表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
583/978

特殊部隊


 早朝。


 五村ごのむら住人より警備隊に通報。


 事件発生を確認。


 警備隊員五人が現場に急行するも、解決にいたらず。



 昼。


 追加で警備隊員が十三人送られ、さらに現場近隣住人による協力を得るも、解決に至らず。


 この段階でヨウコに連絡が入るが、警備隊の行動を追認するだけに留まる。



 夜。


 これまで七つの作戦が実行されるも、すべて失敗。


 手詰まりであると警備隊は判断、ヨウコに判断をあおいだ。


 判断を仰がれたヨウコは悩んだ。


 優先すべきは、対処後の村長の感情。


 村長の性格を考え……


 判断を村長に放り投げた。




「五村の下水道に子犬が落ちて、脱出できないでいる?」


 俺は夕食のあとで、ヨウコからそう報告を受けた。


 現場は五村のふもと


 住居と店舗がそれなりに多い場所。


 子犬が落ちたのは雨水などを下水道に誘導するための穴で、普段はされているはずのフタが外れていたらしい。


 穴が垂直ではなく、斜めであったことから、子犬は三メートル下に落下するも幸いにして生存。


 ただ、穴は人が降りられるほどのサイズではなく、また明かりも届かないので子犬を視認できていない。


 生存は鳴き声だけで判断。


 多数の手を打つも救助は難航。


 現在は最終段階。


 子犬救出のために住居と下水道を破壊するか、それとも子犬を見捨てるか。


「子犬が自力で脱出する可能性は?

 穴は斜めなんだろ?」


「垂直ではないだけだ。

 子犬が自力で登るのは厳しいと思われる」


「魔法でなんとかは?」


「敵対勢力による破壊活動防止のために、下水道は対魔法処理がされている。

 不可能だ」


「ヨウコが狐の姿になって潜り込むのは?」


「残念ながら、一番小さくなっても進入は難しい」


 ヒトエなら可能かもしれないが、見えない場所に送り込むのはヨウコが嫌がっている。


 俺もヒトエに危険なことはさせたくない。


 うーん。


 確かに判断がむずかしい。


 これまで警備隊がやった救助作戦を確認するも、俺が思いつくようなことは全部やっている。


 仕方がない。


 問題ない場所から穴を掘って救助に行くのが無難だろう。


 俺なら掘れる。


「ところが、そうもいかない」


 俺の意見はヨウコに否定された。


「時間がない。

 下水道を設計した者の話では、雨が降れば子犬のいる場所は水没するそうだ」


「穴から雨が入らないように……って、そうじゃないのか?」


「うむ。

 雨が降れば下水を通る水量が増える。

 そうなったとき、下水の受け入れ量を増やすための貯水槽が子犬のいる場所だと想定されている。

 そして、夜中からは雨が降る」


 それを早く言ってほしかった。


 のんびりしている暇はない。


 行動開始だ。


「住居を壊すか?」


 ヨウコが確認してくるが、それしかないだろう。


「……わかった。

 急ぎ手配しよう」


 頼む。


 俺がそう言って立ち上がったところで、俺の肩に手……ではなく、足を置くザブトン。


 どうした?


 疑問に思う俺の前に遠慮がちに出てきたのは、ザブトンの子供たちだった。


 ……


 俺はヨウコをみる。


 ヨウコは頷いたあと、手配すると言って五村に戻った。




 深夜。


 雨がぽつりぽつりと降り始めたころ。


 警備隊しかいない現場に到着する。


 住人は避難させた。


 この場にいるのは、警備隊以外では俺とヨウコ。


 それと、拳大サイズのザブトンの子供たちが七匹。


 今回の子犬救助作戦のために編成された特別部隊だ。


 問題はなにもない……わけではない。


 ザブトンの子供たちをみて気絶する警備隊員が続出だ。


 そんなに怖くないのに。


 よしよし。


 落ち込まなくていいぞ。



 気を取り直して作戦開始。


 作戦はシンプルで、ザブトンの子供たち七匹が穴に突入し、子犬を確保して戻ってくる。


 それだけだ。


 なので、俺は穴に飛び込んでいくザブトンの子供たちを見守る。


 ちなみに、気絶した警備隊員はヨウコの意見でそのままに。


 起こしたら、またうるさいからだそうだ。


 すまない。



 少しして、穴の中から鳴き声が聞こえる。


 子犬の鳴き声っぽいが……あれ?


 ちょっと獰猛どうもうじゃないか?


 子犬なら、もっと甲高い声で鳴くと思うのだが?


 疑問に思っていると、穴の中から爆発音が聞こえてきた。


 どういうことだ?


 ザブトンの子供たちが戦っているのか?


 子犬が抵抗したにしては、激しすぎる。


 俺がどうしたものかとヨウコと相談していると、ザブトンの子供たちがでてきた。


 七匹。


 よかった。


 全員、無事だ。


 そして、そのザブトンの子供たちの後ろに糸で巻かれて引き上げられてきたのは……


 なんだ?


 子犬だが、頭が二つある。


 オルトロスという魔獣だと、ヨウコが教えてくれた。


 なるほど。


 子犬が街中に紛れ込むほど、よくいるのかな?


「そんなわけがあるか。

 インフェルノウルフに比べれば劣るが、オルトロスもそれなりに危険な魔獣だ。

 何者かが持ち込んだのが逃げ出し、穴に落ちたと考えるのが自然だ」


 そうか。


「オルトロスの子を五村に入れたという報告を、我は受けておらん。

 つまり、ここに対する敵勢力の仕業と考えるべきであろう。

 ……許さん」


 ヨウコが怒っている。


 その怒っているヨウコの前に、糸で縛られた男性が五人ほど落とされた。


 上をみると、屋根に半畳サイズのザブトンの子供たち、首吊りスパイダーがずらりと並んでいた。


 つまり、今回の事件の犯人を捕まえてくれたと。


 ありがとう。


 だが、五村で行動するのは……ヨウコがこっそり許可してたのね。


 隠密特殊部隊なんだ。


 かっこいいじゃないか。


 救出作戦に参加したザブトンの子供たちが、首吊りスパイダーたちに足をふっていた。




 首吊りスパイダーたちに捕まえられた五人は、他国からの侵入者だった。


 オルトロスの子を密かに五村に持ち込み、内部で飼育。


 大きくなったら暴れさせる目論見だったと。


 気の長い話だ。


 そして、どこかで聞いたような気も……


 ああ、ティゼルたちが関わった王都の事件。


 あっちはリッチだったな。


 飼育したわけではないだろうけど。


 ……


 これは魔王かビーゼルに報告して、各街をチェックしたほうがいいんじゃないか?


 ほかの場所もやられている可能性が高い。


 シャシャートの街が心配だ。




 シャシャートの街でも同じことがあったが、ミヨが解決していた。


 凄いぞ。


 だが、報告はしてほしいなぁ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 571話"野球観戦"にてザブトンがヨウコにした話は、ザブトンの子供たちを五村に行かせてみる事だったんだろうなー。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