木道計画
村の住人が収穫を進め、俺はその横で畑を作っていく。
ピリカが季節感のない収穫に驚きながらも手伝ってくれた。
ありがとう。
修行はどうだ?
最近は、アイギスと鷲も参加しているそうじゃないか。
戦闘のコツ?
いや、俺に聞かれても……
えーっと……
狩りだと考えれば……相手をよく見ることじゃないかな。
うん、観察が大事。
素人意見で申し訳ないが。
五村での地下商店通りの建設が順調で、予定よりもかなり早く完成しそうな勢いだ。
ただ、問題もある。
交通問題だ。
それなりに大きい道を用意したつもりだが、建設資材の搬入で渋滞が発生してしまった。
地下商店通りが完成すれば解消するだろうが、地下商店通りへの商品搬入で同じことが起きたらどうしようと思う。
対策を考えたいが、道を広げたいと思っても五村の土地事情ではそれも難しい。
地下商店通り自体が、土地問題の対策だしな。
しかし、搬入路か。
うーん、甘く考えていた。
どうしたものか。
元がトンネルだから、出入り口が二箇所なのが問題なのか?
二階、三階、四階部分からの出入りは、お客用にしているが……
三日ほど考えて思いついた。
地下鉄。
地下商店通りの一階部分を駅にして、小さい山である五村の中腹をぐるっと回る地下鉄を作る。
駅の分だけ、搬入路が増えないだろうか?
近くにいたプラーダが問題点を挙げてくれた。
「地下鉄ってなんですか?」
……
地下商店通りの模型を見せる。
地下鉄というか鉄道とは、一階にあるレールとトロッコのことだ。
鉄でできた道なので鉄道。
これを地下商店通りだけでなく、五村の中腹を……冷静に考えると、無茶か?
レールにする鉄の確保や加工に問題がある。
また、地下で脱線などが起きたら困る。
動力問題もある。
よし、廃案。
「動力はゴーレムでどうでしょう」
いつのまにか、山エルフたちがいた。
五村の工房に来ていたのだろう。
「無人で移動させれば、脱線しても人命には係わりませんね」
「以前、廃案になったモノレールにするのはどうです?
あれ、脱線しにくいですし、ゴーレムを動力にするなら多少重くなっても問題ないと思います」
「それだったら、レールを木製にするのはどうでしょう?
大樹の村の周辺の木なら、耐えられます」
問題点が改善される。
一つの問題だけを残して。
「あの木を加工できるのって、村長だけでしょ?
さすがに作業量が多いのでは?
トンネルも村長が掘るんだろうし」
あ、気づいてくれた。
よかった。
「村長なら大丈夫よ!
それに、きっと村長ならどんな困難があってもやる!
やるに決まってる!」
過度な期待は困るなぁ。
……
やるけど。
廃案は撤回。
鉄道計画が立ち上がった。
「あの村長。
木製の予定ですので、鉄道ではなく木道では?」
プラーダの指摘。
なるほど。
木道計画が立ち上がった。
動力ゴーレムの製作。
木製レールの試作。
モノレール用トロッコの試作。
……
はい、武闘会の準備を優先します。
五村にばかり気を遣うのもね。
一村、二村、三村、四村にも気を遣わねば。
まあ、五村以外はそれほど問題を起こさないというのもあるが。
それを言いわけにしてはいけない。
一村。
「問題?
ありませんよ」
二村。
「希望と言われても……」
三村。
「無理に考えるのは違いますよね?
では、大丈夫です」
四村。
「あ、トラブルと言えば、五村に行ってるロクから、常に救助信号が出ているのです。
なにかの間違いだとは思うのですが、五村に行ったときにでも確認してもらえれば……
え?
書類仕事で四苦八苦している?
でも、プラーダはすでに送ったと。
ありがとうございます」
……
よし、武闘会の準備を頑張ろう。
と言っても、俺の準備は優勝者に渡すトロフィー作りぐらい。
今年の部門はどうなるのかな?
文官娘衆たちに確認しておこう。
トロフィー作りは、五日ほどで終わった。
手を抜くわけにはいかないからな。
きっちりと作りこんだ。
あとは名前を彫ったプレートを嵌めれば完成だが、それは武闘会当日だな。
トロフィーと一緒に冠も作った。
冠は参加者の体格が色々なので何回目からか作らなくなったのだけど、希望者が多くて今回から復活することになった。
サイズ違いで何種類かの冠を作るのは少し大変だったけど、喜ぶ顔がみたいので頑張った。
可変式でサイズ調整ができるタイプも考えたけど、玩具っぽくなってしまうからな。
こういったのは豪華であるべき。
……
トロフィーや冠って木製なんだけど、それでいいのかな?
ガットに頼んで金属で作ってもらったほうがよかったかもしれない。
ん?
そんなことはない?
俺の手作りなことに価値があると?
嬉しいことを言ってくれる。
俺の作業を見物していたザブトンの子供たちからの言葉に、俺は自信を持つ。
調子に乗って木を削り、ザブトンの子供たち用の小さい帽子を作って配った。
なかなか似合っているぞ。
だが、これは日除けやファッション目的じゃない。
嬉しいときに上に投げるための帽子だ。
そう。
揃って一斉に投げると、楽しそうでいいじゃないか。
……
別に投げたのをキャッチしなくてもいいんだぞ。
なに?
せっかくの帽子を乱暴に扱えない?
そうかもしれないが、木製だからな。
ちょっと危ない。
布製にすればいいのだろうが、俺にはその技術はない。
俺にできるのは……
麦わら帽子。
俺は小さな麦わら帽子を編んで、ザブトンの子供たちに配った。
季節的には、少し遅いが似合っているぞ。
ん?
これは……ベレー帽っぽいな。
俺の帽子か?
お前たちが作ってくれたのか?
ありがたく被らせてもらおう。
え?
一緒に上に投げる?
ははは。
キャッチできる勢いで投げないとな。
遅くなりました。