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メイドは見ていた/メイドは巻き込まれた


 私は……匿名希望です。


 言えるのは職業がメイドということだけですね。


 はい、職場は大樹の村です。


 ……


 バ、バレないもん。


 大丈夫だもん。



 ごほん。


 えー、大樹の村では、少し前からある事案が話題になっていました。


 それはガルフさまと、五村ごのむらのピリカさまの結婚話です。


 こういった話は、村長、もしくはルーさまやティアさまあたりが勧めるのでなければ、関与しないのがマナーです。


 村長は自由恋愛を推奨すいしょうしていますからね。


 ただ、本人が関与を希望した場合は、話が別です。


 今回はピリカさまが五村の村長代理であるヨウコさまに相談……というか、ピリカさまの弟子たちがヨウコさまに相談。


 ヨウコさまは、その相談をルーさまに持ち込みました。


 村長にではなく、ルーさまに持ち込んだヨウコさまの判断に関しては、私はなにも言いません。


 ええ、村長に持ち込んでも、放置されて終わるというヨウコさまの予想は正しいと思いますから。


 なんといっても、ガルフさまには妻子がいますしね。



 さて、その持ち込まれた相談によって動き出したのが大樹の村の女性陣。


 女の子は、いくつになっても恋の話に心を躍らせるもの。


 ガルフさまとピリカさまの恋がどうなるか、最前線に陣取りながら見守りました。


 ええ、準備はしました。


 舞台も整えました。


 手を回せる部分は回しました。


 しかし、無理に二人をくっつけようとはしていません。


 これは私だけでなく、全員がです。


 村長に誓えます。


 ですので、二人がどうなるかは二人の判断次第なのです。


 私はきっちりと仕事をしながら、どうなるかと思っていたのですが……



「すまない。

 俺は妻以外を愛することはできそうにない」



 どうやら、二人は結ばれない運命だったようです。


 残念ですが、こればかりはどうしようもありません。


 ピリカさまも、この結果を予想しているところがあったので……目に涙がありますが、笑顔です。


 今晩の食事は、ピリカさまの好きな料理をたくさん並べるとしましょう。


 ……


 ところで、村長。


 どうしてそんな場所で、倒れているのですか?


 ガルフさまの流されない態度にやられたと。


 なるほど。


 起き上がれますか?


 無理?


 ダメージが大きいようですね。


 大丈夫ですか?


 私は村長を起こそうと手を差し伸べたのですが、その手が届く前にアンさまとラムリアスさまが村長を抱えて起こしてしまいました。


 私の手の行き場は……はい、窓でも磨いておきます。


 アンさまとラムリアスさまは、そのまま村長を部屋にお送りするのですね。


 わかりました。


 今晩の食事の献立こんだてで提案があるのですが……はい、ではそのように。


 アンさまも、ピリカさまのことを考えていたようです。


 窓を磨き終わったら、厨房の応援に行くとしましょう。



 厨房はいつも通り戦場でした。


 急な献立の変更もありますしね。


 おっと、気を抜いてはいけません。


 動かなければ。


 厨房にいる仲間たちが私に仕事を躊躇ちゅうちょなく割り振ってきます。


 少し作業量が多い気もしますが、やれないことはありません。


 頑張ります。


 ……


 頑張りますが、一言だけいいですか?


 アンさまとラムリアスさまはどこですか?


 この時間の厨房に姿を見せないほうが珍しい二人です。


 村長を部屋にお送りすると言って別れてから、それなりの時間が経過しています。


 ……………………


 しまったぁ!


 窓など磨かず、村長を運ぶのを手伝えばよかった!













 オルトロスのオルがご飯を食べています。


 この村に来た当初は、私たちが用意したご飯を食べていたオルですが、最近は食べません。


 食べるのはグーロンデさまが与えたご飯だけのようです。


 なかなかの忠誠心。


 誇らしげな顔をしていますが……そのご飯を作ったのは私ですからね。


 グーロンデさまから、与えるようにしているだけで。


 いえ、なんでもありません。


 余計なことを言わないのが、メイドの心得です。



 オルは食事を終えると、グーロンデさまのところに向かいます。


 全力疾走です。


 かなりの甘えん坊と判断できます。


 グーロンデさまは、子供たちの教育にはそれなりに厳しいところもあるのですが、オルの教育には甘いようです。


 一度、グーロンデさまが悪戯いたずらで、オルが食事をしている最中に隠れたことがあるのですが……グーロンデさまの姿がないことに気づいたオルは、ひゅんひゅんと悲しそうな声で鳴きながら屋敷中を駆け回り、グーロンデさまを探していました。


 その様子を見て以降、グーロンデさまはさらにオルに甘くなったような気がします。


 ところで一つ気になるのですが、オルトロスの鼻の性能はどれぐらいなのでしょうか?


