魔獣退治とピクニック
朝。
俺はラスティと一緒に五村の近郊に出かけた。
魔獣退治が目的だ。
いや、魔獣退治見学かな。
俺は主力じゃないから。
主力は五村で集められた討伐隊。
魔獣の被害を受けている近隣に住むエルフたちも合流しており、気合が入っている。
討伐隊の指揮をするのはガルフ。
ガルフは五村でも人気だからな。
俺が指名しても、誰からも文句が出なかった。
逆に、どうして俺が指名しているのかわからない人がいた。
村長だからなんだが……
偉そうな服を着ていないことも理由の一つだろうが、根本は知名度不足。
もう少しだけ、頑張ろう。
魔獣退治はとくに見どころもなく終わった。
狙っている魔獣の群れは、討伐隊の包囲網に入ったのだが、なぜか途中で逆方向に逃げたらしい。
しかも全力疾走。
一番弱い者に突撃するという魔獣の習性から、逃げるということは考えていなかったのでガルフたちも驚いていた。
なぜ逃げ出したのだろうか?
魔獣の習性を聞いたとき、絶対に俺に向かって突進してくると思ってた。
横にラスティがいたからかな?
さすがにドラゴンの近くに突撃する勇気はなかったと考えるべきか……
違った。
俺の匂いが原因だった。
正確には俺の匂いではなく、俺についたクロたちの匂い。
出かけるまえにクロたちに連れていけと甘えられたからな。
そのときについた匂いに魔獣が怯えたそうだ。
うーん、これまでそういった匂いで魔物や魔獣が逃げたことはなかったので新鮮だ。
いや、俺が気づいていないだけで、逃げていた魔物や魔獣がいたのかもしれない。
……
時々、ルーやアンが俺に浄化の魔法を使うのは、その匂いを取るためだったのかな?
今度、タイミングを見計らって聞いてみよう。
うん、デリケートな問題だから。
心の準備をしてから。
そして、魔獣たちが怯えたのがクロたちの匂いではなく、ドラゴンの発する匂いの可能性に関しては考えないことにする。
ともかく、狙っていた魔獣の群れは逃げたが、近くにいたワイバーンたちが仕留めてくれたので、討伐は完了になった。
俺はラスティとピクニックをしただけだったな。
まあ、ラスティが喜んでくれたから、問題なし。
俺も気分転換になった。
ん?
魔獣がもっと頑張れば、この時間が長く続いた?
そうかもしれないが、近隣の住人のことを考えるとさっさと退治してやらないと……
ああ、だからワイバーンを睨んだのか。
ワイバーンたち、怯えて帰っちゃったぞ。
今度、謝罪と感謝を伝えておこう。
そして、ラスティ。
少しだけ遠回りして、帰ろうか。
夜。
村に戻ると、問題が発生していた。
原因は、俺とラスティが出かけた際の昼食。
俺の手作り弁当だった。
もちろん、これに対してほかの奥さんたちからクレームが出ると予想した俺は、同じ物を大量に作って昼食にどうぞと残しておいた。
残しておいたのだが、足りなかった。
なぜか?
そりゃ、村の住人全員で食べたら足りなくなるよな。
クロたちやザブトンたちも欲しがったようだし。
わかったわかった。
さすがに今日は無理だから、明日。
明日、みんなでピクニックにしよう。
そこで弁当だ。
翌日。
早朝から俺と鬼人族メイド総出で作った弁当を持ち、村の牧場エリアに向かった。
ピクニックをする場所に悩んだのだけど、全員が参加できる場所がここしかなかった。
普段の昼食とあまりかわらない気もするが、これも俺たちらしくていいと思う。
馬や牛たちに、少し場所を借りる挨拶。
適当に平らな場所にゴザを敷き、その上に白いシーツを敷いてくつろげる場所を確保。
……
もう少し離れてもいいと思うぞ。
思い思いの場所にシーツを敷こう。
牧場エリアだからな。
多少、離れても問題はない。
家族で参加している者は、家族でまとまるのがいいんじゃないかな。
弁当は人数分あるし。
もちろん、クロたちやザブトンたちの分もあるぞ。
誰も離れた場所に行かなかった。
まあ、いいか。
弁当を配る。
弁当の基本はバーガー。
ハムバーガー、ベーコンバーガー、卵バーガー、トマトバーガー、チキンバーガー、フィッシュバーガー、肉バーガー、カツバーガー、フルーツバーガー、などなど。
時々、俺は間違ってサンドと言ってしまうが、パンに切れ込みをいれて、そこに具を詰めた料理をバーガーと呼ぶことにしているので、これらはバーガー。
ああ、牛肉を使ったバーガーは、牛に見えないように食べるように。
弁当を作っているときは、まだ場所が決まっていなかったからな。
すまない。
飲み物は水筒に水かお茶。
酒はない。
ピクニックだからな。
ドノバン、個人で勝手に持ってきた分は、好きに飲んでいいぞ。
でもって、用意した弁当だけでは足りない可能性を考え、この場で調理する道具も持ってきている。
簡単で悪いが、バーベキューだ。
ただ、牧場エリアなので、海鮮がメイン。
エビ、ホタテ、サザエなどを楽しんでもらいたい。
もちろん、野菜も焼く。
ドライム、火の加減をみてくれ。
ギラルは具材を網の上に。
グーロンデ、グラルはギラルの活躍を褒めるように。
ああ、食べ終わった子供たち。
一人で遠くに行くのは駄目だぞ。
あと、トイレは少し行ったところにある。
山羊がトイレに行くのを邪魔してくる場合があるから、限界まで我慢しないように。
山羊たちがしつこいようなら、馬か牛に助けを求め……
ザブトンの子供たちがいるから大丈夫かな。
遊ぶ道具も、ちゃんと持ってきている。
ボール遊びがいいか?
かまわないが、まだ食事している人もいるから迷惑をかけないようにな。
クロの子供たちもまぜてやってくれ。
これで一通りの指示が終わったかな。
では、俺も食事にしようかな。
どうやら、俺の奥さんたちは俺を待ってまだ食べていないようだからな。
ああ、クロとユキ、ザブトンもまだ食べずに待っていたんだな。
すまなかった。
それじゃあ、のんびりと弁当を楽しもう。
奥さんズ「私はここ、貴女はそこ、子供たちはこのあたりで……」
村長「俺からの距離で人間関係や力関係を表現するのはやめるように。ライオンのハーレムじゃないんだから」
ドライム「似たようなものではないか?」
遅くなりました。
この話はもっと早くアップしたかったです。
すみません。
思いのほか、書籍化作業で手が回りません。
隙をみつけて、頑張ります。