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変なトウモロコシと夏祭りの思い出


 夏の収穫分で、トラブルが発生した。


 食用トウモロコシの畑で収穫した一部のトウモロコシのつぶが小さいのだ。


 しかも硬い。


【万能農具】で作った畑では初めてのことで、俺も驚いた。


 原因は……


 ここでドラゴンの誰かがブレスを吐いた?


 それとも、ニュニュダフネの誰かが栄養を奪った?


 シンプルに誰かが魔法を使って、影響が出た?


 うーん、ありえない。


 村の住人で、そんなことをする者はいない。


 となれば、次に疑うのは病気だが……


 トウモロコシ畑の一部だけというのが変だ。


 病気なら全部がかかるんじゃないか?


 それに粒が小さいだけで病気っぽくはみえない。


 ……あれ?


 よくよく観察してみれば、普段のトウモロコシと種類が違う?


 ……


【万能農具】でトウモロコシ畑を作るときに、俺が余計なことを考えたか?


 ありえる。


 となれば、なにを考えたかだが……


 覚えていない。


 畑を作ったの、二ヶ月以上前だしな。


 酒用のトウモロコシではないのは、わかる。


 あと、俺が考えそうなことは……




 俺はトウモロコシを乾燥させた。


 そして、芯から粒を外す。


 うん、この外見。


 間違いない。


 俺は野外にある調理場で、底の深い鍋の底を火にかけてバターを溶かす。


 溶けたバターを鍋の内側に広げ……乾燥させたトウモロコシの粒を投入。


 そしてふたをして、火にかけ続ける。


 しばらくして、鍋の中から大きな音がした。


 予想通り。


 このトウモロコシは、ポップコーン用のトウモロコシだ。



 実はかなり昔、普通のトウモロコシからポップコーンを作ろうとして失敗したことがある。


 ポップコーンは、それ専用の種類のトウモロコシじゃないと駄目だというのは知っていたが、忘れていた。


 それほど食べたいわけじゃなかったので、それっきりだったが……


 トウモロコシ畑を作るときに、俺がそれを思い出したのだろう。


【万能農具】、ありがとう。


 そして、ポップコーンができる音に驚いて集まったみんな。


 すまない。


 新しい料理……お菓子だ。


 ああ、味付けはまだだから、適当に塩を振るように。


 鍋一杯のポップコーンを、みんなで食べた。




 大人たちからは新食感だと好評だ。


 子供たちからは大絶賛。


 クロたちは……腹に溜まりにくいと難色だな。


 粒の皮が歯のあいだに挟まるのもイマイチか。


 ザブトンの子供たちは、喜んで食べてる。


 そして、お菓子にうるさい妖精女王からは、問題はないので追加を作るように言われた。


 塩味でもいいのね。


 いや、甘いの以外も食べるの知ってたけど。


 妖精女王は少し前まで大人の姿で固定されていたが、いまでは元に戻っている。


 大人バージョンの姿に慣れたところだったので、ちょっと寂しい。


 いや、行動は一緒だからそれほどでもないか。



 ポップコーンの評判は悪くないが、問題もある。


 日持ちはしない。


 乾燥すると、美味しくなくなる。


 作ってすぐに食べないといけない。


 つまり、作り置きができない。


 祭りや武闘会のイベントで、提供するのが無難かな。


 幸いにも、次の武闘会で出せる程度には、ポップコーン用のトウモロコシがある。


 問題は今後だが……


 賛成多数で、ポップコーン用のトウモロコシ畑を作ることになった。




 ポップコーン用のトウモロコシ畑を作ったあと、俺は鬼人族メイドが作ったポップコーンをつまみながら、少し前に行われた夏の祭りを思い出す。


 今年はレース。


 徒競走だ。


 種族別、種族混合と色々な組み合わせで行われた。


 俺は盛り上がるかちょっと不安だったが、大丈夫だった。


 みんな勝負ごとが好きだな。


 レースで名勝負だったのは、やはりケンタウロス族と馬。


 途中まではケンタウロス族がリードしていたのだが、最後の最後で馬が逆転した。


 負けたケンタウロス族は、かなり落ち込んでいたなぁ。


 馬は満足気だったけど。


 あとは、巨人族やミノタウロス族の徒競走は遅いけど、迫力があった。


 クロの子供たちによる競走は……混乱だったな。


 普段はちゃんと順番を待てるのに、我先にと走りたがった。


 途中参加もいた。


 まあ、楽しかったけど。



 俺が夏の祭りを思い出したのは、牧場エリアで馬たちが走りこんでいるのを目にしたからだ。


 ペガサスも頑張って走っているが、やっぱり翼が邪魔そうだな。


 馬たちが走りこんでいるのは、五村で行われるレースに参加するためだ。


 こっちのレースは、徒競走ではなくちゃんとした馬のレース。


 なんでも、五村、シャシャートの街、その周辺の村々から馬を集め、一番速い馬を決めるそうだ。


 発案、運営はゴロウン商会。


 五村は場所を貸すだけ。


 ただ、速い馬は名誉だということで、こっちの馬たちに声がかかったのだけど……


 自主的に鍛えるとはたいしたものだ。


 あとで果物を差し入れよう。


 ん?


 練習している馬たちを、山羊たちが群れで見ている。


 ……悪い顔だ。


 つまり、悪戯いたずらをする。


 あ、群れで馬たちが走っているコースに乱入した。


 まったく山羊たちは……


 練習の邪魔はよくないぞ。


 そう思ったのは俺だけじゃなかった。


 牛が五頭、横に並んだと思ったら山羊の群れに突進。


 山羊たちが追い散らかされた。


 それを見て豚たちが笑っている。


 平和だな。


 ところでユニコーンよ。


 いつのまにかやってきて、俺の持っているポップコーンの入ったバケツを奪うのはどうなんだ?


 ユニコーンは俺から逃げるように走り出した。


 うーん、速い。






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― 新着の感想 ―
[一言] 子ザブトンほんと可愛い
[一言] 村長「今度はカラメルをまぶしたポップコーンだ」 妖精女王「……………………頼む、毎日作ってくれ」
[気になる点] 読み返して気になったので、、 >ポップコーンの評判は悪くないが、問題もある。 >日持ちはしない。 >乾燥すると、美味しくなくなる。 ポップコーンって周囲の水分を吸って美味しくなくなる…
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