注意 雪合戦をしているだけです
「戦況はどうなっている?」
魔王がそう聞き、ウルザが答える。
「敵は南側から三軍に分かれて進んできているわ。
戦力は均等っぽいから、どれが本命かはわからない」
「ふんっ。
三つ全てが本命であり、助攻でもある。
グラッツが得意とするスタイルだ」
「全てが本命で助攻?」
「調子がいいところを本命として扱い、遅れたところがサポートする作戦だ」
「それ、うまくいくの?」
「全員が本命のつもりで殴りかかるから、相手は総攻撃かと混乱する。
また、どこを防衛していいか悩ませるしな。
現場の指揮官の判断と統率が重要になるが……グラッツは現場指揮官を選ぶのも上手くてな」
「さすがグラッツのおじさん。
それで、対策は?」
「戦力を分散させたと捉え、一軍を集中攻撃。
突破して相手の本陣に突撃するのが無難だが……」
「グラッツのおじさんなら、そのあたりも対処してると?」
「必ずな。
だから、相手が嫌がる持久戦に持ち込む。
時間はこちらの味方だ」
「わかったわ。
そのまま迎え撃つから中央はビーゼルのおじさん。
左をティゼル、右をアルフレートが担当するわ」
「相手は挑発してくる。
乗るなと連絡だ」
「まかせて」
「魔王のおじさん、まずい!
ティゼルのゴーレムが倒された!」
「あれがか?」
「巨人族が集団で襲いかかったみたい。
あ……突破されちゃった」
「こっちにくるか?」
「えーっと、中央のビーゼルのおじさんの後方に回り込むみたい。
ビーゼルのおじさんは……逃げ遅れちゃった。
このままだと囲まれちゃうわ」
「本陣を押し出す!
後方に回り込んだ敵を逆に包囲だ!
アルフレートは?」
「ティゼルのゴーレムが倒されたのをみて、動揺しちゃったみたい。
押されてる。
けど、元四天王の二人が補佐して耐えてる」
「よし。
あの二人が健在なら、粘れるはずだ。
行くぞ!」
「ビーゼルのおじさんから手旗信号。
“ワレ、コレヨリ、テキジン、ニ、トツゲキス。
マオウサマ、バンザイ!”」
「くっ。
ビーゼル……」
「魔王のおじさん、どうする?」
「一緒に突撃してやりたいが、魔王だからな。
そうもいかん。
タイミングをみて引くぞ、三の砦まで下がる。
アルフレートにも合わせるように伝えろ」
「了解」
「ふっ。
そう暗い顔をするな。
まだ負けたわけではない。
魔王の戦いは最後の最後まで諦めんのだ。
そして、最後に笑うのはこの魔王だと知るがいい」
「うん。
期待してる」
村の南の広場では、壮大な雪合戦が行われていた。
ルールはシンプルに、相手を攻撃していいのは雪のみという一つだけ。
つまり、雪が当たっても、続けて行動していいフリースタイル。
相手が負けを認めるまで雪玉をぶつけ合う雪合戦だ。
俺は丁寧に参加を遠慮した。
そして、それが正解だったと寒空の下で再認識。
相手を攻撃していいのは雪のみだが、魔法は禁止されていない。
つまり、防御に火の魔法を使うのはOK。
召喚したゴーレムによる直接攻撃は禁止だが、ゴーレムに雪を投げさせるのはOK。
逆に、ゴーレムに対しては雪以外の攻撃が可能。
ゴーレムは魔法扱いなんだろうな。
ティゼルの大きなゴーレムが召喚されたときは、一方的になるかと思ったのに、巨人族がスクラムを組んで倒しに行ったのは驚いた。
ゴーレムを倒されると、ティゼルは逃げるしか手がないのだが……上空からのマルビット、レギンレイヴによる投雪攻撃に負けた。
ビーゼルは自主的に転移魔法を封印しているのかと思ったけど、違った。
最後の最後に転移魔法で敵対しているグラッツのすぐ後ろに出現し、グラッツを狙ったが駄目だった。
転移場所を読んでいたのだろうなぁ。
ビーゼルが転移した場所には落とし穴があった。
落とし穴に落ちたビーゼルは、そのまま埋められた。
大丈夫かな?
