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心配するアン


 今回のダンジョン訪問は、五日から十日ぐらいを考えていた。


 東のダンジョンでどうなるかわからなかったので、長めに予定を取っていたのだが……


 結果、二泊三日で戻ることになってしまった。


 留守を任せたアルフレートが、少し不満そうだった。


 すまない。


 気合を入れていたレッドアーマー、ホワイトアーマーたちも。


 ははは、よしよし。


 クロやユキは落ち着いたものだな。


 いつもより距離は少し近いが。


 あと、オルトロスのオルが俺に向かって吠えているのはなんだろう?


 ……まさか、俺を忘れたのか?


 あ、いま思い出したようだ。


 尻尾を振って寄ってきた。


 撫でてやりたいが、吠えられたあとだと抵抗があるな。


 まあ、撫でないのもあれか。


 よしよ……


 手を伸ばしたら、オルはグーロンデのところに駆けていった。


 ……


 追いかけて捕まえて撫でた。


 グーロンデ、驚かせてすまない。



 護衛として同行してくれたレギンレイヴとスアルロウに、深く感謝を伝えた。


 常に気を張っていてくれたからな。


 しっかりと休んでほしい。


 褒賞メダルは夕食のときにでも……不要?


 いや、しかし……


「普段、お役に立てておりませんので」


「そうです。

 あの程度では、褒賞メダルをいただくことはできません」


 そんなことはないと思うのだが……


 わかった。


 俺としては受け取ってほしいが、二人をねぎらう目的の物を押し付けても仕方がない。


 渡すのは諦め、ティアに預けておくことにしよう。


 ティアに任せたとも言う。



 ガルフがゴール、シールの二人に何かを教えていた。


 珍しいな、あの組み合わせでブロンがいないなんて。


 ……


 あれ?


 違うな。


 ゴールとシールの二人がガルフに教えているのかな?


 なにを教えているのだろうと近づこうとしたけど、妙に真剣な顔をしているので遠慮することにした。


 というか、近づけない雰囲気がある。


 三人を見張るハイエルフや鬼人族メイドたちの姿もあるし……なんだろ?


 まあ、俺に関係があるなら、あとで話があるだろう。


 うん、近づかない。



 俺の部屋のベッドで、猫のライギエルと宝石猫のジュエルが仲良く寝ていた。


 俺の部屋は、屋敷で一番快適な場所だからな。


 おっと、別に起きなくていいぞ。


 そのまま寝ててかまわない。


 俺は着替えに来ただけだ。


 ん?


 酒スライムもいるのか。


 お前は冬でも元気だな。


 ……


 待て。


 俺は部屋の隠し戸棚を開き、中を確認する。


 出かける前は八割ほどあった酒樽の中身が三割以下になっていた。


 お前だな。


 よし、素直に認めるところは評価しよう。


 だが、盗み飲みは駄目だぞ。


 酒じゃない場合もあるんだからな。


 酒かそうでないかは見ればわかる?


 ドワーフたちみたいなことを言うじゃないか。


 まあ、見分けられるのかもしれないが、盗み飲みはしないように。


 次やったらアンに言いつけるからな。


 酒スライムは反省しつつ、部屋から出て行った。


 ライギエルが、甘いなぁと俺を見ている。


 うん、たしかに甘い対応だろう。


 だが理由がある。


 隠し戸棚の奥に、さらに隠し扉がある。


 そこにドワーフたちからもらった美味い酒が隠してあるのだ。


 それさえ無事なら構わないのさ。


 俺がそうライギエルに説明しても、ライギエルの表情は変わらなかった。


 ……


 まさか?


 俺は隠し戸棚の奥の隠し扉を開く。


 酒樽はある。


 が、軽い。


 …………


 ………………………………………………………………


 アンに言いつけた。


「酒スライムの行いは理解しました。

 それはそれとして、村長の酒量を管理するのも私たちの仕事と思っていたのですが、まだまだ信用されていないようで残念です」


 ごめんなさい。


 しかし、隠し持っている酒というのは男のロマンなのだ。


 熱く語ったが、理解されなかった。


 残念。



 ルーは、なんだかんだと忙しいようだ。


 フローラも。


 まあ、留守中の話は夕食のときにでも聞くとしよう。


 ところで、女性陣がなにやら慌ただしいけど、なにかあるのか?


 まだ秘密?


 悪いことをしているわけじゃない?


 そのあたりは信用しているよ。


 話せるようになったら頼む。



 さて、夕食前にウルザ、アルフレート、ティゼルを呼ぶ。


 約束だったからな。


 海岸のダンジョンに向かう予定を教えよう。


 一応、子供での参加希望者はウルザたち三人の予定だったが……ほかに連れて行きたい者はいるか?


 すまない、はっきり言おう。


 イースリーを置いて行っていいのか?


 ウルザの友達だろ?


 招いておいて、放置するのはどうかと思うんだ。


 イースリーも、ウルザのいない村に残ってもと思うんだが……


 危ない真似はさせられない。


 まあ、そうだな。


 ダンジョンに挑むんだからな。


 それを自分の身に置き換え、行くのを諦めるということは?


 目をそらさない。


 ん?


 どうしたアン。


 夕食か?


「村長もご自身に置き換えて、行くのを諦めるのはどうでしょう?」


 ……


 し、始祖さんが関わったダンジョンみたいだし、始祖さんに同行してもらうから大丈夫じゃないかな。


 魔王からも何人かベテラン冒険者を派遣してもらう手筈になっているし。


 うん、先頭で突入したりはしないから。


 安全に安全を重ねて、危なかったら即撤退の方針で……


 夕食の時間まで、アンに海岸のダンジョンにおける活動スタイルのプレゼンを頑張った。


 り、理解は得られたと思いたい。





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― 新着の感想 ―
村長の身が危険どうこう言うなら災厄と見なされる犬や蜘蛛や竜が毎日のように飛び交うこの村から出ていくと言い出したらどうする気なんだろ、この村の人たち
[一言] >しかし、隠し持っている酒というのは男のロマンなのだ。 >熱く語ったが、理解されなかった。 完璧を求めるあまり息苦しさを与えがちな鬼人族だからね。 仕方ないね。
[一言] 酒スライムがほんといらない。 なんのために存在してるの? 癒し要員なら沢山いるので結構です。 あとヒラクが自分の楽しみをちょっと作ることすらアン(鬼人族)は不満なの? 健康な体という特性を…
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