試練開始
俺たちの前に現れた光の階段。
それをルーとティアが分析する。
「魔法で作られた階段ね。
仕掛けはなさそうだけど……あ、これ、クロの子供たちもザブトンの子供たちも一人ってカウントするみたい」
「数で押すのは厳しそうですね」
「戦力を分散させる仕掛けなのかしら?」
「そうだとすると、三人一組と言ってましたから、三人登れば階段が消えてしまう可能性もありますね」
「そうね。
時間で再出現してくれたらいいけど、登った三人が戻らないと階段が出ないって仕掛けだと困るわね」
「厄介ですね」
「まあ、かもしれないってだけよ。
あとは試してみないと……」
そういうことで、三人が先に進むことになった。
俺は真っ先に候補から外された。
わかっている。
これまでは一緒に行動していたが、ダンジョンに入るのは最後と約束していたからな。
先頭を切って進んだりはしない。
当然ながら子供たちも駄目だ。
となると……
ルー、ティア、始祖さんで行くのが無難かな?
そう思ったところで、クロの子供たちが吠えてアピールしてきた。
その背中のザブトンの子供たちも。
負けじとガルフ、ダガ、山エルフたちが声をあげる。
積極的なのはいいことだが、危ないんだぞ。
いや、駄目とは言わないが……
クジで決めることになった。
ザブトンの子供、ザブトンの子供、ザブトンの子供。
うん、まあ、数が数だしそうなるか。
大丈夫か?
自信満々だな。
よし、わかった。
頼んだぞ。
まずは上に登ったあと、戻ってこられるかをチェックだ。
戻ってこられないときは、その場で待機。
だけど、臨機応変を忘れないように。
昨日みたいに、襲撃されても海に入らないことを守ってたのはなしだ。
お前たちの安全が第一だからな。
閉じ込められても、必ず助けに行くから無理はしないように。
ザブトンの子供たちは階段を登った。
階段をある程度登ると、光に包まれたように消えた。
光で見えないだけか?
それとも、どこかに転移させられたのか?
急に不安になる。
ルーとティアの予想は外れ、光の階段は消えていない。
追いかけたい気持ちを抑え、ザブトンの子供たちが戻ってくるのを待つ。
……
しばらく待ってもザブトンの子供たちは戻ってこなかったので、次の組が階段を登る。
次の組は、クロの子供、ザブトンの子供、ザブトンの子供。
先ほどと同じように、光に吸い込まれて見えなくなる。
が、さきほどと違い、上からクロの子供が吠えた声が聞こえた。
無事に登ったら、吠えてもらえるようにお願いしていた。
声が聞こえて一安心だ。
しかし、その点を考えれば、クジで順番を決めたのは間違いだったかな。
反省。
一組目と違い、あまり間を置かずに次々と登っていく。
三人一組で登っているが……制限的なものはないのかな?
そして、誰も戻ってこないのでどんどんと数が減り……
子供たちの番が近くなる。
子供たちはクジではなく、ウルザ、アルフレート、ティゼルで組んでいる。
俺としては、大人二人に子供一人の組にしたかったが、子供たちでまとまっているほうが守りやすいそうだ。
その子供たちは俺の組の前に移動を開始なのだが……
ん?
悲鳴が聞こえた。
悲鳴が聞こえた方向は俺たちが進んできた道……つまり、後方から。
ラミア族が食事を持ってきて、なにかトラブルに巻き込まれたのか?
それとも……
この場にいる者たちの警戒度が上がる。
が、姿を現したのはずぶ濡れのハイエルフ三人。
かなり序盤に上に登った組だ。
ハイエルフ三人から話を聞くと、こんな感じだった。
「階段を登った先はこの真上で、広い部屋があり、先発した者たちはそこで待機していました」
「階段は登りきると消え、戻ることには使えません」
「部屋には川が流れており、この場所への入り口を隠していた滝につながっています」
ふむ。
「広い部屋でも後続がやってくるとさすがに狭くなってきましたので、ルーさまの指示で先に進むことになりました」
一応、先行しているルーやティア、リア、ガルフやダガにはある程度の指揮権を渡している。
先に進んだことを怒ったりはしない。
「階段を登ったときの三人一組はなにかで確認されているようで、一緒でないと進めない場所があります」
「各所に試練があり、私たちはそれに失敗して川に落とされ、滝に落ち、ここに戻ることができました」
つまり、ここに戻ってくることは可能なのか。
かなり安心できる。
それで、その試練というのは?
「細い橋を渡る“正道の試練”、飛んでくる泥団子を避けて進む“清廉の試練”、扉だらけの小部屋が続く“六角の試練”です」
「まだ試練は続くと思いますが、私たちは“六角の試練”で失敗しました」
「“六角の試練”の小部屋は六角形で、全ての面に扉があります」
「扉を開けて先に進み、正解の道を探すのが試練の内容です」
「そこでは個別に行動できますが……」
「私の開けた小部屋の一つに床がなく、落下して川に落ちました」
「一人が落下した瞬間、ほかのメンバーがいた床も消え、川に落ちました。
三人一組は連帯させられるようです」
「川で泳ぐことはできますが、川から上がるのはできませんでした。
なにか結界で防がれているようです」
「滝から落ちたあとは、川から上がることができましたので……たぶん、試練に失敗すれば滝から落とされ、戻される仕組みかと」
なるほど。
となると……この場で火を用意して、温まれるようにしておいたほうがいいか。
空気は流れているし、酸欠になる心配もない。
ハイエルフの三人に続き、クロの子供やザブトンの子供たちが滝から落ちて、戻ってくる。
ああ、そんなにしょんぼりするな。
無事でよかったぞ。
滝に落ちている者たちから情報収集をしていると、俺の番がやってきた。
俺の組のほかのメンバーは、レギンレイヴと始祖さん。
これもクジではなく、話し合いの結果。
俺の組の後ろには、滝から落ちて戻ってきた者たちを除き、クロの子供とザブトンの子供の混成組が三つ、それと山エルフが一人、残っている。
後方を守るためと、万が一の連絡要員だったのだが、滝から落ちて戻ってきた者に交代してもらおう。
……
あれ?
子供たちは?
俺の組の前だから、先に行ってると。
…………
上で待ってるかな?
待っていない気がする。
……
急いで追いかけるぞ!
ダンジョンの話は次で終わる予定です。




