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変わった馬


 夏。


 俺は牧場エリアの馬たちにスイカを差し入れる。


 俺としてはスイカは冷えているほうがいいのだが、牧場エリアの馬たちは常温のほうがいいらしい。


 なので畑からそのまま持ってきたスイカを馬たちの前に置く。


 馬はスイカを皮ごと食べるので、切る必要はない。


 ほかの馬も集まってきた。


 俺が運んだスイカは二つだが、ザブトンの子供たちが手伝ってくれたので数はある。


 競わずに食べるように。


 ザブトンの子供たち、手伝ってくれてありがとう。


 クロとユキは転がすのが精一杯だったが、気持ちは嬉しい。


 ありがとう。



 俺はスイカを食べている馬たちを数える。


 全部で十五頭。


 うち、二頭がユニコーン。


 毎年、数頭が生まれているが、あまり数が増えたように思えないのは五村ごのむらの牧場に移動させているから。


 ずっと牧場エリアにいたらいいのにとおもうが、同じ場所に同じ馬ばかりを一緒にしておくと、血が濃くなり過ぎてよろしくないそうだ。


 なので、出て行くだけでなく新しくやってくる馬もいる。


 ただ、一番最初に村にやってきた馬とそのパートナーの牝馬は、ずっと牧場エリアから動かない。


 牧場エリアのぬしなので、それを尊重してだそうだ。


 馬の管理は獣人族の女の子がやっているが、なかなか大変そうだ。



 ……あれ?


 馬とユニコーンは合わせて十五頭だと報告を受けているのだが、変だな。


 俺は改めて数を数える。


 十六頭いる。


 一頭、数え間違えたか?


 それとも、また野生のユニコーンがやってきたのかな?


 違った。


 一頭、明らかに違うのがいる。


 見た目は馬だが、背中にそれなりのサイズの翼を生やしている。


 ペガサスだ。


 そのペガサスは俺の視線を気にせず、スイカに夢中だ。


 それはかまわないが……畑を荒らしたりはしないだろうな?


 馬がしっかりとルールを教えたから、大丈夫と。


 なるほど。


 ペガサスの体や翼が汚れているのは、それが理由かな。


 怪我はしていないな。


 なら、よし。


 あとは……牧場エリアを管理している獣人族の女の子に報告をしておこう。




 ペガサス。


 空を飛ぶ馬。


 飛ぶときは翼を羽ばたかせているが、翼で飛んでいるのではないらしい。


 飛ぶ速度は馬が地上を駆ける速度と同じぐらい。


 飛べる高さは、個体差があるけどだいたい二十メートルぐらい。


 普通に走ることも可能だけど、背中の翼が邪魔なので馬よりも遅いらしい。


 天使族のように、翼の出し入れはできないのか。


 主に人間の国で繁殖しているらしく、魔王国では珍しい。


 なので、見物客がやってきた。


「あれがペガサスですか」


 まずは文官娘衆。


 どこそこで見たとか、敵が使っていたとか、話が盛り上がっている。


 盛り上がるのはいいが君たち、水着でうろうろしないように。


 プールに戻りなさい。



 次にやってきたのが、エルフたち。


「味はどうなのでしょう?」


 素直な感想だが、ペガサスに聞こえるように言うのはやめてやってくれ。


 怯えている。


 あと、君たちも水着でうろうろしないように。



 その次が、鬼人族メイドたち。


「乗って飛べるのでしょうか?」


 なるほど、どうなのだろう?


 その疑問に答えてくれたのは、ルー。


「人間の国では、ペガサス騎兵という兵種があるわよ」


 へー。


「ただ、ペガサスはそれほど力持ちでもないし、長時間飛べないから式典とかでの賑やかし用ね。

 魔王国領こちらでペガサスを見るのは珍しいけど、人間の国から分捕ったのかしら?」


 そう言えば、このペガサスはどこから来たのだろうか?


 死の森の上空を飛んで、ここまで来たのかな?


 違った。


 五村から送られてくる馬に紛れて、ここにやってきたようだ。


 五村を繋ぐ転移門の管理をしているフタの記録に、ペガサス一頭と書かれていた。



 五村側に事情を聞くと、五村の牧場管理者から謝罪の手紙が届いた。


 手紙の内容を要約すると……


“ペガサスなんて珍しい馬は、村長の馬に違いないので送りました”


 そういう事情か。


 納得。


 ただ、手紙の九割が謝罪なのはどうにかならないかな?


 読みにくい。


 あと、俺ってそんなに怖いかな?


 それぐらいで怒らないぞ。



 ペガサスがやってきたルートはわかったが、持ち主はどこにいるのだろう?


 野生のペガサスが五村に混じっただけなら問題がなくていいのだが、どこかの商人や貴族の持ち物だと面倒だ。


 ヨウコに調べてもらおう。




 三日ぐらいで報告が届いた。


 シャシャートの街に輸入されたペガサスの一頭が脱走して、行方不明らしい。


 色と模様から、村にいるのはその脱走したペガサスのようだ。


 ペガサスを輸入したのはゴロウン商会なので、さっそく連絡をと思ったらマイケルさんが五村にやってきていた。


 ほかのペガサスを連れて。


 輸入したペガサスは全部で六頭。


 魔王国の貴族に売るための商品だったようだが、売り先は決まっていないようなので、俺が先に村に到着した一頭を含めて全て購入した。


 子供たちが、ペガサスを気に入って取り合っているからだ。


 乗って飛べるのがいいらしい。


 さすがに子供だけで乗せるのは危ないので、獣人族の女の子たちが同乗しているが……


 ルーが言ってたように、ペガサスは疲れやすいようで長時間飛べず、なかなか順番が回ってこない。


 もっとペガサスをという声が大きくなっていたので、ちょうどよかった。


 あと、俺も乗りたい。


 乗ろうとすると、馬やケンタウロス族たち、あと天使族がねるので、まだ乗れていないんだよなぁ。





お待たせしました。

更新を再開します。

これからも、異世界のんびり農家をよろしくお願いします。


レビュー、感想、誤字脱字指摘、ありがとうございます。

励みになります。



天使族が拗ねるのは「空を運ぶのは私たちの役目」と思っているからです。


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― 新着の感想 ―
[一言] >乗ろうとすると、馬やケンタウロス族たち、あと天使族が拗すねるので、まだ乗れていないんだよなぁ。 心の広さが大事って、ハッキリ分かんだね。
[良い点] スイカ運びを手伝ったクロとユキとザブトンの子供たち、お気に入りの麦わら帽子を着けてたんだろうなー。 [気になる点] 文官娘衆とエルフたち、プールと牧場エリアは離れてるのにわざわざ来るとは、…
[気になる点] もしユニコーンとペガサスの雑種が産まれたら、どうなるんだろう?
感想一覧
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