始祖さんの帰りを待っているあいだの村での出来事
ミエル、ラエル、ウエル、ガエルの姉猫たち四匹は、虎のソウゲツにべったりだ。
しかし、常にというわけではない。
姉猫たちも食事のときや、トイレのときはソウゲツから離れている。
一メートルぐらい。
……
姉猫たちがソウゲツをすごく気に入っていることは、誰もが理解できた。
理解はしたが不満のある者がいる。
まず、魔王。
酒の入ったコップを片手に、俺に愚痴らないでほしい。
魔王にはまだアリエル、ハニエル、ゼルエル、サマエルの子猫たち四匹がいるだろう。
ほら、四匹が甘えているじゃないか。
羨ましい。
一匹ぐらい俺のところに来ても……魔王がいいのか、そうか。
知ってるか。
あの姉猫たち、俺の頭の上をお気に入りの場所として奪い合っていた時代もあったんだぞ。
魔王のほかに不満があるのが、姉猫たちの父親であるライギエル。
父親だもんな。
娘たちの行動には思うところがあったのだろう。
ソウゲツの背中に乗っている姉猫たちになにやら文句を言ったら、攻撃魔法で返事をされていた。
そのライギエルは、俺の膝の上でふて寝をしている。
よしよし。
父親なんて、そんな扱いさ。
俺もそのうち……
やめよう。
悲しくなる。
魔王とライギエルのほかに、もう一人というか一匹。
たぶん、ソウゲツ本人。
姉猫たちが少し離れたとき、俺をじっとみてくる。
俺はその目から、助けてほしいという意思を感じている。
気のせいだろうか?
確かめたいのだが、俺がソウゲツに近づこうとすると姉猫たちが戻ってガードするんだよなぁ。
困った。
しかし、助けを求めているなら助けてやらないといけない。
どうしたものか。
悩んでいたら、俺にささやく者がいた。
リアだ。
「一見、虎に乗る猫四匹の微笑ましい姿ですが、精神年齢を考えて擬人化すると……十歳ぐらいの少年に絡む成人女性四人になりませんか?」
救助!
姉猫たちをソウゲツから引っ剥がし、魔王にパス。
俺はソウゲツと共に森に逃げた。
本気で怒った姉猫たちは、怖かった。
酒が入っていたとはいえ、魔王を数分で倒すとは思わなかった。
まあ、魔王は無抵抗だったらしいしな。
わずか数分の逃避行だったが、俺とソウゲツのあいだにはたしかな友情が育まれたと思う。
アンの提案で、姉猫たちはソウゲツの部屋への立入が禁止になった。
「気を休める場所は必要ですから」
たしかに。
すごくよくわかる。
そして、姉猫たちはアンの言うことは聞くんだよなぁ。
食事を握っている者は強いということだろう。
その姉猫たちにアドバイスだ。
扉の前に待機してソウゲツにプレッシャーをかけるのはやめたほうがいい。
逆効果だから。
あと、魔王を倒すときにライギエルも一緒に倒しただろ?
その件で母猫のジュエルが怒っているから、逃げたほうが……素早いな。
まあ、回り込まれているが。
ははは。
こんなときだけ、俺に助けを求めるんじゃない。
妖精女王が客間でだらけていた。
いや、子供たちと遊び疲れただけのようだ。
「子供たちには限界がないから」
うん、そうだな。
妖精女王をダウンさせるまで振り回した子供たちは、それぞれの部屋でお昼寝中。
妖精女王もそのまま寝るのかと思ったら、気合で起きた。
「甘味」
はいはい。
用意しましょう。
なにがいい?
「パンケーキ」
好きだなぁ。
「三段重ねでアイスクリームとフルーツを上にたっぷり乗せて、イチゴのソースをかけて」
新作のキウイのソースもあるのだが?
「じゃあ、それは二皿目で。
一皿目は定番がいいの」
了解。
妖精女王は人間じゃない。
妖精だ。
だから、栄養の偏りとか、糖分の過剰摂取とかは気にしなくていい。
ただ、そんな妖精女王をみて子供たちが真似をするのは困る。
まあ、最近はアンたちの指導によって、妖精女王も子供たちの目を気にするようにはなってくれているので、とても助かっている。
感謝を込めて、いつも通りのパンケーキを作る。
その一皿目を妖精女王が食べているところに、ドースがやってきた。
「パンケーキか。
悪くないの」
はいはい、ドースの分も用意しよう。
ドースだけか?
ギラルやイースリーと一緒に麻雀をしていたんじゃないのか?
「わしは抜け番でな」
現在はギラル、イースリー、ルィンシァ、マークの四人で麻雀をしているらしい。
成績は……聞かないほうがいいみたいだ。
遊ぶのはかまわないが、以前のように山とか金鉱を賭けてないだろうな?
子供たちに影響があるようなら、麻雀を禁止にするからな。
イースリーも子供だが、彼女は麻雀をしているときが落ち着くらしい。
見知らぬ場所に来ているからな。
無理に止めたりはしない。
ところでいまはなにを賭けているんだ?
飴?
ああ、飴の入った瓶でやりとりしているのね。
一粒、二粒の単位ではなく、瓶単位なのは見逃すが……
イースリーの背後にこれでもかと集まっているのはどうなんだ?
彼女は天才?
そうかもしれないが……あれだけの量の飴をもらっても困るだろう。
一生分あるんじゃないか?
帰るときにでも別の物に交換してやろう。
はい、ドースの分のパンケーキと、妖精女王の二皿目のパンケーキ。
ソウゲツ 虎。
妖精女王 甘味が大好きな妖精のトップ。子供好き。
ギラル 暗黒竜。グラルの父親。グーロンデの夫。
ルィンシァ ティアの母親。ティゼルのおばあちゃん。
マーク マークスベルガーク。ハクレンの妹であるスイレンの夫。ヘルゼの父親。
イースリー ウルザの友達。魔王国に潜入していた元密偵。所属している国は滅んだ。
お待たせしました。
書籍化作業だなんだといろいろありまして。
定期更新にはまだ少しかかりそうですが、なんとか戻れるように頑張ります。




