洗濯が得意な鬼人族メイド
10/16 二回目の更新になります。
ふふふ。
大量に干されたシーツをみるのは気持ちがいいですね。
ザブトンさまの子たち、お手伝いありがとうございます。
助かりました。
残りは小物ですから私だけで……最後までお手伝いしてくれるのですか?
ありがとうございます。
では、洗濯物を干す糸をお願いできますか?
数がありますから、丈夫な糸ですよ。
はい、よろしくお願いします。
私は鬼人族メイドの一人。
大樹の村で、日々の仕事をこなしています。
オルトロスのオルはグーロンデさまといつも一緒です。
仲がいいですね。
ただ、オルはグーロンデさまがドラゴンであることは知らなかったのでしょう。
目の前でドラゴンの姿になったグーロンデさまを見て、パニックになっていました。
そして、なにを思ったのかドラゴンの姿のグーロンデさまに噛みついたのです。
村長に聞くと、オルはグーロンデさまがドラゴンによって潰されたと思ったようです。
つまり、グーロンデさまを助けようと、ドラゴンの姿のグーロンデさまに噛みついたと。
凄い。
オルの牙はグーロンデさまの鱗に阻まれていますが、懸命に攻撃しています。
その忠誠心、見事です。
今日の夕食はちょっと豪華にしてあげましょう。
あ、でも主を主として認識できないのは失敗でしょうか?
人の姿のグーロンデさまと、ドラゴンの姿のグーロンデさまが同一人物だとわかれというほうが無茶でしょうか?
……
おや、オルの動きが止りました。
どうしたのでしょう?
村長に聞いてみました。
どうやら、ドラゴンの姿のグーロンデさまから、グーロンデさまの匂いがすることに気づいたようです。
なるほど。
攻撃が弱まりました。
オルのパニック状態は続いているようです。
対してドラゴン姿のグーロンデさまは、オルを優しく見守っています。
だからでしょうか。
オルが攻撃を止めました。
ドラゴンの姿のグーロンデさまをみて、おろおろしています。
グーロンデさまを攻撃してしまったと、理解したのでしょうか?
村長に聞いてみました。
違うようです。
村長が笑いをこらえながら、教えてくれました。
オルのいまの心境をセリフにすると、こんな感じだそうです。
「頭がいっぱいある。
ひょっとして……お母さん?」
……
失礼。
ちょっと吹き出してしまいました。
えーっと、気持ちはわからなくもありませんが、ドラゴンとオルトロスでは種族が違いますよ。
頭がいっぱいあるからといって、親子関係はなりたちません。
ですが……
「違うの?」
そう二つの首を揃えて傾げるオルの姿は、少し寂しそうです。
オルの経歴を考えてみれば、小さいときに母親から離されたことが予想できます。
母親を求める子の気持ち。
たまりません。
グーロンデさまにも通じたのでしょう。
グーロンデさまは人の姿に戻り、オルの二つの頭を撫でています。
母親ではありませんが、主として寂しい思いをさせないというグーロンデさまの決意を感じます。
ただ、人の姿のグーロンデさまを見て、無事だったと素直に喜んでいるオルにそれが伝わっていればいいのですが……
あの喜び具合。
伝わってなさそうです。
ですが、野暮はいけません。
優しく見守ります。
悪魔族のプラーダさまは、ブルガさま、スティファノさまの同僚だそうです。
普段は五村で生活していますが、挨拶にやってこられました。
あー、ブルガさま、スティファノさまに弄られてる弄られてる。
仲はいいみたいですね。
そして、村長の彫った神さまの像に感動……いえ、感涙しているようです。
始祖さまと仲よくなれそうですね。
あ、仲よくなった。
凄い速さだ。
めっちゃ語り合ってる。
それはいいですが始祖さま、二日酔いは大丈夫なのですか?
お休みになっていたと思っていたのですが……
いえ、二人で宴会の場に戻れというわけではありませんよ。
プラーダさま、宴会に参加するのはいいですが、挨拶を忘れてはいけません。
グッチさまは定期的に、ここに来ていますからね。
ああ、宴会の場に行ってしまった。
……
プラーダさまの悲鳴が聞こえました。
はて?