 グーロンデさまも本気で隠れたわけではないでしょうし、鼻を使って探せばなんとかなったと思うのですが……


 まさか、オルはグーロンデさまに甘えるためにわざと!


 ……


 オルは、そんなことを考えたりしませんね。


 すみません、疑って。


 まだ子供だから鼻の性能が低い……いえ、鼻を使って探すことに思いいたらなかったのでしょう。


 あ、はいはい、貴方がグーロンデさまの前を歩くのを邪魔したりはしませんよ。


 ですが、前を歩いていいのですか?


 普通は後ろでは?


 なるほど、道案内をしているのですね。


 グーロンデさまに案内は必要はないと思いますし、トラブルがあったらグーロンデさまの後ろに隠れるのに……


 オルがねてしまいました。


 すみません、口が滑ったようです。


 余計なことを言わないのが、メイドの心得なのに……反省。



 拗ねたオルはグーロンデさまがでたら、元に戻りました。


 はい、私は何も言いません。


 仲がいいですねとだけ。


 ただ、あちらでギラルさまが見ていますが、大丈夫ですか?


 グーロンデさまに可愛がられるオルを憎々しくみるのはいつも通りですが、なにやら雰囲気が違うようにも思えますが……


 昨日、喧嘩をされたのですか?


 驚きました。


 夫婦円満なようでしたので。


 円満だからこそ喧嘩すると。


 勉強になります。


 ちなみにですが、喧嘩の理由は?


 グーロンデさまが作った料理をギラルさまが残したと。


 そういえば昨日、グーロンデさまが一品、作っていましたね。


 それを残したのですか。


 私たちか悪魔族の方が作ったと思ったのでしょうが……


 有罪ギルティですね。


 ですが、ギラルさまは謝るタイミングを見計らっているようですが……


 承知しました。


 では、ギラルさまを厨房にお連れします。


 ギラルさまも、料理を作る楽しさ……ごほん。


 苦労を知ればいいのです。


 そして料理を残される絶望を。


 ふふふ。


 ともあれ、ギラルさまの料理の出来でき云々(うんぬん)は横に置いておいて、夜までには仲直りしてくださいね。


 夫婦喧嘩を長続きさせても、いいことはありませんから。



 夜。


 ギラルさまの作った料理は、おいしかった。


 グーロンデさまの料理よりも。


 ……


 グーロンデさまはギラルさまの料理を完食し、拗ねました。


 オルが困っていますから、機嫌を直してくださーい。


 って、どうして私がなだめるのですかー。


 ギラルさまの出番でしょう。


 まだ仲直りしていないから無理?


 今がそのチャンスなのです。


 ええい、ぐだぐだしていないで前にでなさい!


 オルを盾にしない!








アン    鬼人族メイドのトップ。

ラムリアス 鬼人族メイドのナンバーツー。獣人族の世話係。


グーロンデ ドラゴン。

ギラル   ドラゴン。グーロンデの夫。


オルトロス 双頭の犬。



なんとか更新リズムを取り戻したいです。



アンとラムリアスは、村長とカードゲーム等で遊んでいるだけです。きっと。





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書籍七巻、2020年4月8日発売予定です。

よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
村長は相当なダメージがあったから、介抱に時間かかったんだろうなぁ(白目)
[一言] アンとラムリアスは、村長とカードゲーム等で遊んでいるだけです。きっと。< 大人のカードゲームとか夜のカードゲームとか枕詞を付けると、何と無く納得←捏造とか偏見
[一言] ゴール:2人 シール:9人 ブロン:1人 だからブロンが居なかったのか・・・!Σ( ゜Д゜) あと、このメイドさんはいつものドジっ子メイドさんですね?(笑)
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