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箱の中 後編


 では、次の箱を開けよう。


 十八番。


 この箱の中には、大小いくつかの鉱物が延べ棒の形で入っていた。


 種類順、サイズ順に綺麗に並んでいるのは、箱が並べたのか?


 わかりやすくていいぞ。


 そして、こんな風に延べ棒が並んでいるだけでわくわくする。


 俺はこの鉱物がなんなのかは知らないけど。


 これらはルー、ティア、ガットに任せるべきだろう。


 砂の入った瓶の話し合いが終わってからでいいので、あとでこっちも確認してほしいと伝言。



 次は二十番の箱。


 この中は水晶。


 同じ形にカットされた水晶がたくさん詰め込まれていた。


 こっちも綺麗に並べられているな。


 破損した水晶はなさそうだ。


 一つ一つは手に持てるぐらいだが……


 あれ?


 この水晶、どこかで見たことがあるな。


 どこだったかな……


 あれだ!


 ライメイレンからイレに渡された、撮影機で撮影した映像を記録するための水晶!


 その水晶に似ている。


“その通り、これらは映像を記録するための水晶です”


 おお、そうか。


 全部そうなのか?


“はい、そうです”


 いくつあるんだ?


“六百二十七個、あります”


 六百二十七個。


 一つしかない水晶でも撮影隊で大活躍している。


 これだけあれば、さらに活躍が期待できるのではないだろうか。


 俺がそう思っていると、様子を見にきたドースとライメイレンが小声で会話。


 そしてドースがドラゴンの姿になって飛び出したと思うと、四村よんのむらからベルを連れてきた。


 すごい速さだな。


 そして、ベルは二十番の箱の中に収められている水晶を確認。


 ドースたちにアイコンタクトをしてから、俺にこう言った。


「残念ですが、その……えっと……イレが使っている撮影機とは形式が違います」


 ……


 つまり?


「この水晶の形式にあった撮影機を用意しなければ、使えません」


 なんてこった。


 いや、待て。


 慌てるな。


 俺はまだ中を確認していない箱たちを見る。


 撮影機を収めている箱はいるか?


 俺がそう聞くと、二十一番の箱のふたがあいた。


“ここに撮影機はありますが……えっと、その……”


 しかし、言いにくそうだ。


 まさか、壊れているのか?


“いえ、壊れてはいないと思います。

 その、私の中に入っている撮影機も形式が違うかと”


 ベルが確認すると、イレが持っている水晶とも、二十番の箱にある水晶とも形式が違うと教えてくれた。


 がっかり。


 しかし、がっかりするのは早かった。


“この撮影機に対応した水晶も収めております”


 おおっ!


 たしかに微妙にまた形の違う水晶がある。


“五十三個、あります”


 こっちは撮影機とセットか。


 ありがたい。


 これらをイレに渡せば有用に使ってもらえるだろう。


 そう思ったら、ドースとライメイレンからストップがかかった。


「あー、すまないが内容を確認させてほしい」


 内容?


 ……


 そうか、記録できる水晶だから、すでに記録されている可能性があるのか。


「大丈夫だとは思うが、いまの文明には毒である内容が記録されている可能性もある。

 少し預からせてもらいたい」


 うーん、そう言われると仕方がない。


 俺も危険物は持ちたくない。


 ああ、対価はいらない。


 チェックをしっかりと頼む。


 ん?


 いつのまにか現れたドライムの執事、グッチが水晶を確認していた。


 グッチがチェックするのね。


 グッチはまず二十一番の水晶を確認。


 ものすごい速さでチェックした。


「これらの水晶には、物語が収められています。

 内容は……コメディ寄りですが、冒険物、恋愛物が大半です。

 いまでもそれなりに楽しめるかと」


 つまり?


「こちらの五十三個の水晶は、問題ありません」


 よし!


 あ、でも、記録されているということは、イレに使ってもらうのは難しいかな?


