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冬と帰還


 宴会が終わったあと、三日ほど始祖さんが思い出そうと努力した結果、海岸のダンジョンは始祖さんが作ったのは間違いないようだ。


 ただ、詳細は覚えていないらしいので、どんなダンジョンかはわからないらしい。


 いい知らせだろうか?


 いや、ルーとフローラが海岸のダンジョンは危険だと周囲に警告しているから悪い知らせなのだろう。


 俺としては、始祖さんの性格からそんなに危険な罠を仕掛けるとは思えないのだけど……


「いまはあれですけど、昔は酷かったので……」


 昔の始祖さんを知っているレギンレイヴも、海岸のダンジョンは危険だと判断しているようだ。


 ところで、酷かったってどんな感じに?


 聞こうとしたら、始祖さんにブロックされた。


 残念。



 なんにせよ、海岸のダンジョンに挑むのは先の話。


 いまは冬に備えての準備を頑張らねば。


 ということで、俺はワイン造りで出るブドウの搾りかすを、牧場エリアに運び込む。


 この搾りかす、山羊や羊たちが好んで食べるのだ。


 どれぐらい好むかというと、搾りかすを見た山羊たちが大人しくなるぐらい。


 いいことだ。


 ただ、この搾りかすからも酒を造ろうとドワーフたちが頑張っているので、全部は渡せない。


 半分だけ。


 それでもかなりの量になるから十分だろう。


 搾りかすを食べている山羊や羊たちの毛はもう完全に冬毛になって、もこもこしている。


 暖かそうだ。


 クロたちやフェンリルは冬毛に生えかわっているらしいが、それがわかるような大きな変化はない。


 よくよく見れば……ぐらいの変化だ。


 おっとフェンリルがよく見てくれとアピールしている。


 ははは。


 かわいいぞ。


 そういえば、オルトロスのオルはどうなんだろう?


 冬毛に生えかわるのかな?


 いまの時間なら牛のそばに……いた。


 毛は……うん、よくわからない。


 子犬だし、まだこっちに来て短いからな。


 観察不足。




 そろそろ冬眠するからか、ザブトンが冬眠しない子供たちに細かく指示をしている。


 とくに細かく指示されているのがレッドアーマーとホワイトアーマーの二匹。


 屋敷の門番として、ザブトンはこの二匹にかなり期待しているようだ。


 二匹もそれを感じたのか、気合を入れて返事をしていた。


 かっこいいぞ。


 ザブトンはアラクネのアラコにも指示をしている。


 そんなに心配しなくても、アラコはちゃんとするさ。


 なに?


 アラコも、うっかりすることがある?


 アラコが照れてるってことは……そうなのか、知らなかった。


 まあ、失敗はかまわないさ。


 大事なのは、同じ失敗を繰り返さないことだ。


 ……


 かっこいいことを言ったつもりだが、自分に刺さる。


 俺、同じ失敗を何度もしているからなぁ。


 ん?


 ザブトンが俺にと、何着もの服を渡してくれる。


 ありがとう。


 わかっている。


 冬の間にちゃんと着るさ。


 俺からも冬眠するザブトンにプレゼント。


 俺が彫ったウルザの像。


 普段の勇ましいウルザではなく、優しいウルザをモデルにした。


 美化がちょっとすごいかもしれない。


 ザブトンがどう冬眠しているか知らないから、邪魔にならないように小さく彫ってみようと頑張ったのだけど……どうやっても十五センチぐらいになってしまった。


 大丈夫かな?


 あ、喜んでもらえているから大丈夫そうだ。


 わかっている。


 ウルザたちが戻ってきたら、ちゃんとザブトンのことも伝えておく。


 ウルザたちはまた学園に行くだろうけど、ザブトンが起きるまでは村にいてほしいな。


 ちなみに、ウルザの像を製作しているところをルーをはじめとした奥さんズにみつかり、浮気を疑われた。


 ウルザであると判明した段階でアルフレートやティゼルの像も求められたので、現在製作中である。





 一気に寒くなり、冬がきた。


 外での作業はほとんど終わったので、問題なし。


 屋敷の中を見渡すと……オルトロスのオルが、寒さに負けてコタツに引き篭もっている。


 まだ体が小さいからな。


 体温をたもてないのだろう。


 牛たちがオルの様子を見に来たが、暖かそうにしているオルをみて安心していた。


 寒くても我慢して牧場エリアに来るんじゃないかと心配した?


