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散歩と宝箱


 俺はクロとユキを従え、村の東側にある森の中を進んでいた。


 目的は特にない。


 ただの散歩。


 そういうことになっている。



 昨日の夕方、俺の部屋にフラシアがやってきた。


 珍しいが、今はフラウが王都に出かけていて、いないからな。


 ビーゼルもいなければ、俺のところにやってくる。


 もちろん、世話役のホリーも一緒だ。


 そんなフラシアの最近のお気に入りは、クロをでること。


 よほどお気に入りなようだ。


 だから、俺はつい聞いてしまった。


 クロのお腹を撫でるのがお気に入りなのかと。


 フラシアは少し照れながら、「たくましいから」と返事をしてくれた。


 そうか、たくましいか。


 まあ、クロのお腹はたくましくはあるな。


 そのときはそう笑って流したのだが、夕食後にホリーから衝撃の事実を聞かされた。


 フラシアの「たくましい」は「太っている」の意味であると。


 どうしてそんな回りくどいことをと思ったら、相手を傷つけない気遣いだそうだ。


 なるほど。


 クロには聞かせられない。


 そう思ったのだが、少し離れた場所にいるクロと目があった。


 ……


 聞こえた?


 なんのことかな?


 クロはそう首をかしげた。


 そうか。


 よかった。


 ……あ、駄目だ。


 クロの歩き方が乱れている。


 聞かれていたようだ。



 そして今朝。


 クロが散歩に俺を誘ってきた。


 珍しい。


 だが、深くは追及しない。


 余計なことも言わない。


 しかし、心の中で思う。


 大丈夫だ、そんなに太っていないから。


 いや、まあ、ほんの少しだけユキに比べてお腹や太ももが……とは思っていたが。


 なんでもない。


 喜んで散歩に行こう。




 そうして村の東側の森の中を歩き始めたのだが……


 魔物や魔獣と遭遇しないな。


 東側は、あまり通らないことに加えて、狩場からも離れているから、それなりにクロやユキの運動になると思ったから選んだのだが……


 俺がただひたすら【万能農具】で木々ややぶを耕しているだけになってしまっている。


 いつもなら、これぐらいのタイミングでウサギやイノシシが襲ってきそうなんだけどな。


 魔物や魔獣と遭遇しない理由が判明。


 俺たちを中心に、クロイチとアリス、クロニとイリス、ウノとクロサン、クロヨンとエリスが率いる集団がフォーメーションを組んで護衛してくれていた。


 それぞれ、百メートルぐらい離れているから気づけなかった。


 気づいたのは、俺たちの進路を先行していたクロイチとアリスの集団が、倒した獲物を隠し切れなかったから。


 さすがに全て悲鳴を上げさせずに倒すのは無理だろう。


 クロとユキはクロイチたちがいることに驚いていなかったから、最初から知っていたのだろう。


 今回のクロの目的なら、護衛を断わりそうだけどな。


 え?


 護衛じゃない?


 偶然、俺たちの前を進んでいるだけと。


 ……


 まあ、護衛は不要と言ってもクロイチたちは素直に帰ったりはしないか。


 仕方がない。


 クロとユキの運動は散歩だけにしておこう。


 普段、通らない森の中を歩くのも悪くない。


 新しい道もできるしな。


 クロイチたちも、もう少し近くに来ていいぞ。


 ただ、俺の前には出ないように。


【万能農具】でお前たちを耕してしまう事故は避けたいからな。




 適当に森の中をまっすぐ歩き、適当なところで引き返そうと思っていたら、箱を発見した。


 人間が入れそうなぐらい大きい箱。


 金属製だな。


 かなり古いものだろう。


 その証拠に周囲の木々の根に絡まれ、ほとんど埋没している。


 偶然、近くの根を【万能農具】で耕さなければ、発見できなかった。


 箱が不自然なぐらいに汚れていないのは、魔法かなにかの効果かな?


 どうしよう。


 昔の俺なら悩まずに箱を取り出し、中を確認しているだろう。


 だが、いまの俺は違う。


 なぜなら、ルーやティアから見知らぬ箱を勝手に開けてはいけないと、これでもかと注意されているからだ。


 理由は、罠が仕掛けられている可能性があるから。


 なので勝手に開けるのは厳禁。


 できれば触ることも避けたほうがいいらしい。


 でも、気になるので箱に絡まっている根は【万能農具】で耕した。


 開けてないし、触ってないからセーフ。



 しかし、よく見ればただの箱じゃないな。


 うっすらと装飾が施されている。


 また、形も四角ではない。


 上蓋うわぶたがカマボコ型。


 つまり、宝箱と言われてイメージする形。


 鍵穴もあるしな。


 うーん、中身が気になる。


 箱を耕せば、中身を確認できるかもしれないけど、罠の種類によっては発動してしまう可能性がある。


 例えば毒の罠。


 箱の中に毒が充満している場合、箱を耕した瞬間に周囲に毒が拡散されてしまう。


 例えば転移の罠。


 箱が空いたと判断した瞬間に魔法が発動し、周囲を巻き込んでどこかに転移させられてしまう。


 余計なことはしないでおくのがベストだろう。


 ……


 クロよ。


 俺の説明を聞いていなかったのか?


 中が気になるのはわかるけど、タックルして箱を開けようとしないように。


 ユキ、魔法でなにをする気だ?


 開けられないなら、中身ごと燃やしてしまえ?


 ワイルドだな。


 まあ、もともと埋まっていたのだから、発見しなかったことにするのも手だが……


 ここまで見てしまったら、燃やしてしまうのはもったいない。


 村に連絡して、この箱を開けられる者を連れて……


 あれ?


 開けられそうな人っているか?


 ルーやティアならできるか?


 二人だと、罠や魔法は調べることはできても、鍵を開けるのは無理なんじゃないかな?


 いや、まてまて。


 鍵穴はあるが、鍵がかかっているとは限らない。


 それに、こんな場所にある箱に罠などかけられているだろうか?


 ただの空き箱?


 その可能性はないだろうか?


 ……………………


 危ない!


 開けようとしていた。


 いかんいかん。


 空き箱かもしれないが、危険物の可能性もある。


 安全第一。


 とりあえず、謎の箱を発見したと村に連絡だ。






更新が遅れ気味で申し訳ない。


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異世界のんびり農家、書籍九巻。

2020年12月28日発売予定。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 逞しいお腹なら、ここにもあるよって言うと、村長に耕されそうだな(・_・;)
2022/05/17 02:53 みなづきじゅん
[気になる点] 農家には倉がある 倉には鍵がある つまり、鍵は農具である 【万能農具】は鍵に変化する
[気になる点] > 鍵穴はあるが、鍵がかかっているとは限らない。 > > それに、こんな場所にある箱に罠などかけられているだろうか? > > ただの空き箱? > > その可能性はないだろうか? み○っ…
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