「すべての水晶が限界まで記録されているわけではありませんから、追加で記録することはできますよ。

 それに、撮影機がありますから記録の移動もできますし」


 それはよかった。


 グッチは続いて二十番の水晶を確認。


 ものすごい速さでチェックするのかと思ったら、軽く見て終わった。


「あの、二十番の箱にある水晶なのですが……」


 グッチが少し言いにくそうにしている。


 駄目なのだろうか?


「駄目ではないのですが、その……ええっと……ごほん」


 なんだろう?


「全て、動物の生態物です」


 ……


 動物の生態物?


 動物学者の資料だったのだろうか?


 俺がそう理解すると、グッチが小声で教えてくれた。


雌雄しゆうのある動物の生殖行為に特化した映像記録です」


 ……


 雌雄のある動物って例えば?


「人間とかエルフとか」


 そっかー。


 犬とか猫とかにわとりじゃないんだな。


「はい」


 これ、全部?


「はい、全部です」


 ……


 六百二十七個、全部?


「六百二十七個、全部です。

 必要でしたら細かい内容を説明しますよ」


 いや、不要。


 女性陣に聞かれないようにしてくれた心遣い。


 見事!


 二十番の箱には悪いが、危険物として処分する方向でお願いした。


「この形式は愛好家マニアが多く、撮影機が現存している可能性があります。

 水晶の映像記録だけ消去しておきます」


 できるの?


「魔法で記録している物ですから、強い魔力を当てれば消えます。

 ただ、こういった系の映像には妙に強固な保護プロテクトがされているので、少し時間をいただければ助かります」


 なるほど。


 任せた。


 最悪、砕いてもかまわない。


「ははっ」


 グッチは俺に丁寧な挨拶をして、ドースとライメイレンのところに向かった。


 説明は任せたぞ。


 そしてベル。


 君も内容を知っていたようだが……わかっているね。


 黙っているように。



 さて、気を取り直して次の箱。


 二十二番の箱をオープン。


 ……


 から


 知っていたけど、ちょっとがっかり。


 一応、輸送時には物があったのだが、落下時に驚いて蓋を開けてしまい、中身をぶちまけたのだそうだ。


 いいんだ。


 落ち込まなくて。


 長い時間、反省していたんだろ?


 なら気にすることはない。


 これからの活躍に期待しているからな。



 さて、最後。


 四千五十一番の箱。


 この中には……


 魔道具がいっぱい。


 何に使うのか想像もつかない物が多い。


 これにもドースやライメイレンのチェックが入った。


 まあ、問題がある物がそう簡単にあるとは思えないが……


 あれ?


 ドースとライメイレン、青い顔してない?


 グッチを呼んで相談?


 そういったのが一つ、二つ、三つ……あ、結構な数あったみたいだな。


 ああ、かまわない。


 封印で。


 対価とかいらないから。


 ルーたちが見る前に隠して。


 うん、よろしく。


 残ったのは問題なしだな?


 あれ?


 鍵の束?


 これはなんの鍵だ?


“俺たちの鍵だ”


 なるほど、数も十五本あるな。


 ……


 じゃあ、お前には鍵がかかっていなかったのか?


 危ない物が入っていたようだが?


“当時はありふれた物だ”


 そうなのか。


 まあ、冷蔵庫や掃除機みたいな生活家電みたいな物だったのかな?




 なんにせよ、これで箱の中身のチェックは終了。


 魔法研究者か技術者の引っ越しの最中という内容だったな。


 そのあたりは、あとで詳しく聞くとして……


 一番の箱の内容にひっかかる。


 どうしてあの大きさの箱で、魔導書が一冊だけなんだ?


 魔導書は大きかったが、ほかの物が入らないこともない。


 引っ越しなら、できるだけ多く詰め込むだろう。


 つまり……


 一番も、二十二番同様に落下するときに中身をぶちまけたとか?


