表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
647/978

訓練


 高高度の大空。


 ドラゴン姿のグラルの背中に乗ったザブトンの子供たちは、真剣な顔をしていた。


 そして、一匹が合図を送ると二匹一組で次々とグラルの背中から飛び出した。


 その数、三十組。


 飛び出したザブトンの子供たちは姿勢と足を上手く使い、落下方向をコントロールしている。


 三十組が一つの生き物のようだ。


 その生き物には目的があった。


 大空を飛んでいるわしだ。


 鷲の姿を確認したザブトンの子供たちは弾丸のように速度を上げ、鷲に向かって急降下した。


 だが、ぶつかるわけじゃない。


 鷲に近づいた組から互いを蹴って分かれて鷲の左右を通過していく。


 なにをしているのかと思った瞬間、鷲の動きが変化した。


 不自然な動きだ。


 よくみれば、鷲にザブトンの子供たちの糸がからみついている。


 分かれたザブトンの子供たちのあいだに糸が張られていたようだ。


 その糸に、鷲がひっかかった。


 三十組全部が鷲に糸をひっかけられたわけではないが、それなりの数の糸がひっかけられ、鷲はふらふらと地上に着陸。


 地上で待機していたほかのザブトンの子供たちと合流し、鷲を捕縛した。


 鷲に糸をよけられた組は、地面に落ちる前に小さなパラシュートを編んで地上に降りている。


 そのまま地面に落下とかじゃなくてよかった。



 ザブトンの子供たちがなにをやっているかというと、空の敵を捕縛する訓練。


 十メートルぐらいの高さの場所にはザブトンが糸を張っているのだけど、天使族やハーピー族、フェニックスの雛のアイギスや鷲が村で生活するようになってその糸の数は減らされている。


 毎年、ひっかかって困る者が一定数いるからだ。


 なので糸を減らしたのだが、これまではそれで困らなかった。


 しかし、先日、俺が誘拐されかけた。


 張ってある糸の高さ以上だったので糸の数の増減はあまり関係ないが、これではいかんとザブトンの子供たちが自主的に訓練を始め、俺へのお披露目ひろめとなった。


 ちなみに、俺はドラゴン姿のグラルの横を飛行するドラゴン姿のギラルの背中に乗って見学している。



 俺を乗せたギラルと、ザブトンの子供たちを降ろしたグラルが地上に降りると、ザブトンの子供たちが綺麗な隊列を作って迎えてくれた。


 よかったぞ、これで空も安全だな。


「いや、これだとグラルが攻撃したほうが早くないか?」


 ギラル、そういうことは言わないように。


 いや、俺もそう思ったけど。


 ザブトンの子供たちのがんばりをだな……


 ん?


 ザブトンの子供たちが慌てるなとサインを送ってくる。


 グラルが攻撃したほうが早いのはわかっていた?


 だからこれは捕縛の訓練で、正式なやり方は違う?


 そうなのか?


 それじゃあ、その正式なやり方というのは……



 山エルフたちが砲を作っていた。


 使用禁止にしたガトリング砲ではなく……迫撃砲みたいな感じだな。


 これも水圧で……違うな。


 空気圧でなにかを飛ばす感じだ。


 ペットボトルロケットみたいなものだろうか?


 その迫撃砲に、弾頭と弾底を持ったザブトンの子供たちが乗り込む。


 え?


 まさか……


 止めようと思った瞬間、上空に発射された。


 一塊ひとかたまりとなったザブトンの子供たち。


 高高度に達したところで分裂。


 さきほど見た落下が始められる。


 なるほど。



 危ないから禁止。


 ええっ、じゃない!


 弾になって飛んでいくなんて、危険だろう。


 それに、これも砲で直接攻撃したほうが早いだろう。


 弾になる必要なんてない。


 弾になったら誘導できるから、命中率が違う?