あっ。
始祖さまが向かう宴会の場にはドラゴンしかいませんと、プラーダさまに伝えていませんでした。
天使族のレギンレイヴさまは、大樹の村に馴染もうと努力されています。
とくに大樹の村の規律を詳しく聞いてきます。
規律を乱さないようにしようとする姿勢には好感が持てます。
なので私も遠慮はしません。
しっかり教えます。
「トイレに行ったあとは手を洗いましょう」
村長が定めた厳しいルールです。
ああ、早とちりしてはいけません。
これだけではありませんよ。
「お尻を拭く葉は、なくなりそうと気づいた者が補充すること」
これも大事です。
ふざけていませんよ。
よかった。
レギンレイヴさまは、真面目に覚えようとしてくれています。
ええ、こういった生活に密着する規則が大事なのです。
はい、一緒に言いましょう。
さすがは村長だと。
朝食を済ませたヨウコさまは、今日も五村に向かわれます。
私はヒトエさまをお預かりしますが、少しすればヒトエさまはグーロンデさまの授業を受けに行きます。
まだ早いとは思うのですが、ヒトエさまの強い希望です。
ヨウコさまからは、ヒトエさまの希望するようにさせてやってほしいと言われていますので、強く反対はしません。
グーロンデさまからも、かまわないと言われていますしね。
ヒトエさまをグーロンデさまの授業に送り出したあとは、私はヨウコさまの部屋を片付けます。
相変わらず、部屋の中は仕事の書類や板でいっぱいです。
五村の村長代理というのはハードワークなのでしょう。
それに、最近では村長のためにいろいろと策を講じているようですし。
ああ、策と言っても悪いことではありませんよ。
アルフレートさま、ティゼルさま、ウルザさまが魔王国の学園に行かれたことで、寂しい思いをしている村長を慰める策です。
そのため、住人の一部からはヨウコさまが村長に甘えすぎているなどとの言葉を聞くのですが、私たちにできないことをしてくれているのです。
感謝しなければ。
まあ、村長とヨウコさまの仲に嫉妬しないわけではありませんが。
それにしても、五村は問題が多いですね。
村長を求めて集まった大樹の村と違い、ただ安住の地を求めてやってきた者が多いからでしょうか。
ヨウコさまに任せ、放っておけばとも思いますが、五村も村長の村。
手を抜くわけにはいきません。
ですが、やり過ぎも駄目です。
これは私の勝手な予想ですが、将来的に五村はアルフレートさまが統治することになると思うのです。
村長の五村に対する手の入れ具合から考えて、大きく間違えてはいないでしょう。
そして、五村の村長にアルフレートさまが就任したとき、やることがないという状態は避けなければいけません。
ヨウコさまの統治が甘いのは、そのときのために残しているのだと思うのです。
でなければ、ヨウコさまは住人に力を見せつけ、完璧な統治をするでしょう。
そっちのほうが面倒は少ないはずです。
それをしないのは……
おっと、いけません。
急いで掃除をしなければ。
あ、こんなところに服が。
洗濯物でしょうか?
洗濯物はちゃんと指定の場所に出してくださいとお願いしているのに。
ですが、勝手に洗濯はできません。
大事な服かもしれませんからね。
大事な服が書類のあいだから出てくるでしょうか?
……
勝手な判断は禁物。
なにかの事件の証拠品かもしれません。
机の上に置いておきます。
五村に行っていた同僚が、村長の手料理を振る舞われたとの話を聞きました。
……
幸いにして、料理が得意な同僚です。
再現してもらいましょう。
大丈夫です。
いけるはずです。
なにせ、料理大会にも出るのですよね?
村長からの要請で。
材料はエビですか。
わかりました。
用意しましょう。
私たち鬼人族メイド。
一人の幸せは全員の幸せであるはずです。
などと村長と一緒にいた同僚を追い立てていたら、村長が私たちにも手料理を振る舞ってくれました。
そんな、日頃の感謝だなんて……
ありがとうございます。
そして、言わせてください。
さすが村長です。
更新が乱れるのは、体調不良等ではありません。
ご心配なく。