アルフレートは、元四天王の二人を左右に奮戦している。
元四天王の二人は、普段は五村にいるのだけど、この雪合戦のために魔王に呼ばれた。
最初は不満そうだったが、なぜかアルフレートに協力的で、いまではアルフレートから「爺や」と呼ばれるために頑張っている。
あ、すごい。
ルィンシァとラズマリアによる投雪攻撃を炎の魔法でブロックした。
さらに仕返しとばかりに大きな雪玉で二人を迎撃している。
いい勝負みたいだ。
ん?
大きな歓声が上がった。
見ると、フェニックスの雛のアイギスが、雪を溶かしながら飛行。
魔王が作り上げた雪の砦を次々に破壊していく。
そのアイギスに、大きな雪玉が飛来する。
魔王軍の最後方に位置した投石器から発射された雪玉攻撃のようだ。
ヨルによるかなり正確な攻撃だったが、アイギスはそれを軽やかに避けて撤退。
代わりにゴール、シール、ブロンの三人が、アイギスの作った道を駆けて行く。
大きな雪の塊を持っての突進攻撃か。
冷たくないのかな?
ちなみにこの雪合戦。
賞金とか賞品が懸かっているわけではない。
得られるのは、ただ名誉のみ。
なので魔王はともかく、グラッツはもう少し適当にやると思ったのに、どうしてあそこまで本気なんだ?
遠くにいる俺に聞こえるぐらい檄を飛ばして指揮をしている。
「あ、それはちょっとしたシチュエーションを加えたからだよ」
俺の疑問に答えてくれたのは始祖さん。
シチュエーション?
「彼の妻を魔王が強引に連れさった。
そんな感じのシチュエーションだとすれば、魔王相手でもやりやすいんじゃないかなと思ったんだけど……」
なるほど。
「進め! 進め! 進め!
絶対に魔王を討つのだぁっ!」
グラッツの戦意の高さが理解できた。
雪合戦は魔王が討ち取られて終わった。
ウルザも粘ったが、駄目だったようだ。
魔王側で残ったのはアルフレートだけだな。
すごいぞ。
とりあえず、体が冷えただろうから風呂か温泉に入るように。
雪合戦を見物してた者もだぞ。
始祖さん、すまないが運んでもらえるか?
最初のほうにギブアップしたティゼルはもう行ってる。
ん?
どうしたウルザ?
豚汁?
ああ、終わったら出す予定だったが、日暮れまで続いたからな。
豚汁は夕食で出すことになった。
アンたちも色々と用意してくれているから、急いで温泉に入るように。
グラッツ、勝利の報告はその程度にしないとロナーナが冷える。
温泉に一緒に行っていいから、報告の続きはそっちでするように。
大雪が積もったからではないだろうけど、にぎやかな日だった。
お久しぶりです。
活動報告で伝えておりますが、引っ越しにて通信環境が途絶しておりました。
(予定では引っ越し前には通信工事が終わっている予定だったのですよ。なのに……)
対策としてモバイルに手を出してみましたが、引っ越しに合わせてマシンも新調しており、各更新であっという間に利用限界、低速化。
叫びましたね。
マシン側で通信を制限する前に、更新が勝手に始まるのはサービスとは言わないと思います。
なんにせよ、やっと開通しました。
これから頑張るぞと言いたいのですが、年末なんですよねぇ。
更新リハビリをしつつ、年内にもう一回か二回の更新を目指して頑張ります。
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コミカライズの更新がされています。(詳しくは活動報告で)
こちらも、よろしくお願いします。
コミカライズコミックス、五巻が来年でます。
一月九日です。




