勝利した魔王
上空を飛ぶヘルゼの背中から、リアたちハイエルフがパラシュート降下。
降下したあと、パラシュートを素早く回収し、リアの降下位置に集合。
個々に武器を持ち、砦への攻撃を開始する。
砦は三日ぐらいで作られた簡易なものだが、ラミア族や山エルフたちが立て篭もっている。
……
武闘会のオープニングだが、なにかの軍事訓練っぽくないかな?
盛り上がってるけど。
「夜にやれば勝てたのに……」
所定時間以内に指定場所に旗を立てられなかったので、リアたちの判定負けとなった。
悔しがってる。
逆に、勝利したラミア族と山エルフたちは歓喜している。
それはいいが、砦の撤収だ。
耕すぞー。
壊されたくない物を持って、移動開始。
武闘会が始まった。
オープニングが長かったので、昼ぐらいから開催。
今回は、いつも通りの一般の部、戦士の部、騎士の部、英雄の部と呼ばれる模範試合に加え、王の部が行われる。
王の部は、模範試合は一回しか戦えないから、消化不良という意見を取り入れた結果でできた部だ。
当初は全員が一斉に戦うバトルロイヤル形式だったが、危ないので普通のトーナメント形式にした。
ドラゴンたちが軒並み王の部に移動したので、英雄の部はひょっとして中止……ああ、クロの子供たちやザブトンの子供たちが頑張ってくれる?
ありがとう。
砦の撤収のあとは、俺は定められた席で試合を観戦。
楽だけど、手持ち無沙汰。
とくに試合の合間が。
いつもならルーやティアが相手をしてくれるのだけど、二人は妊娠中のハクレン、ラスティの代わりに試合の審判として頑張っている。
クロとユキも、今回は王の部に出るということで準備に行っている。
なので俺の横には誰もいない。
ん?
ザブトンの子供たちがいた。
試合に出ない拳ぐらいのサイズの子供たちだ。
よしよし。
アルフレート、ウルザ、ティゼルは武闘会に合わせて戻ってくると思ったのに、戻ってこなかった。
なにやら、忙しいらしい。
それはいいことだが、ちょっと寂しい。
手紙では冬には戻ると書かれているので、それを信じて待つ。
ゴール、シール、ブロンの三人も同じく忙しくて戻ってこなかった。
奥さんを連れて戻ってくる計画もしていたのに、残念だ。
まあ、ゴールたちは奥さんの都合もあるしな。
俺もわがままを言えない。
ただ、魔王国の王都と、大樹の村の距離がもう少し近ければなぁと思わずにはいられない。
ビーゼルや始祖さんの転移魔法を使わなければ、王都から転移門のある五村まで一ヶ月はかかるらしいからな。
なんとかならないものか。
そこで思いつくのは、五村用に考えているモノレール。
これを五村からシャシャートの街、そしてシャシャートの街から王都へと繋ぐことを考えた。
文官娘衆たちに相談したところ、かなり難しいが実現は可能。
しかし、木製レールが盗まれるのでまともに運行はできないだろうとのこと。
そういえば、死の森の木は高価だった。
なら、普通の鉄のレールにすれば……
転売しやすいから、木製レールよりも派手に盗まれるそうだ。
悲しい現実だと思ったのが昨日。
武闘会の準備に忙しい文官娘衆たちに、迷惑をかけてしまった。
反省会で謝っておこう。
そうそう、常連だった始祖さんとフーシュも不参加。
新しくできた国の後援で忙しいらしい。
例のゴールゼン王国が滅んでできた国か。
……
頑張ってもらいたい。
試合は順調に進み、一般の部、戦士の部、騎士の部の一回戦が終了。
オープニングで時間がかかったので、今日はここまで。
宴会になる。
翌日。
騎士の部の二回戦以降、英雄の部と呼ばれる模範試合、王の部が行われた。
騎士の部の優勝は、キアービット。
昔に比べて、かなり安定した強さだと思う。
素人目の判断だけど。
英雄の部と呼ばれる模範試合は、クロの子供たちやザブトンの子供たちの試合のほか、ルーとティア、グランマリアとラズマリアの戦いが行われた。
ルーとティアの戦いはいつも通り。
勝ったというか、最後まで立っていたのはティアだった。
グランマリアとラズマリアの戦いは……
たぶん、力はグランマリアのほうが上なんだろう。
しかし、試合運びは完全にラズマリアが握っている。
そのため、グランマリアは力を発揮できず、苦戦しているという流れだ。
ラズマリアによる指導試合だと、クーデルとコローネが言ってた。
勝利はラズマリア。
娘に勝利を譲ったりはしないのね。
王の部。
魔王が問答無用で参加になっていた。
魔王はなにも言わない。
ただ集中していた。
組み合わせの抽選に備えて。
この王の部に、ピリカが参加すると聞いて俺は驚いた。
マークの推薦だそうだ。
先々代の剣聖ぐらいの強さになっているので心配ないと、マークは自分の席を譲った。
……
まさかと思うが、ピリカを身代わりにしたわけじゃないよな?
