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安全確認と翼


 村の居住エリア、ため池の近くに十メートルの高さの塔が建築されている。


 細く、電波塔のような外見の塔だが、電波塔ではない。


 パレードの演出で使う塔だそうだ。


 ハイエルフたちが総がかりで頑張っている。


 ……


 十メートルか。


 普通の建物でいえば三階建ての屋上の高さになる。


 木製で、ほぼ人力で作った塔と考えれば十分に高い塔と言えるだろう。


 いや、まあ、俺の屋敷のほうが高いから、簡単だと言われれば簡単なのかもしれないが……


 もっと低くてもよかったんじゃないかな?


 三メートルぐらいとか。


 だが、事前の計画では塔の高さは三十メートルだった。


 それを俺がなんとか言って十メートルにしたのだ。


 これ以上、低くするのは厳しいだろう。


 無駄な抵抗なのはわかっている。


 わかっているが言わせてくれ。


 俺、この塔の先端に立つの?


 天使族がカバーするから、落下しても大丈夫?


 いや、落下したくないんだが……


 天使族を信用しないわけじゃないが、もう少し安全面を考えてもらいたい。


 安全ベルトというか安全ロープはある?


 ロープでどうする?


 落ちないように、塔と俺を繋ぐんだ。


 頼んだぞ。




 マイケルさんが、村にやってきた。


 短距離転移門によって、シャシャートの街から五村ごのむらまでが近くなったからだろう。


 一般開放はまだだけど、来訪しやすくなっている。


 マイケルさんは俺に挨拶したあと、そのまま温泉地に向かった。


 疲れているのかな?


 ゆっくりしてほしい。



 マイケルさんのほか、来訪頻度が高くなったのがグラッツ。


 これまでビーゼルに頼まないと来ることができなかったのが、短距離転移門の設置によって自力で村に来ることができるようになった。


 これはビーゼルも喜んでいるだろう。


 手間が減ったのだから。


 ロナーナも、グラッツに会えて喜んでいる。


 いいことだ。


 だが、毎日のように屋敷の玄関前でイチャイチャするのはやめてほしい。


 門番をしているレッドアーマーとホワイトアーマーが困ってるから。


 イチャイチャするなと言っているんじゃないんだ。


 節度。


 そう、節度が大事。


 君たちのイチャツキに刺激される者もいるんだ。


 誰だって?


 言われないと、わからないのか?


 では、はっきり言おう。


 ルーとかティアとかリアとかアンとかハクレンとかセナとか……


 わかってもらえて嬉しい。




 短距離転移門が開通したことで、王都にいたアサが戻ってきた。


 ウルザたちとの再会を喜んでいる。


「春になればすぐにお戻りになられると聞いていたのですが?」


「春のパレードが終わったら学園に戻るつもりよ」


 ……


 喜んでいるよな?


 アサの笑顔が少し引きつっているようにも見えるが……


 それに、お土産らしき大量の書類はなんなんだろう?


 あ、お土産じゃないのね?


 空き部屋を貸してほしい?


 いいけど……


 アサは空き部屋にウルザ、アルフレート、ティゼルを連れて行ってしまった。


 大量の書類とともに。


 紙は貴重品なのに、あるところにはあるんだなぁ。


「私たちが処理している量に比べれば、まだまだですよ」


 そうかと文官娘衆たちの言葉にうなずきつつ、アンに適当なタイミングでウルザたちにお茶を持って行ってやるように指示しておく。


 あと、王都に残っているアースとメットーラは大丈夫だろうか?


 連絡たよりがないのは元気な証拠かな?


 そう思っていたら、アサがやってきた。


「忘れており、すみません。

 アースとメットーラからの手紙です」


 ……


 元気であってほしい。




 パレードに向け、準備が進んでいる。


 そんななか、マルビットが翼を出さざるをえない状況になった。


 天使族もパレードに参加するしな。


 マルビットも隠しきれなかったのだろう。


 えーっと……


 マルビットの翼は……厚みがあって羽量が多い。


 ゴージャス感が五割増しといった感じだろうか。


 常に冬羽って感じがして温かそうだ。


 そういった種類の翼を持つ鳥もいるんじゃないかな。


 だが、天使族の感性ではあの翼は駄目らしく、ティアやルィンシァ、キアービットたちはマルビットの翼を責めている。


 俺は悪くはないと思うぞ。


 絶対に口に出しては言わないが。


 しかし、さすがはマルビットだな。


 ティアやルィンシァ、キアービットたちの責めを聞き流している。


 開き直ったようだ。


 これみよがしに、お菓子を食べ始めた。


 こうなると怖いものなしだな。


 そう思ったのだが……


 フェニックスの雛のアイギスが、マルビットをかばいだした。


 こんな素晴らしい翼をなぜけなすのかと、ティアやルィンシァ、キアービットたちに怒っているようだ。


 アイギスとしては、いまのマルビットの翼はあこがれの対象なのだろうか?


 チラチラとマルビットに送る視線に、尊敬の念が込められている。


 アイギスは完全な善意でかばっているのだろう。


 だが、そんなアイギスの態度に、マルビットは持っていたお菓子を置き、赤面して顔を隠しだした。


 責められるのには耐えられても、褒められるのには耐えられないようだ。


 そうか。


 今日からダイエット、頑張るように。


 あと、アイギス。


 個人の好みに口を出す気はないが、憧れるならわしの翼のほうがいいんじゃないか?


 シュッとしてて、かっこいいし。


 そんな風に言ったら、どこからか飛んできた鷲に軽くタックルされた。


 テレての行動かもしれないが、かなり痛かったぞ。



 ところでレギンレイヴはマルビットの翼を見ても反応していないが、どうも思わないのか?


 何人かの姉が、あんな感じの翼だったと。


 ……


 ノーコメントで。





 塔に安全ロープが設置されていた。


 設置されていたが……


 塔の根本に繋がれても、意味がないよね?


 下まで落下しないようにするためのものだから。


 ロープの長さにも注意だぞ。


 安全面の確認は、自分の目でやろう。


 強くそう思う俺だった。






銀行に行くため、生活リズムを直そうとして苦戦。

二日ほど、体調不良でした。

すみません。


銀行の窓口が開いている時間が寝る時間になっていた自分が悪いのです。


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― 新着の感想 ―
ダンジョン探索とか温泉調査では過保護になるのになんでパレードに関しては身体はらせるんだ……
[良い点] マイケルさんが気軽に温泉に来られるようになったのは嬉しい。
[一言] 安全ロープはゴム製のほうが良くないですか?ぐえってなるから。
感想一覧
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