文官娘衆のつぶやき
村長が各ダンジョンを訪れているのですが、私は留守番です。
おもしろくありません。
思わず、そう呟いてしまいました。
いけませんね。
私が留守番なのは村長の決定。
村長の決定に不満があるわけではありません。
不満があるわけではないのですが、一緒に行きたかったという気持ちを消すのに苦労しているだけです。
……
え?
私の留守番を決定したのは村長じゃなく、フラウさま?
そうなると話が変わります。
フラウさまはどこですか?
この不満を届けなければ気がすみません。
ええ、きっぱりはっきりと言ってやりますよ。
それで、フラウさまはどこに?
私の背後?
……
いえ、別に不満なんてありません。
おほほほほ…………ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!
最近のフラウさまは、攻撃的です。
以前より、攻撃に出る判断が緩くなっている気がします。
貴族の血が流れている者としては、まず会話による解決を試みるのが優雅だと思うのですがいかがでしょう?
「文句はあとで文書で提出しなさい。
それより、言われた仕事は終わったの?」
文書で提出しても、読まずに暖炉で燃やすだけですよね。
紙はもったいないので、板に書いて出します。
わかっています、よく燃える木の板を選びます。
以前に燃えにくい木の板に書いたら、三日ぐらい暖炉で粘ってましたからね。
不満を書いた文章をいろいろな人に見られて恥ずかしかったです。
あっと、仕事は終わってますよ。
仕事が終わっていないのに、お茶を飲みながら文句を言うわけないじゃないですか。
次の仕事ですか?
私の次の仕事は、会議への参加でした。
と言っても記録係ですが。
屋敷の会議室に集まったメンバーは、ルーさま、フローラさま、アンさま、セナさま、フラウさま。
いつもならいるハクレンさま、ラスティさまは妊娠中のため、欠席。
グランマリアさま、クーデルさま、コローネさまは、アルフレートさまの護衛任務のために欠席。
ヨウコさまは五村のトラブルに対応中で欠席。
仕方がない事情とはいえ、空いている席が目立つのは残念です。
だからと言って、その席にグーロンデさまが座ることはないのですよ。
ハクレンさまの代理ですか、そうでしたか。
あはは、ルーさまたちが認めているものを、私が文句を言うわけないじゃないですかー。
お茶、どうぞ。
フラウさま、みなさま忙しいのですからテキパキと進めましょう。
参加メンバーからもわかると思うのですが、正式な会議ではありません。
正式な会議なら、ドノバンさまやダガさまなどの男性陣がもう少しいます。
もしくは、女性陣がもう少し多いか。
なので、これは非公式な会議。
名目は“お茶会”となっております。
“お茶会”の内容は多岐に渡りますが、基本的には村長に相談する前の事前確認のようなものです。
誤解のないように言っておきますが、村長の判断を操作しようとする内容ではありません。
また、相談を潰すこともありません。
主な目的は相談内容を事前に知り、関連資料を集めたりまとめたりするだけです。
これは村長に聞かれたとき、すぐにお答えできるようにです。
大事なことなのです。
ただ、似たような相談なら一つにまとめたり、誰が相談するかの調整はしています。
同じ相談を何度もしたら、村長を煩わせてしまいますからね。
まあ、この辺りはみなさん慣れたもの。
さくさくと決めて進めていきます。
私も頑張って記録します。
あとで不参加だった人にも見せる必要がありますからね。
相談の事前確認が終われば、村長が関与しない事案の報告。
「〇×▽◇□~」
違いました。
村長に聞かせられない事案の報告です。
悪い内容ではありませんよ。
男性に聞かせられない乙女の秘密とご理解ください。
これは記録しません。
最後は本当のお茶会になり、雑談の時間です。
「五村の献上品で、いくつかほしいのがあるのだけど確保して大丈夫?
管理はフラウがやってるのでしょ?」
「子供たちの教育に関して提案があるのですが」
「ああ、例のお酒。
ドノバンさまが持っているのを見ました」
「ヤーは本気で子供を作る気があるのでしょうか?」
「イースリーさんが、ときどき遠い目をするのが心配ですね」
「アルフレートさまとウルザさまは確定として、ティゼルさまのお相手はどうされるのです?」
雑談なので、私も参加できます。
ちょっと楽しいです。
と、鬼人族メイドの一人がアンさまに連絡に来ました。
村長が無事に南のダンジョンを出て、北のダンジョンに向かったのを確認したようです。
問題が起きるとは思いませんが、用心はすべきですからね。
村長の移動が順調のようで、なによりです。
あっと、村長の動向報告で会議室が静かになってしまいました。
ここは私が話題をふるべきでしょう。
「そういえば、ピリカさんのことでみなさまに相談があるのですが……」
ピリカさんは人間です。
私は魔族なので忘れがちなのですが、人間の寿命を考えればピリカさんはもう子供を数人産んでいてもおかしくない年齢なのです。
このまま、結婚しないつもりなのかと少し前に聞いたのですが……
「結婚願望がまったくないようではないのですが、結婚するならその相手はガルフさまということで」
「ガルフの二番目の妻になりたいと」
「はい。
ただ、獣人族の男性は多妻を好まない傾向にあるので、ピリカさんは遠慮しているそうです」
「妻の許可があれば、なんとでもなるでしょ」
「その妻の許可が最難関だと思いますが……」
「私が聞いた話では、ちゃんと挨拶に来るなら受け入れるとか……」
ピリカさんには申し訳ありませんが、盛り上がりました。
人の恋路は、乙女の栄養なのです。
え?
私?
私は村長狙いですよ。
いや、まあ、その、たしかに直前にヘタれる根性なしですけど。
乙女ですから。
いつか、きっと。
更新、遅くなってすみません。
来ましたよ。
ヤツが。
そう、ヤツが来たのです。
ヤツの名は花粉症。
憎いあんちくしょうです。




