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プラーダの得意なこと


 褒賞メダルを財布に隠していたら、その財布ごとギャンブルの負けを払ってしまい流出。


 財布ごと渡した相手を追いかけたけど、その財布は盗まれていた。


 それで諦めることなく、ドライムの巣で仕事をしながら財布を盗んだ者を追跡。


 二年かけて、財布を盗んだ者が所属する盗賊団を発見。


 しかし、すでに財布から褒賞メダルが発見されており、商人に売却されていた。


 そこで、盗賊団に商人から褒賞メダルを取り戻すように命じた。


 その命じられた盗賊団が、オークション会場の外で襲ってきた一団である。


「ということで、いいのかな?」


 俺はグッチがしてくれた説明から、要点だけを抜き出して確認する。


「はい。

 そして、この縛られているメイドが、褒賞メダルを財布に隠し、盗賊団に奪還を命じた愚かなプラーダです。

 殺したいと思って連れてきました。

 どうぞ」


 グッチが怖いことを言う。


 かなり怒っているようだ。


 しかし、俺はそれほどでもない。


 褒賞メダルに関しては、別に外に出しちゃ駄目とは言っていない。


 飾ろうが譲ろうが自由。


 賭け(ギャンブル)のチップにするのだけはめてほしいと言ったぐらいだ。


 今回の件は賭けのチップにしたわけじゃない。


 ある意味、事故だ。


 なので、俺としてはプラーダを罰するつもりはないが、グッチは罰してほしい感じ。


 素直に、俺が問題ないと言ったらどうなるだろう?


 グッチが個人的に罰を与えるだけかな?


 それでもいいが……さっきから、プラーダが俺にすがるような目を向けている。


 ここはグッチに確認しておこう。


「プラーダの罪は?」


「盗賊団を使い、今回の事件を引き起こしました」


 なるほど。


 確かに。


 商人から取り返すには、それが手っ取り早かったのかもしれないが、盗賊団に頼んだのが問題と言えば問題か。


 しかし、食事中にやってきた警備隊の部隊長から聞いた話では、盗賊団は殺して奪うタイプではなく、通行料と称して金をせしめるタイプとのこと。


 オークション会場を出たところで襲ってきたのも、落札価格から金での交渉は無理と判断しての暴挙だしな。


 うーん。


 どうしよう。


 俺は周囲に助けを求めるも、誰も助けてくれない。


 それどころか、目を逸らす始末。


 関わりたくないって感じだ。


 俺も関わりたくないんだが?


 仕方がない。


「プラーダには労働をそう。

 期間は一定額を稼ぐまでだ」


「それでよろしいのですか?」


 グッチが確認するが、それでかまわないと伝える。


「プラーダもそれでかまわないか?」


 俺の確認に、プラーダは首を大きく縦に振る。


 ん?


「ああ、すみません。

 喋れないように魔法で封じていたので」


 グッチが指を鳴らすと、魔法が解けたのかプラーダが感謝の言葉を述べていた。


 うん。


 感謝の言葉のあいだに、褒賞メダルが欲しいとの要望を組み込まないように。


 多分だけど、グッチが厳しいのは、プラーダのそんなところだと思うぞ。



 さて、プラーダに労働を科すと言ったが……


 なにをさせればいいだろうか?


 罰として働かせるとしても、苦手分野で働かせても効率が悪いだけ。


 プラーダは得意なこととかあるのかな?


 グッチに確認してみた。


「プラーダが得意とすること……うーん」


 凄く悩まれた。


 いや、三日ほど時間がほしいと言われても。


 そんなに駄目なのか?


 グッチが悩めば悩むほど、プラーダが泣いているぞ。


「そうだ。

 書類仕事ならできます!」


 グッチがやっと見つけたとばかりに言った。


 記録とか情報の編集はやれるそうだ。


 いや、得意と言ってもいいらしい。


 ドライムの巣では書類仕事は少ないので、活躍の場がなかったのですぐに思い出せなかったとグッチが謝った。


 そして、グッチのその言葉を切っ掛けに、食事会参加者によるアピールが始まった。



「働く場所は魔王城ではどうだろう?

