鳥たちの目的
パレードが終わり、夜更けまで宴会が続けられる。
今年は水関係の神話をテーマにしているからか、なんだかんだと水に飛び込むシーンが多かった。
お陰さまで、ため池の水位がかなり下がった。
ここは反省点だな。
ドラゴンたちが協力して北の山から巨大な氷塊を運び、それを溶かして不足分はなんとかなりそうだけど。
水温は大丈夫かな?
ポンドタートルたちがまた冬眠したりしないだろうか?
ああ、水温が上がるまで、陸上に避難しているのね。
よしよし。
パレードは大活躍だったからな。
好きなだけキャベツを食べるといい。
もちろん、ポンドタートルたちと一緒にがんばったリザードマンたちも忘れてはいけない。
ある意味、俺よりも目立つ場面が多かったしな。
いや、来年は俺が目立つようにという要望ではないから。
今回のようにほかの者が目立つ方向がよかった。
今回のパレードの見どころベスト3。
ポンドタートルとリザードマンによる水芸。
水中から飛び出してくるペガサスと、それに乗ったハイエルフたちの行進……いや、行軍かな。
武器とか持ってたし。
でもって、全員で踊りながら水中に飛び込んでいくラスト。
普段なら絶対にしないことをする祭りの空気って怖いなと思った。
でもって、おもしろかったというか微笑ましかったベスト3。
グーロンデがため池に墜落したことに驚いたオルトロスのオルが、ため池に飛び込んでの犬かき。
泳げない数頭のクロの子供たちが、ため池周辺でうろうろしていたところ。
あと、巨大な鳥たちに人見知りならぬ鳥見知りを発揮したフェニックスの雛のアイギスが、鷲の背中から離れなかったこと。
お陰で巨大な鳥たちに対する説教が止まらず、パレードの出番がきて鷲がしぶしぶ説教を終えたときには巨大な鳥たちはぐったりしていた。
いい気味とは言わないが、反省はしてもらいたい。
そういえば、あの鳥たちはどういった理由で俺をさらおうとしたのだろうか?
明日にでもちゃんと聞くとしよう。
とりあえず、今夜は……ザブトンが作ってくれた衣装を着てのファッションショーにつき合おう。
喜んでもらえて、なにより。
翌日。
村の住人たちに囲まれたなか、一列にならぶ巨大な鳥たちの前にザブトンと鷲がいた。
俺をさらおうとした理由を説明してくれるらしい。
と言っても、巨大な鳥たちは喋れない。
ザブトンや鷲も同じ。
だが、俺はザブトンとは長いつき合いだ。
だいたい、なにを言いたいかは伝わる。
鷲とも大丈夫だ。
なので説明してもらった。
一羽目。
巨大なカラス。
「新しく国を興す場所に導くのが我が役目。
さあ、ともに旅立とうではないか!」
巨大なカラスが翼を広げて、遠くを見る。
なるほど。
目的は理解した。
しかし、それでなぜ俺を選んだんだ?
「死の森の真ん中で村を作った功績を見てだ。
かなり前から勧誘をしようと思っていたが、そこの蜘蛛の縄張りの中に飛び込めず様子をうかがっていた。
そうしたら、なんと幸運にも我らが領域を飛んでいるではないか。
これはチャンスとつい手が出てしまった。
手順を踏まえず、申し訳ない。
正式に謝罪する」
巨大なカラスはどこから出したのか、一抱えできそうな綺麗な石を俺によこした。
迷惑料らしい。
遠慮なくもらっておく。
……あれ?
こういったのを手にいれるとルーとかが飛びつきそうだが、動かないな?
かわりにドワーフたちがざわついている。
なんだろ?
まあ、あとで聞こう。
「それで、改めてだが我とともに新しい地で国を興す気はないか?」
お誘いはありがたいが、この村から出て行く気はない。
「……そうか。
残念だ」
通訳されずともわかる落ち込みよう。
悪いことをした気になるが、だからと言ってこの村から旅立つ気もない。
ここは譲らない。
二羽目。
巨大な白鳥。
あ、三羽目の巨大な黒鳥も一緒に?
そっちのほうが説明が早いならかまわないぞ。
えーっと、それで君たちはどうして俺を?