“そんなことはしておりません。

 ですが、理由はちゃんとあります”


 ほう。


“魔導書と一緒に、人形が入っていました”


 人形?


“はい、人形です。

 詳しくは知りませんが、魔法で作られた人形です”


 魔法で作られた人形が入っていたと。


 それがないのは?


“勝手に出て行きましたから”


 ……


“あのとき、私たちを回収してほしいと願ったのに、あの人形は無視していきましたからね。

 許せません!”


 いや、まあ、会話していなかったら無視されるだろうけど……


 人形が出て行ったのは落下してすぐなのか?


“すみません。

 そのあたりの時間経過はたしかなことは……

 全開ではありませんが、まだ蓋を開けることができた時期としか……”


 となると、かなり前か。


 人形がうろついているなら、回収してあげたいと思ったが無理そうだな。








 余談その一。


「二千年ぐらい前、無差別に暴れる人形の事件があったとか父から聞かされたような……」


 そうドースが呟いていた。




 余談その二。


「動物の生殖行為に特化した映像記録ねー」


 ヴェルサがグッチの横にいた。


「嘘は言っていませんよ」


「嘘じゃないのは知っているのよ。

 ただ、登場人物に言及したくてー」


「……口止め料、いくらほしいか言ってください」


「データを消す前にちょっとチェックさせてもらえないかな?

 資料として」


「……くっ、これは私のものではありませんから、その条件は無理です」


「あら、そうなの?」


「で、ですが、消す作業を手伝っていただけるなら、作業中に目に入ってしまうこともあるのではないでしょうか」


「ふふふ……いいでしょう」


「ですが、これとこれとこれは駄目ですからね」


「大丈夫よ。

 そのシリーズは私も持っているから」


「……」


「持ってなかったら、登場人物に言及できないでしょ?」


「……ヴェルサさま。

 少々、交渉したい事があるのですが、お付き合い願えないでしょうか。

 いえ、時間は取らせません」


「わ、わかったから魔力を解放しないで。

 怖いから」





更新が遅くなってすみません。

年末のバタバタが原因です。


去年の末から始めた一人暮らしですが、本格的な年末は今回が初めて。

大晦日、正月もあまり変わらないだろうと思っていたけど、予想外に関連した作業がありました。




●箱の中身、まとめ。

1    空飛ぶ絨毯フライング・カーペットの作り方が書かれた魔導書

2    枯れた草×いっぱい

3    錬金術の道具×いっぱい

4    布類×いっぱい

5    瓶に入れられた砂×それなりの数

7    折りたたみ家具×それなりの数

10   天体望遠鏡

12   魔法使いの杖×三十本

15   生活用品や衣装

17   本(読み物)×それなりの数


18   鉱物の延べ棒×それなりの数

20   撮影機で撮影した映像を記録するための水晶(タイプB)×627

21   撮影機(タイプC)、撮影機で撮影した映像を記録するための水晶(タイプC)×53

22   二千五百年以上前の空気。

4051 魔道具(当時の生活家電)×いっぱい ほかの箱の鍵。



タイプA イレが持ってる撮影機の形式。

タイプB 水晶だけ発見。

タイプC 撮影機と映像が収められた水晶を発見。


タイプA、タイプB、タイプCは、ゲーム機のスー〇ァミ、サ〇ーン、プ〇ステぐらい違うと思ってください。



●宣伝

2020年12月28日。

書籍版「異世界のんびり農家」九巻が発売します。

年末の忙しい時期ですが、よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
サ〇ーン、プ〇ステなら、エミュレータがあれば…(^_^;)
[良い点] >22   二千五百年以上前の空気。 やさしい [気になる点] ドラゴンが青ざめる生活家電ってなんやねんw
[一言] ドース達が隠した魔道具を説明しないんだったら設定として要らんやん。 何の為に隠すかわからんのにその下りいらんやろ。 ちょっと考えた方がええで。
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