 月に銀貨三枚出そう」


 スタートは魔王。


五村ごのむらは、月に銀貨三枚に加え、朝晩の食事を食堂で提供することを約束しよう」


 それに、ヨウコが乗せてくる。


「ゴロウン商会では、食事と宿の用意もしましょう。

 月に銀貨三枚と大銅貨五十枚」


 マイケルさんも乗せた。


「銀貨五枚。

 食事と宿は……自費で」


 ティゼルも参加するの?


 上げ幅は常識の範囲かな。


 あれ?


 フラウも参加したい?


 確かに書類仕事ができる者は欲しいが……


 アピールは白熱したが、グッチがストップをかけた。


「えー、いにしえの契約により、魔王国で働くのは少し問題が……」


 契約内容を詳しくは喋れないが、グッチの判断では五村で働くのがギリギリだそうだ。


 つまり、ヨウコとフラウの一騎打ちになった。


「銀貨三枚。

 食事は夜だけ」


「銀貨二枚と大銅貨五十枚。

 食事はなし」


 先ほどと違い、どんどんと値が下がっていく。


 プラーダがどうして? と俺を見るが、俺にもわからない。


 ルーが説明してくれた。


「競う相手がいなくなって、罰で働かせるのよ。

 高値はつけないでしょう」


 なるほど。


 とりあえずプラーダ。


 どっちにするか、早く決めたほうがいいと思うぞ。




 結果。


 プラーダは五村で働くことになった。


 月に銀貨一枚。


 寝る場所と食事は支給。


 扱いはヨウコの部下。


 当面は裏方で頑張ってもらうらしい。


「ところで村長。

 プラーダは、どれぐらい稼げば解放されますか?」


 グッチが確認してきたので、俺は答える。


「褒賞メダルが切っ掛けだからな。

 褒賞メダル一枚分、稼いでもらおう」


 銀貨千枚。


 ……


 月に銀貨一枚だから、一年で銀貨十二枚。


 えーっと、八十三年とちょっとか。


 さすがにかわいそうだな。


 適当なタイミングで、報酬を上げるように検討しよう。


 まあ、働き振りを見てからだな。


 俺はそんなことを考えながら、食後の飲み物を楽しんだ。







 古の悪魔プラーダ。


 別名、美術品を収集する悪魔。


 彼女から美術品を奪うのは簡単だ。


 ギャンブルを申し込めばいい。


 彼女はギャンブルが好きだが、めっぽう弱いから。


 だが、勝ったからと安易に美術品をせしめてはいけない。


 美術品をせしめると、彼女は取り戻そうとあらゆる手段を講じてくる。


 とても危ない。


 では、どうすればいいか?


 残念ながら美術品は諦めよう。


 彼女から奪うべきなのは、美術品ではない。


 彼女が持つ知識だ。


 ギャンブルで勝ったあと、美術品の代わりに知識を求めれば彼女は喜んで与えてくれる。


 お金に関する知識を多く持っていることから、彼女を金貨の悪魔と呼ぶ者がいるとかいないとか。


                                <悪魔大辞典より>



遅くなって申し訳ありません。

そして、いまだに生活リズムが戻っていません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 活躍して褒賞メダルもらっても秒で村長が作った物と交換してる姿が見える
[一言] 古代悪魔族は魔王国に所属しないという契約を交わしてるということ 例え罰でも書類仕事は所属してるも同然だからアウト ティゼルも王都で実質政治に関わってるのでアウト 表向き大樹村&1~5村は魔…
[気になる点] バカで申し訳ないけど、ここいまいちよくわかってない。 値段が下がるのは安く書類仕事ができる人をってことなんだろうけど。なんでグッチが魔王国で働くのは無理ってなって、一対一になった途端に…
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