「私はただ愛する相手がほしいだけ。
貴方のことが気に入ったから、私のパートナーにしてあげようとしただけよ」
巨大な白鳥は私に惚れてもいいのよと、自分の翼を広げる。
そんな白鳥につっかかる巨大な黒鳥。
「こいつはこんな感じで各地の男に手を出して迷惑をかけているから、私がそれを妨害しているの」
なるほど。
「各地の男に手を出してって、あなたが邪魔するから全部失敗してるじゃない!」
「そうなるように動いているからな。
いいから自重しろ!」
「私は愛に生きるのよ!」
「好きなだけ愛に生きればいいだろう!
お前に求婚する白鳥は山ほどいるだろうに!」
「ふんっ。
あんな美しくない連中なんてごめんよ!」
「だからって他種族に手を出そうとするな!
知っているか、お前に対する苦情は全部私のところに来るんだ!
私はお前の苦情処理係じゃないぞ!」
「だったら私の邪魔をしなければいいでしょ!」
「お前の両親に泣きながら頼まれたから嫌々やっているんだ!
いいから、私が相手をしているうちにやめておけ!
手遅れになっても知らんぞ」
俺がザブトンと鷲の通訳を確認しているうちに、巨大な白鳥と巨大な黒鳥はため池で暴れ始めたのでザブトンが糸で二羽とも縛った。
縛ったが……
黒鳥は悪くないんじゃないかな?
あ、この黒鳥は黒鳥で白鳥の邪魔をするために手段を選ばないところがあると。
なるほど。
えーっと、色々と脱線したが……
俺と巨大な白鳥では種族が違い過ぎるから、愛を育むのは無理じゃなかろうか?
俺がそう疑問に思うと、巨大な白鳥が光って人の姿になった。
……
見惚れるほどの美人がそこにいた。
おもわず声がもれ、ルーやティアにつねられた。
いやいや、妻たちには申し訳ないがあれは仕方がない。
素人でもわかるような綺麗な宝石とかを見たようなものだ。
心が揺さぶられる。
それを邪魔するように誰かの手が俺の視界を遮った。
「騙されてはなりません!
あれにとって異種族の姿など自由自在です!」
本当に誰だと思ったら、白鳥の人の姿とほぼ同じ姿の女性だった。
服のデザインカラーが白鳥の白に対して黒いことから……黒鳥か?
「はい。
この通り、姿は自由自在です。
ですので、私もあれと同じ姿になれます」
黒鳥の言葉に、俺は冷静になる。
正体はあの巨大な白鳥。
「待ってください!
私は呪いによって白鳥の姿にされたのです!
これが真の私の姿です!
その娘が貴方を騙そうとしているのです!」
「嘘はやめろ!
お前は生まれたときから白鳥だ!」
まあ、各地で問題を起こしていそうなのは理解した。
しかし、俺は自分のことを不細工と卑下したりはしないが、美男子だと自惚れたりもしない。
ごく普通だと思っているのだが……
そんな俺のどこがよかったのだろう?
その疑問には、黒鳥が応えてくれた。
「えーっと……あれにとって相手は白鳥以外であればいいのです。
今回の件も、さらわれている貴方を見て、助ければ惚れるかもって飛び出したのです。
しかし、欲がでたのでしょう。
そのまま連れ去ろうとしました」
「ち、ち、違うもん!
連れ去ろうとなんかしてないもん!」
白鳥が否定するが、これまでの言動から俺の軍配は黒鳥に上がる。
黒鳥は飯でも食べていけ。
いままで苦労したんだろう。
ああ、遠慮はいらない。
おかわりもいいぞ。
な、なにも泣かなくても……白鳥、ずるいとか騒がないように。
しかし、人の姿になると喋れたのか。
最初っから、こっちの姿で説明してもらえばよかった。
最後。
巨大な孔雀。
めでたいことがあると祝うのが習性?
なので、素直に祝いに来ただけ?
そこにあの空中戦があったので流れで参加したと。
……
なにも悪くないな?
でも、本来は二羽で祝うのがルールなのに、逸って飛び出してしまったと。
あ、それで別の巨大な孔雀に叱られてたんだ。
置いて行かれたら、そりゃ怒るな。
それじゃあ、孔雀は孔雀に任せることにしよう。
祝いに来てくれたことは感謝するけどな。
総括すると。
つい手を出したカラスと、それに便乗した白鳥が悪かったらしい。
カラスはちゃんと謝ってくれたし、俺の代わりにザブトンや鷲が叱ってくれたので、なにかを要求する気はない。
十分、反省しているみたいだし。
問題は……ガルフの息子を誘惑して、その息子の妻に関節を極められている白鳥だな。
あれを放置するのは問題が大きすぎる気がする。
お待たせしました。
少しずつリズムを戻せたらなと考えています。




