改善。
テーブルを箱の中に入れるため、収納量が少し減ってしまう欠点はあるが、素晴らしい仕掛けだと絶賛された。
そして、鬼人族メイドの要望で、厨房にいる四つの箱に最優先で支給。
便利になるのはいいことだ。
後日、動くテーブルに置かれた薪の削りカスで作られた文字が崩れやすいことが判明。
薪の削りカスから、綺麗な小石に変更されることになった。
魔王国の王都に行っていたフラウたちが戻ってきた。
かなりリフレッシュできたのか、みんな笑顔だ。
ユーリがいないのは……
ああ、仕事でもう少し王都に滞在するのね。
大変だな。
王都の祭りはどうだった?
貴族学園が参加することで、派手になったと。
なるほど。
一度、俺も見物に行くべきかな。
ウルザやアルフレートたちはどうだった?
問題だらけ?
なにかやらかしたのか?
違う?
派閥管理が甘くて問題だらけと。
……
派閥管理?
ウルザたちは学園で最大派閥を形成していて、その派閥の統制はほぼ完璧だけど、敵対派閥や中立派閥に対する扱いがなってなかった?
敵対派閥が相手でも、窓口ぐらいは作っておかないと情報が完全に途絶すると。
なるほど。
たしかにそうだな。
敵であるからこそ、窓口を作っておく必要がある。
そうでなければ、なにかあったときに即戦争になる。
誤解や行き違いであっても、誰もそれを指摘できないと。
「そのあたり、村にいるときに教えたつもりなのですが……どうやらティゼル任せになっていたようで」
ウルザとアルフレートは、そのあたりを忘れ、自派閥の強化に勤しんでいたのか。
教えられたのにやっていないのは問題だが、まだまだ子供なのだから仕方がないところだろう。
学園にいるあいだに覚えてもらえればいいんじゃないか?
甘いかな?
「甘いです。
が、敵対派閥や中立派閥のほうも、同じ状態でしたからね。
ユーリさま主導で、交流会をやりました。
一応の窓口はできたでしょう。
あとはその維持ですが……メットーラさんに協力をお願いしておきました」
メットーラに?
アサやアースではなく?
「メットーラさんしかいませんでしたから」
え?
どこに行ったんだ?
あと、そういえばティゼルはどうした?
話から学園にいないようだが?
「ティゼルは王都の商会に手を出して遊んでました。
こっちは、自勢力はもとより敵対勢力も中立勢力も扱いは完璧でしたね。
私より腕がいいです」
……
「アサさんとアースさんは、そのティゼルの手伝いで駆り出されています。
厳密には、アサさんはティゼルの執事を。
アースさんは、喫茶店をやりながらの情報収集部隊の管理ですね。
ランダンさまの管理する情報収集部隊とも協調関係にあるそうですよ」
へ、へー。
元気でやっているようでなにより。
そういうことにしておこう。
フラウたちに留守にしていたときの話をする。
一番大きいのは箱たちの存在だろう。
それなりに驚いているが、反応が薄いのは空飛ぶ絨毯を知っているからかな?
たしか、ビーゼルが使っていただろう。
魔王国では、意思を持つ道具がほかにもあるのかもしれない。
物語が収められているたくさんの水晶には喜んでいた。
ただ、一つを再生してみたが、使われている言語が完全に昔のものらしく、俺は楽しめたが、フラウたちには理解できなかった。
物語を楽しむためには、翻訳作業と横で声をあてる作業が必要そうだ。
登場人物の少ない物語を探しておこう。
夜。
天体望遠鏡を使った観測会にフラウたちは参加した。
ほぼ毎日やっているので参加人数は減ってきているが、ずっと参加している子供もいる。
将来は天文学者かな?
フラウたちは天体望遠鏡を覗き、感嘆の声をあげていたが……
「これ、星よりも遠方を観ることに使ったほうが便利なのでは?」
「そうですよね。
軍事施設に設置すれば敵の動きを察知できますし」
「構造は簡単そうですし、レンズさえなんとかできれば量産できるのではないでしょうか?」
こらこら、星を観ながら変な話をしない。
っと、フラシアも観測会に参加しているが、天体望遠鏡を覗いていない。
もう飽きたのかな?
星空は自分の目で見たほうが綺麗?
……
俺よりも大人だな。
観測会を終えて屋敷に戻ると、クロが酒を飲んで寝てた。
運動で疲れ、風呂に入ってさっぱりしたところに酒を出されたから我慢できずに飲んだって感じだな。
そういうところだぞ。
あ、フラシアがお腹を撫でに行った。
あー……
うん、明日も頑張るように。
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