 ははは、一回は飛び出したぞ。


 すぐ戻ってきたけどな。


 グーロンデに外が変だと訴える姿には、笑わせてもらった。


 ああ、牛たちも無理は駄目だぞ。


 牛小屋は暖めているから、夜はそこで寝るように。


 温泉地に行くのもかまわないが、村の誰かと一緒にな。


 この時期に下手に温泉に入ると、出られなくなる。


 誰かいれば魔法でなんとかしてくれるから。


 ……何度も冬を過ごしているから、わかっている?


 たしかにそうだが、毎年、一件はあるだろ?


 それは山羊たち?


 そういわれるとたしかにそうだな……ん?


 心配してくれることは嬉しいと。


 そうかそうか。




 ビーゼルに連れられ、アルフレートたちが帰ってきた。


 ウルザ、ティゼル、ゴール、シール、ブロンもいる。


 みんな大きくなった。


 ……一人、知らない女の子がいるが?


 ウルザの友達?


 そうなんだ。


 よろしく。


 ……


 ウルザ、ウルザ。


 この友達、いきなり自分のことを暗殺者とか言ってるけど大丈夫なのか?


 特技は急所突きだそうだが?


 まあ、そういったことを言いたい年頃なのかもしれないが、初対面の人を相手にそういったことを言うのはよくないと思うのだが……


 俺が注意してもいいのかな?


 少し困っていたら、ウルザの友達は膝を抱えて泣き出した。


 ど、どうしたんだ?


 ウルザ、とりあえず部屋で休ませてあげて。



 ウルザの友達はウルザに任せて……


 アルフレート、ティゼル。


 よく戻ってきた。


 活躍は…………………………いろいろと聞いている。


 細かい話はあとだ。


 大きくなったな。


 ルーやティアも待っているから、挨拶は短めにしたいが……


 聞かないといけないことがある。


 一緒に行ったアサ、アース、メットーラは?


 王都で仕事をしている?


 あの三人の仕事は、アルフレートたちの面倒をみることじゃなかったか?


 その面倒をみた結果の仕事ね。


 うん、別に叱ったりはしないから。


 ねぎらっておこう。


 止めてすまなかった。


 ルーとティアにも挨拶を。



 さて、ゴール、シール、ブロンだが……


「ガゴロク領を完全掌握しました。

 重装備の精鋭七百をいつでも動員できます!」


 ゴール、綺麗な敬礼だな。


 言ってる意味は欠片もわからないが。


「シャイバン領を完全掌握しました。

 軽装備の兵、二千を動員できます!」


 シールも綺麗な敬礼だが、ゴールと微妙に違う敬礼なのは別の地域の敬礼だからかな?


「バルゴ地域に点在する多腕族の集落を纏め上げました。

 多腕族の戦士、百十二人を動員できます!」


 ブロンも違う敬礼だな。


 そして、三人は敬礼ポーズのまま、目をきらきらさせてなにかを待っている。


 えーっと……


「ご苦労。

 見事だ」


 俺は、文官娘衆のラッシャーシが出してくれたカンペを素直に読んだ。


 すると、三人は声を揃えて返事をする。


「魔王国に侵攻する際は、先陣を!」


 侵攻しないよ。


 ビーゼルもいるんだから、あまり変なことは言わないように。


 ビーゼル、すまない。


 ゴールたちは大きくなったとはいえ、まだまだ子供だから……


 俺はビーゼルに言いわけしようとしたら、ビーゼルがブロンの横に並んで敬礼した。


「クローム領、領兵十七万六千!

 いつでもお呼びください」


 ビーゼルの言葉にゴールたち三人が悔しそうな顔をしているが……冗談だよな。


 ゴールたちに合わせてくれたのだろう。


 さすがビーゼルだ。


「魔王国軍第一から第七まで、総兵数百六十一万……」


 ティゼルがビーゼルの横に並んでなにか言おうとしたのを、ティアがブロックした。


 うん、よく聞こえなかったから。


 気にしなくていいぞ。


 ともかくだ。


 えーっと……


 おかえり。





久しぶりの更新になってしまい、すみません。

私事で忙しいのは変わらず、しばらくは更新が安定しません。

ご容赦ください。


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― 新着の感想 ―
魔王国、平和裏に制圧済み?
>>ワイン造りで出るブドウの搾りかす 本場では、ココからさらに蒸留酒を造ります。 フランスではマール、イタリアではグラッパが作られます。ちょっと荒い味のブランディーです。 ブドウの種はシードオイルを…
[一言] まあ、そのまま魔王国軍使って遠征ですね
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