冬の海でのバーベキュー
“最後の試練”が行われた浜だけに限らず、ダンジョン内では始祖さんの転移魔法が使えなかった。
使えれば最初の浜に食料を取りに戻りたい。
ザブトンの子供たちに、蒸かしたジャガイモを食べさせてやりたいから。
あと、俺たちの食事も。
ラミア族がダンジョン内に運んでくれてはいるが、滝のところまでなのでここで待機していては食べられない。
ダンジョンを抜けてくる者も、食料を持ってはいないだろう。
まだ日は高く、夕食の時間には早いけど、冬だから日はあっという間に落ちる。
そろそろ準備をしなければ……
目の前に、海の種族がいる。
食料は彼らに頼むしかないかな。
いや、待て待て。
海の種族はどうやって移動しているんだ?
若い人魚の男性に聞いてみた。
「海を使えば自由に行き来できますよ」
なるほど。
俺たちが集合していた浜の場所、わかる?
「ダンジョンの入り口がある川の近くですよね」
おお、知っていたか。
ならば、イカダかなにかを作れば、運んでもらうことは?
「それはかまいませんが……あちらを」
若い人魚の男性が示した方向をみると、海の種族が引っ張る小舟に乗った三人のラミア族がいた。
「ここで待機するとのことでしたので、向こうに連絡しておいたのですが……ご迷惑でしたか?」
いや、ありがとう。
助かるが……
あの小舟を引っ張ってる海の種族って、最初の浜にいた海の種族だろ?
いいのか?
種族の長だけがダンジョンのことを知らされて、継承していると言ってなかったか?
「そう言われましても、各種族の長だけだと管理しきれませんから……
私も長じゃありませんが、ここにいますし」
えーっと……
「ぶっちゃけると、継承は極秘ではないので聞いたら教えてくれます。
ただ、聞いた者は私のように管理のお手伝いに駆り出されるわけで」
つまり、あの小船を引っ張っている海の種族たちは……
「次から、ダンジョンの管理もやってもらうことになるかと。
いやー、清掃作業が楽になりそうで嬉しいなぁ」
ま、まあ、海の種族のことは海の種族で解決してもらおう。
余計な口出しはしない。
が、一つだけ。
向こうで商売をしたいと言っていた者たちは許してやってくれ。
頑張っていたから。
ラミア族は、食事ではなく調理器具と食材を持ってきてくれていた。
「村長の手が空いているなら、こちらのほうが喜ばれるのではないかとメイドの方々が」
なるほど。
ありがとう。
この調理器具と食材。
凝った料理もできそうだが、ここは浜だから……バーベキューにしよう。
海の種族、海産物を頼むぞ。
こっちは肉と野菜を出す。
もちろん、参加していい。
鉄板と麺があるから、焼きそばも作るか。
昨日の夜。
カレーとラーメンだけでは、物足りない感じがしたんだよな。
海の家といえば、具の少ない焼きそば。
……
海産物がたくさんあるから、海鮮焼きそばにしよう。
うん、美味しいは正義。
おっと、ザブトンの子供たちにジャガイモを蒸かすのも忘れない。
ついでに焼きトウモロコシ。
本命のバーベキューも忘れない。
串に刺したほうが手を汚さないか。
とりあえず、人数分……
おっ。
クロの子供たち三頭の組がやってきた。
よしよし。
だが、油断するのはまだ早いぞ。
最後の試練がある。
海の種族、よろしく。
え?
このバーベキューでいいじゃないか?
……
お前たちがそれでいいと言うなら、かまわないが……いいのか?
代々、伝承してきたんだろ?
あ、うん、美味しいは正義だな。
試練にはならないけど。
俺たちは、ある程度の人数が揃うまで浜でのバーベキューを楽しんだ。
冬なのが、ほんとうに残念だ。
日が完全に落ちた。
レギンレイヴや始祖さんの灯りの魔法で、暗くはない。
その灯りの魔法に照らされているのは……
俺、レギンレイヴ、始祖さん。
ザブトンの子供、十七匹。
クロの子供、十六頭。
ガルフ、ハイエルフ、山エルフ。
以上がダンジョンをクリアした精鋭である。
海の種族と、そのほかクリアできなかった者たちが拍手をしてくれる。
クリアできなかった者たちがこの場にいるのは、海の種族の頑張りによって、最初の浜から小舟で移動したからだ。
クリアできなかったクロの子供たちやザブトンの子供たちがわかりやすく不貞腐れている。
まあまあ、運が悪かっただけだから。
ルーの組もティアの組もリアの組も残念だったな。
次はクリアできるさ。
ダガの組も……ああ、“大岩の試練”が抜けられなかったのか。
あそこは難関だったな。
そして、ウルザ、アルフレート、ティゼル。
明日も挑戦する顔をしているな。
だが、時間があるかどうかは、転移門の先次第だからな。
挑戦できなくても、怒らないでくれよ。
浅瀬にあった転移門は……潮が引いているので、いまは砂浜にある。
海水に濡れずに入れそうだ。
ちなみにこの転移門、ダンジョンをクリアしていない者でも通れるらしいので、ルーとティア、リアは同行する。
ウルザたちは、ダンジョンをクリアしていないからと一緒に行くのを嫌がった。
その潔さは好ましいので、了承。
最初の浜で待っていてくれ。
すまないがダガ、ウルザたちの護衛を頼む。
ちなみに、クロの子供たち、ザブトンの子供たちはダンジョンをクリアした者だけが移動する。
残りは、俺たちが戻ってくるまで、最初の浜を守っておいてほしい。
では、出発。
転移門をくぐるぞ。
……
あ、俺が先頭なのは駄目なのね。
了解。
外でくしゃみ(花粉症)ができないので、引きこもっています。




