表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
600/994

イースリー 頑張る


 目を覚まして最初に思ったのは、生きているということです。


 殺されなかったのでしょう。


 向こうがどういうつもりかは知りませんが、ありがたいことです。


 ふかふかのベッド、心地いいです。


 ……


 あれ?


 天井のはりからこちらを見ている視線は……


 蜘蛛ですね。


 手のひらサイズの蜘蛛です。


 この蜘蛛、ただの蜘蛛ではありませんね。


 種類はわかりませんが、魔物です。


 そして、相当な戦闘力を有しています。


 私では勝てません。


 私を鍛えてくれた教官でも無理じゃないかな。


 つまり、私は気を失います。



 目を覚ますと、目の前にさきほどの蜘蛛の魔物。


 ここは地獄でしょうか?


 私はもう一度、気を失いました。



 気を失っても救いはありません。


 知りました。


 目の前にいる蜘蛛が片足を上げているのは威嚇でしょうか?


 ふふ。


 もう、慣れました。


 それぐらいでは怯えたりしません。


 頑張ってベッドから体を起こすと、ベッドの周囲に蜘蛛がたくさんいました。


 ……


 私は静かにベッドに体を寝かせ、眠るように気を失いました。



 この地獄から抜け出せるのでしょうか。


 私は何度かの気絶を乗り越え、ベッドの下に逃げ込むことに成功しました。


 直後にメイドさんたちによって引きずり出され、着替えさせられましたが。


 ベッドの下に戻してくれたので問題ありません。


 あ、すみません。


 下着まで洗わせてしまって。


 ところでメイドさん、そこらにいる蜘蛛たちはなんとかなりませんか?


 いえ、蜘蛛が嫌いとかそういうレベルの話ではなく……


 なんとかなる?


 ありがとうございます、ありがとうございます!



 みなさんはご存じでしょうか?


 インフェルノウルフなる魔獣を。


 街ぐらい簡単に廃墟にしちゃうすごい魔獣です。


 これはもう魔獣ではなく、災害ですね。


 そんな災害が、蜘蛛と交代で私の部屋にやってきました。


 ベッドの下から出られません。




 見慣れた顔というのは、心が休まります。


 部屋から出てこない私の様子を見に来てくれたティゼルさん。


 実家では飛んでいるのですね。


 ちゃんと天使族と確認できてよかったです。


 え?


 ティゼルさんのお父さまとの挨拶をやり直し?


 私の挨拶は聞かなかったことにするから?


 ……


 これはどういうことでしょう?


 情報統括部(ドレ・ビオルネ)と敵対したくないから、聞かなかったことにするということでしょうか。


 なるほど、ありえますね。


 わかりました。


 挨拶をやり直しましょう。


 なので、まずは私をお風呂まで案内してもらえますか?


 ええ、人間は慣れる生き物ですが、汚れには慣れてはいけないのです。


 病気になってしまいますからね。


 あと、私と一緒に移動しようとしているインフェルノウルフに、この部屋に残るように言ってもらえると嬉しいです。


 え?


 あまり意味がない?


 それはどういう意味で……


 ああ、なるほど。


 屋敷の中、いたるところにインフェルノウルフがいるのですね。


 あははははは……


 ベッドの下に戻らせてください。


 違った。


 学園に帰らせて。




 人間は慣れる生き物です。


 ふふふ。


 死を覚悟したら、インフェルノウルフのお腹をでることだって怖くはありません。


 あ、もうちょっと上のほうですか。


 ここですか?


 違う。


 このあたり?


 よかった。


 ……


 私が撫でているのです。


 撫でさせられているわけではありませんよ。


 おっと、ウルザさんに呼ばれました。


 今日はこれから雪合戦だそうです。


 雪合戦がどんなものかよく知りませんが、雪玉を投げあう和気藹々(わきあいあい)とした遊びだと聞いています。


 そういった遊びを楽しみにできる程度には、余裕を持つことができていると思います。



「敵、直上!

 太陽に隠れてやがった!」


「ちいっ!

 こっちの雪玉は届くか?」


「無理だ。

 かなり高度がある!

 って、避けろ!

 雪玉を落としてきたぞ!」


 ……


「重装歩兵隊、雪槍ゆきやりを構え!」


「雪槍というか氷槍こおりやりになってないか?」


「ルール上、問題ない!

 行くぞー!」


 ……


「南にルーさまを発見!

 ……大規模魔法の詠唱中です!

 こっちの対抗魔法、どうなってるの!」


「さっきの攻撃でやられた。

 直接、潰しに行くしかない!

 決死隊をつのる!」


 ……


 和気藹々とした遊びは、どこに行ったのでしょう?


 私は魔王……魔王さまの側近として近づく敵に雪玉をぶつけていきます。


 体じゃなく、顔か手を狙えと?


 りょ、了解。


 細かいことは考えず、全力を尽くします。




「イースリーだったか。

 活躍、見事であった」


 魔王さまからお褒めの言葉を頂きました。


 最後、身を投げ出して魔王さまの盾になったことがよかったのでしょう。


 ……


 私は暗殺者。


 魔王国の敵なのですが……


 私は、なにをやっているのでしょう?





 頭部が二つある犬、オルトロス。


 狂暴な魔獣ですが、インフェルノウルフに比べれば弱いです。


 しかも、子供。


 おそれる必要はありません。


 とか思いましたが、めっちゃ強い。


 誰か助けてー!


 よく知らない女性が助けてくれました。


 オルトロスは、その女性にすごく懐いているようです。


 戦っては駄目ですよと注意されると、素直に従っています。


 ありがとうございます。


 グーロンデさまですか。


 ほんとうに助かりました。


 この屋敷にも、温和な人がいるんだ。


 よかった。


 その温和な人の手をさらにわずらわせてすみませんが、動けません。


 誰か治癒魔法を使える人をお願いします。




 この屋敷で出される料理は絶品です。


 さすがは、ウルザさん、アルフレートくんたちの実家というべきでしょう。


 学園でも、彼女たちが作る料理は美味しいですからね。


 ただ、私の座る位置というか……お客扱いなので、ウルザさんたちのお父さまのすぐそばなのですよね。


 目の前には、吸血姫と殲滅天使。


 横に魔王さま。


 ……


 心が休まりません。


 なので食べることに集中します。


 本来なら、周囲に合わせた速度で食べるべきなのでしょうが……周囲を見る余裕がありません。


 周囲をじっくりみたら、食欲がなくなります。


 ドラゴンとかいますし。


 しかし、私はミスをしました。


 私は昔から、食事が早く終わるように教育されていたので、かなり早いのです。


 かなり目立ってしまいました。


 反省。


 え?


 あ、いえ、別に大家族で育ったわけでは……


 おかわり、ありがとうございます。


 好き嫌いはありません!


 魔王さまから、料理の一部を譲ってもらいました。


 私はなにをやっているのでしょうか。






イースリー、この話で終わらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まぁ、人間の領域だと大樹の村は人外魔境だよな…(^_^;)
[気になる点] ザブトンの子たち、村長以外の私室には入らないように言われてた様な?
[一言] 村の料理の味に慄いた結果
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