双子の名前
俺はハクレンの産んだ息子に対し、ヒノジロウという名を考えていた。
長男がヒイチロウ、次男はヒノジロウ。
なにも問題はない。
ちょっと和風感が強いだけで。
しかし、ハクレンは息子だけでなく娘も産んだ。
まさか双子だったとは。
娘の名前を考える必要がでた。
息子がヒノジロウだから、娘はヒノヒメコ。
……
ヒノヒメコ。
マチオ=ヒノヒメコ。
…………
…………………………
前の世界だと、ヒノヒメコだけで姓名にならないかな?
日野姫子とか。
あと、前の世界の日野姫子さんには申し訳ないが、競馬の馬の名前にも思えてきた。
三冠馬ヒノヒメコ。
年度代表馬ヒノヒメコ。
凱旋門賞(外国の大きいレース)に挑戦、ヒノヒメコ。
……………………………………
だめだ。
もう競馬の馬の名前にしか思えない。
ハクレンが起きたら提案するつもりだったが、考え直そう。
いや、双子であったことから、ヒノジロウも考え直したほうがいいのかもしれない。
こうなればヒの文字にはこだわらない。
こだわらないったら、こだわらない。
命名。
息子、ヒカル。
娘、ヒミコ。
目を覚ましたハクレンが、さくっと決めた。
名前を提案したドースやライメイレン、ギラルにドライムが、がっくりしているが気にしない。
ヒカル、ヒミコ。
うん、いい名前だ。
ところで、産まれてから半日以上たったのに、まだ光ってたり、闇をまとっていたりするのは大丈夫なんだよな?
なんでも、持って生まれた魔力の属性が強いとき、こういったことがあるらしい。
珍しい現象ではあるが、健康に問題があるわけではないそうだ。
まあ、ヒカルを直視すると目が痛くなるのが当面の問題だな。
正直、ヒカルは濃いサングラス越しでしか顔をみてないし、ヒミコにいたってはライメイレンの魔法で闇が払われた一瞬しかみていない。
……二人とも、ハクレン似だな。
たぶん。
ヒカルとヒミコを肩が触れるぐらいの距離で並べたら、光と闇が中和されて姿をみることができた。
よかった。
ハクレンの出産は無事に済み、ドラゴンたちは大宴会。
村の住人もそれにつきあうが、ラスティの出産が控えていることを忘れてはいけない。
出産は、まだ一カ月ぐらい先だけど。
……
うん、一カ月先まで宴会を続けられても困るんだ。
クォン、お父さんが来てるぞ。
出迎えなくていいのか?
お父さんもそんなに弱気にならなくても……
ライメイレンの弟でしたよね、ライメイレンを呼びましょうか?
いや、そんな逃げるように部屋の隅を陣取らなくても……
わかりました。
そこにいてもいいですよ。
控え目なドラゴンもいるものだ。
宴会は横に置いておいて、俺もいろいろと注意しなければいけない。
まず、ラスティ。
二度目の出産だと言っても、不安はあるだろう。
娘のラナノーンは、母親のグラッファルーンに預けているから安心だろうけど……
いや、それも不安要素か?
ラスティはラナノーンを溺愛しているからな。
それと、目の前の宴会。
賑やかだが、妊娠中のラスティは酒が飲めないからな。
辛いかもしれない。
ラスティを不安にさせないように頑張ろう。
次に注意しなければいけないのがヘルゼ。
ヘルゼはハクレンの出産前からヒカルを運命の夫と決めて、この村にいる。
いまは照れているのかヒカルに近づかない……顔もみられないぐらい照れているそうだ。
マークがしょんぼりするから、奇怪な行動は避けるように。
困ったことや相談ごとがあるなら、母親のスイレンに相談すればいいんじゃないかな。
あと、年下だけどグラルとか。
ヒイチロウと仲良くやっているしな。
なんにせよ、ヘルゼがハクレンをお義母さんと呼ぶのは、気が早いと思う。
俺は自由恋愛主義だ。
ヒカルが嫌がったら、抵抗するぞ。
いや、冗談とかじゃないから。
まずはヒカルが産まれたことを素直に祝ってくれ。
そして、あとはヒカルが恋愛のことをわかるようになってから頑張るように。
この村に住み続けることに関しては許可するからさ。
最後に、ほかの子供たち。
子供たちを平等に扱っているつもりでも、どうしても生まれたばかりのヒカルとヒミコをかまってしまう。
そういったことをほかの子供たちは敏感に感じとる。
まあ、兄弟姉妹が多いからいまさら二人増えたぐらいで大丈夫だろうけど、十歳前後の子供たちには影響があるかもしれないので注意だ。
……
アルフレートが見たことのない表情をしていた。
なにかを我慢していると表現すればいいのか?
苦悩しているようにもみえる。
あんな表情をみたことがない。
俺は心配になり、近くにいるウルザに事情を聞いた。
ヒカルとヒミコの光と闇が羨ましくて悔しかったそうだ。
それをみたフローラから、光と闇を操るブレスレットをプレゼントされ、大歓喜。
調子に乗って使いまくったらブレスレットが燃料切れ。
光と闇を補充するため、ブレスレットを太陽に当てたり、暗闇に放置したりしなければならず、我慢の時間を耐えていると。
なるほどなるほど。
えーっと……
大丈夫そうだ。
お待たせしました。