違う?
それならいいが……額の汗が凄いぞ。
あー、勝っても負けても立場的にいろいろと問題があると。
もっと問題がありそうなのが参加していないか?
まあ、いいか。
推薦したからにはピリカのサポートを頼むぞ。
王の部への参加者はクロ、ユキ、ザブトン、ドース、ライメイレン、ギラル、グーロンデ、ドライム、グラッファルーン、ドマイム、クォン、クォルン、セキレン、魔王、ピリカ、ヨウコ。
なんとか十六人になるように調整された。
夫婦参加が多いが、組み合わせは公平に。
クジに全てを任された。
見所は……やはりピリカ。
一回戦は魔王とだった。
魔王、めっちゃ生き生きしていた。
そして強い。
だが、その魔王を相手にいい勝負をしているピリカ。
その戦いをみれば、マークの推薦は間違いではなかったと思う。
結果は魔王の勝利だったけど。
「痛い痛い痛いっ、あの剣、めっちゃ痛かった」
勝利した魔王、笑顔で治療中。
そういえば、ピリカの剣はウィルコックスが作った剣だったな。
ウィルコックスの剣作りをみて、ガットがかなり落ち込んでいた。
翌日には死ぬほど剣を作っていたけど。
あと、ウィルコックス。
あの剣、グーロンデの鱗を素材にしただろ?
いや、素材は好きに使っていいって言ったけどな。
魔鉄粉とかのことだと思ったんだよ。
怒らないし、いまさら取り上げたりもしないさ。
ただ、グーロンデの鱗でなにか作るときは一言たのむ。
グッチが困った顔をするからさ。
平和が一番だろ。
王の部の優勝はライメイレン。
ヒイチロウの応援が効いたようだ。
クロはクォルンに、ユキはドマイムに勝利したが、次の戦いでクロはギラルに、ユキはライメイレンに負けてしまった。
よしよし。
大きな怪我がなくてよかったぞ。
ピリカの治療のために世界樹の葉を何枚か用意していたが、治癒魔法で大丈夫だった。
無駄にはできないから、あとでルーに渡そう。
あとはいつも通りの宴会と、自由参加のフリーバトル。
今年の武闘会も盛り上がったと思う。
フリーバトルで、ピリカはガルフに挑んだが勝てなかった。
「どうして?」
「相手の行動の先読みは基本中の基本。
それを数日前に覚えた者に、後れを取るわけがないだろう」
「つまり……」
「まだまだ強くなれるということだ」
「ですよね!」
「あと、試合を見ていたが、決め技が足りないぞ」
「決め技……
頑張ります!」
ガルフの師匠の地位は守られたようだ。
騎士の部の上位なら、魔王となら勝負になります。
なので、騎士の部下位のガルフでも、魔王となら勝てないまでも勝負にはなります。
つまり、覚醒ピリカとも戦える。
じゃあ、ガルフがドラゴンたちと戦えるかというと、相性的に勝ち目がありません。
ピリカも同くドラゴン相手では勝ち目がありません。
クジは、ピリカにも微笑んだのです。
●わかりにくい例え
魔王 戦闘力1000~2500
ピリカ 戦闘力100~150
+偽剣聖(相手が人系の場合+50 人系以外の時-50)
+剣聖(相手の武器が剣の場合+100)
+対未来眼(未来眼用フェイントが効果を発揮した場合+150)
+対闇属性剣(相手が闇属性を持っている場合+300)
+覚醒(マイナス要素を全て打ち消し)
ガルフ 戦闘力150~300
+対未来眼(未来眼用フェイントが効果を発揮した場合+150)
+対対未来眼(未来眼用フェイントを使う相手の場合+100)←ピリカに勝てる要素
+決め技(勝負判定時、一度だけ+100)
兎 戦闘力200
+未来眼(未来眼が効果を発揮した場合+500)
一般人 戦闘力1~3
明日(火曜日)の更新はお休みします。
すみません。




