箱の就職活動
あけまして、おめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
村にやってきた十五個の箱。
基本的な性能は次の通り。
・意思がある。
箱は独立した意思を持っている。
そして、これまでの会話から、かなり賢いと思われる。
・物を収納できる。
箱だから当然。
収納できるのは箱の大きさまで。
短辺が一メートル、長辺が一メートル六十ぐらいかな?
高さは蓋を含めて八十センチぐらい。
箱のサイズより大きい物を収めるとかはできないそうだ。
・収納した物を保存できる。
極端に劣化しなくなるそうだ。
真空保存みたいな感じかな。
なので生き物を入れるのは駄目というか、ある程度の大きさの生き物を入れると保存機能が失われ、ただの箱と同じになるそうだ。
子供や動物が間違って入っても安全なのは嬉しい。
・箱の中で収納した物を並べ替えができる。
蓋が閉じている必要があるが、箱の中の物を自在に並べ替えることができる。
その際、物理的に移動が不可能でもなんとかなっているので、魔法はすごいなと改めて思う。
あ、箱がすごいのね。
すまなかった。
・箱の蓋の自動開閉。
鍵の開け閉めを含め、箱の意思で蓋を開閉できる。
蓋に鈴をつけると、箱が呼んでいるのがわかりやすくていいかもしれない。
こんな感じだろうか。
あとは個々に得意、不得意、好きな作業、嫌いな作業がある感じ。
なので、同じ箱だからと同じ仕事を振るのはよろしくない。
できるだけ箱の要望を聞く形が好ましいだろう。
というわけで、箱を手に入れた次の日。
箱による村の見学が行われた。
箱に希望を聞いても、どんな働き口があるかわからなかったからだ。
ただ、サイズがそれなりにあるので、体格のいいミノタウロス族や巨人族に協力してもらい、移動。
俺が全部の箱に同行できないため、箱たちには「はい」「いいえ」などの簡単な単語を書いた板の束を持たせた。
これで意思疎通ができるだろう。
問題があれば、適時改善していこう。
……
ん?
山エルフたちが集まってなにをやっているんだ?
大きな車輪がついた板……台車だな?
箱たち専用の台車?
それに箱を乗せ、蓋にこの板をセットする?
箱が蓋を開閉する力を使い、前進する仕組みか。
よくできている。
そして、それなりの速度だ。
すごいぞ。
それで、方向転換はどうやってするんだ?
研究中と。
ブレーキは?
それも研究中か。
まあ、蓋を開閉するアクションしかできないからな。
方向転換やブレーキはむずかしいか。
なるほどなるほど。
最後に、壁にぶつかっている箱に対して、言うことは?
「前面に緩衝材を装着すべきでした」
素直に謝るように。
三日後。
箱たちの村見学は、単語の追加が少しあった程度で問題なく終わった。
見学に三日もかかったのは、箱たちが思った以上に好奇心が強かったからだ。
そして、これから就職面接を行う予定だったのだが……
すでに働く場所を決めた箱がでていた。
まず、十七番の箱。
翻訳仕事をメインにしたいとのことで、文官娘衆のところに行くことが決まった。
次に、三番、四番、五番、二十番の箱。
この四つの箱たちは、厨房で働くことになった。
厨房を管理する鬼人族メイドたちは当初、箱たちを置くことに難色を示したが、箱たちが自分たちの能力をアピールすると態度を改めた。
“小麦粉などの粉類を、ダマを残さずに完璧に篩うことができます”
“攪拌作業も完璧にできます”
“調理手順に合わせ、調理器具や食材を渡すことができます”
“箱に収められた料理の保温が可能です”
鬼人族メイドたちは、この四つの箱はすでに厨房仲間として迎え入れている。
もう手放せないそうだ。
十番の箱は、ルーの説得に応じてルーの研究室に置かれることになった。
魔道具などの管理をさせるのかなと思ったら、研究の手伝いをやってもらうそうだ。
ティアやフローラも十番の箱に色々と頼む?
かまわないが、あまり無茶を言わないようにな。
二十一番の箱は、二村に行くことになった。
ミノタウロス族に運んでもらっている最中に二村の話を聞き、そこで物を収めて暮らしていきたいと言ってた。
同じように、巨人族に運んでもらっていた二十二番の箱は、巨人族の話を聞いて、巨人族のいる北のダンジョンに行くことを希望。
巨人族たちはすごく俺に遠慮していたが、許可を出した。
箱の希望通りにするのが大事。
十二番の箱は、大樹のダンジョン内での設置を希望。
モヤシやキノコ類を保管したいそうだ。
変わっているなと思うが、なにを収納するかは箱にとって大事だそうだ。
問題ないので許可。
こんな感じ。
まだ決まっていないのは、一番、二番、七番、十五番、十八番、四千五十一番の六つ。
あ、十八番がヴェルサの元に行くことを決めたようだ。
五村での執筆活動に興味があると?
別に構わないが……あー、えーっと……ヴェルサの書くのはあれだぞ?
理解しているならかまわない。
でもって、四千五十一番。
お前は山エルフのところか。
二番の箱が壁にぶつかったところを見てなかったのか?
見てなお、行きたいと?
山エルフたちが受け入れているから、よしとしよう。
四千五十一番は山エルフたちに任せた。
あとは一番、二番、七番、十五番。
一応、お前たちを欲しいという希望はでている。
一村、三村、それとラミア族のいる南のダンジョンだ。
一村と三村は、二村に二十一番の箱が行くから、それに対抗してというわけではないだろうけど……
二番の箱、七番の箱。
行ってくれるか?
よし、頼んだぞ。
では二番の箱が一村。
七番の箱が三村だ。
そして、十五番の箱。
お前は南のダンジョンに行くと?
わかった。
乱暴に扱わないように、言っておくからな。
元気でやるんだぞ。
最後に残った一番の箱。
わかっている。
お前は屋敷のホールに置かせてもらおう。
当面は子供たちの玩具の収納を任せるが、なにか希望があったら言うように。
箱の設置場所。
1 大樹の村のホール。
2 一村。
3 大樹の村の厨房。
4 大樹の村の厨房。
5 大樹の村の厨房。
7 三村。
10 大樹の村、ルーの管理下。
12 大樹のダンジョン。
15 南のダンジョン。
17 大樹の村、文官娘衆の管理下。
18 五村、ヴェルサの管理下。
20 大樹の村の厨房。
21 二村。
22 北のダンジョン。
4051 大樹の村、山エルフの管理下。
更新、遅くなってすみません。
今年は更新量を増やすつもりで、頑張ります。
よろしくお願いします。
あと、書籍の九巻、購入してくれた方々、ありがとうございます。