 そうかもしれないが……


 いやいや、駄目駄目。


 ザブトンの子供たちの努力は認めるが、上空対策は別の方法を考えよう。


 そこ、飛べるように進化しようとか考えない。


 無茶は駄目だぞー。





 温泉地。


 大きなガトリング砲を整備しているヨルがいた。


 ドラゴンが装備するサイズだ。


 どうがんばってもヨルが持つことはできない大きさだ。


 魔法で操作するのだろうか?


 違った。


 人型のゴーレムに持たせるらしい。


 両脇に抱えるように二門。


 ゴーレムの背中には巨大な樽。


 水タンクと魔石を仕込んだ動力だな。


 ヨルはゴーレムの胸元に備えられた椅子に座り、射撃目標を定める。


 ……


 撃たない。


 構えるだけで満足なようだ。


 いいことだ。


 そのまま温泉地で管理していいから、子供たちにはさわらせないように。


 あと、整備はいいが改造は駄目だぞ。


 ああっと、今日の本題だ。


 この迫撃砲を渡そう。


 うん、永遠の忠誠とかいらないから。


 好きに使っていいから、管理するように。


 使い潰してもかまわない。


 頼んだぞ。


 温泉地の一部が武器庫のようになりつつあるが……ヨルが滅多にほかの者に触らせないから安心ではある。


 せっかく温泉地に来たのだから、死霊騎士たちやライオンの親子とコミュニケーション。


 まあ、一緒に温泉に入るだけだが。


 ん?


 死霊騎士、おけに酒の入ったコップなんか乗せて……まだ昼間だぞ。


 もらうけどな。


 うん、美味い。





 温泉地から戻って、牧場エリアの見回り。


 数頭のクロの子供たちが、山羊の群れを誘導していた。


 そんな状態だから、山羊たちが俺にちょっかいをかけたりは……山羊たちは根性があるなぁ。


 俺に向かってきた。


 仕留めていいなら、クロの子供たちで制圧できるだろうけど、怪我させないように止めるには数が足りない。


 群れの半数が俺に……くるりと方向転換をした。


 どうしたんだろうと思うと、俺の横にクロイチのパートナーであるアリスがいた。


 アリスは目立たないが、この村の古参の一頭だ。


 そして、クロの群れの引き締め役でもある。


 つまり、色々なところから怖がられている。


 山羊たちからも。


 ……


 こんなにおしとやかで、かわいいのにな。


 よしよし。


 アリスの最近の主な仕事は、俺の子供たちの護衛。


 なのでアリスの近くには俺の子供たちがいる。


 ルプミリナ、オーロラを中心とした年少組だな。


 ははは。


 ルプミリナとオーロラが俺のところにやってきた。


 よし、だっこだな。


 うっ……重くなっている。


 一度に二人は厳しい。


 ところで、二人以外はなぜアリスの後ろに隠れるのかな?


 お父さん、ちょっとショックだぞ。


 少し離れた場所にいる子守り役のハイエルフ、鬼人族メイド、獣人族の女の子が子供たちにサインを送って、俺に甘えさせようとしているが……子供たちはアリスの後ろから出てこない。


 子供たちとのコミュニケーションを頑張らないといけないと思うできごとだった。





いつのまにやら六億三千万PV、四十万ポイントover。

ありがとうございます。

更新リズムがまだ本調子ではありませんが、これからも頑張ります。



アリス   インフェルノウルフの古参の一頭。ルーよりも早く村長のもとに来ている。

ルプミリナ ルーの娘。

オーロラ  ティアの娘。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
山羊は一度万能農具で耕した方が良い
何故か対空砲で迫撃砲? アハト・アハトとか長10サンチ高角砲とか久我山の15サンチ高角砲では無いのね。 因みに旧軍はB29用に新開発したけど艦艇用の15㌢カノン砲でも良かったのではと思うよ戦艦大和の副…
[一言] 母親や世話係のアン達の後ろならまだしもアリスよりも懐かれていないのは父親として辛いな Σ(°_°:)⁉︎ それはそれとして、ルプミリナはこの時点ではまだ血の呪縛(厨二病)は発症してないのか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