ゴーレムの活用
ゴーレムは魔石を動力に、あらかじめ仕込まれた命令を実行する。
魔道具は魔石を動力にしつつ、特定の魔法を発揮する道具のことを示す。
なので明確にゴーレムと魔道具は別物だが、人によっては一緒にしている。
一緒にしても、とくに問題はない。
自動販売機ゴーレムに興味がある人は会議室に集合。
そう言ったら、予想外に大勢の人が集まった。
山エルフたちは当然として、次に多いのは文官娘衆。
獣人族の女の子や、ハイエルフたちの姿も多い。
ドワーフのドノバン、ダガ、ガルフ、ドライムの姿もある。
ルー、ティア、アンもいるが……
自動販売機ゴーレムに、興味があるのか?
違う?
俺が自動販売機ゴーレムに夢中になっているから参加した?
それでもかまわない。
考える頭は多いほうがいいからな。
クロやユキ、ザブトンの子供たちも大勢いる。
よろしく頼むぞ。
自動販売機ゴーレムは五村での窃盗騒ぎのあと回収して、村の屋敷に設置しておいたから知らない人はいないと思う。
販売する商品は宝石から、竹筒にお酒を入れて栓をしたものに変更している。
ただ、村では硬貨というかお金が使われていないから、自動販売機ゴーレムの前に硬貨の入った箱を置いて、そこから硬貨を取って自動販売機ゴーレムに投入するスタイル。
誰でも購入できるので、セットしておいた二十個の竹筒はあっという間に売り切れた。
……
売り切れたと言っていいのかな?
持って行かれたと考えるべきだろうか?
まあ、そのお陰で自動販売機ゴーレムの存在をアピールできたし、ザブトンの子供たちが真似をすることもできたと前向きに考えよう。
まず、俺はスイカを切る。
予想より集まった数が多かったので、用意していたスイカが足りないのだ。
スイカを予め多めに冷やしておいて、よかった。
ザブトンの子供たちもどうぞ。
クロ、真ん中の甘い部分だけを食べて満足するんじゃない。
もう少し、食べるように。
昔は、皮ごと食べていたのにグルメになったものだ。
スイカが行き渡ったところで、本題を進める。
俺としては、自動販売機ゴーレムの設置場所と販売する物の相談をしたかった。
だが、まずは文官娘衆たちからの強い要望があった。
自動販売機ゴーレムを構成している一部であるスライダー式硬貨計算機。
その性能向上と量産。
性能向上は、流し込む硬貨量を多くしても対応できるようにとのこと。
これに関しては、硬貨の受け口を大きくし、詰まり防止にかき混ぜる装置をつけることで解決する。
いや、解決していた。
山エルフたちが、もう作っていたから。
なので、あとは量産するだけなのだが……
百とか二百とかの数が聞こえてくる。
そんなに需要があるだろうか?
大樹の村と、五村、シャシャートの街にそれぞれ一台でいいんじゃないか?
そんなことはないと力説された。
なんでも、商人の仕事で大事なのが硬貨のチェックと数えること。
硬貨を取り扱うので信用の低い見習いにはさせられず、それなりに立場がある人がすることになるのだが、当然ながらそういった人は忙しい。
スライダー式硬貨計算機は両手をあげて歓迎されるとのこと。
また、貴族も同じ。
硬貨のチェックと数えることは、執事長の仕事。
規模の大小に関わらず貴族の執事長なんてのは多忙の代名詞みたいなものなので、スライダー式硬貨計算機は助けになる。
そう言われた。
そうなのかなと思った。
山エルフをみた。
サスペンションを搭載した馬車の生産もあるし、精度も必要なので三日で一台という計算がでた。
とりあえず、最優先で大樹の村用に一台。
続いて五村とビッグルーフシャシャートに三台ずつ。
以後の生産は、山エルフたちの都合に合わせてということになった。
出鼻を挫かれた感じになってしまったが、話を続ける。
自動販売機ゴーレムに関して、俺の考えを説明した。
まず、最初のモデルはジュースの自動販売機だ。
いつでも買えて、いつでも飲める。
とても便利だと思う。
どうやってジュースを渡すか、容器が問題だったがそれも竹筒で解決した。
使い捨ての紙コップが理想だったが、紙は貴重品だからな。
次のモデルは、大型商品の自動販売機。
個別の小さな商品棚から、商品を取り出すスタイル。
商品を見えるようにすることで、購買意欲を掻き立てる。
最初の宝石販売も、これでやればよかった。
ラストのモデルは、カップラーメンの自動販売機。
ボタン一つでお湯入れまでやってくれるあの自動販売機。
あれを再現したい。
さすがにカップラーメンはないが、ゴーレムでもお湯を注ぐぐらいはできるだろうと信じたい。
これら、最初のジュースの自動販売機以外は、言葉の説明ではイメージしにくいのは覚悟している。
なので、ザブトンの子供たちに実演をお願いしておいた。
大型商品の自動販売機の真似で、個別の扉から「やあ」と出てくるザブトンの子供に拍手がおきた。
うん、かわいい。
カップラーメンの自動販売機は、箱の中を再現。
ただ、作るのはカップラーメンではなく緑茶。
ザブトンの子供たちがコップを所定の場所にセットし、粉末のお茶を入れ、お湯を注いでかき混ぜるその姿には応援の歓声が送られた。
うん、ちょっと熱いけど美味しいぞ。
「もう、これでいいのでは?」
アン、そういうことじゃないんだ。
ザブトンの子供たちも、頑張ると足をあげないように。
いや、頑張ってくれるのは嬉しいけどな。
ジュースの自動販売機ゴーレムは、すでにできている。
大型商品の自動販売機ゴーレムは、山エルフたちから技術的に問題はないと言われた。
カップラーメンの自動販売機ゴーレムは、提供する料理によるとの結論。
提供する料理は、考えると長くなりそうだからあとにしよう。
「自動販売機ゴーレムを設置するとしてまた窃盗団に狙われたらどうします?」
ティアの意見に対し、山エルフたちが対策を考えていた。
「自動販売機ゴーレムに、手をつけることで自衛します」
「さらに、足をつけることで逃げることが可能です」
なるほど。
足があれば、商品が切れたら所定の場所に移動するようにできるな。
補充が楽になる。
手があるから、補充も自分でできるかな?
「村長。
あまり複雑な行動は、いまのゴーレムでは……」
山エルフたちを困らせてしまった。
すまない。
「ふふふ。
これまで通り魔王国で流通している魔石を使うなら、そうかもしれないけど……森の兎や猪の魔石を使うなら大丈夫よ」
俺が少し前に渡した十センチぐらいの魔石をテーブルの上において、ルーが言う。
「このサイズなら、複雑な動作はもちろん、長距離の移動も問題ないわ」
なるほど。
「そうかもしれませんが、その……私たちでは魔石に複雑な行動を組み込むのは……」
山エルフのヤーが、少し困った顔で言う。
シンプルな行動なら組み込めるが、複雑となると技術がいるらしい。
大樹の村でそれができるのはルーとティア、フローラぐらいだそうだ。
「それも大丈夫よ。
実験段階なら私が手伝うし、量産段階になればあてがあるから」
シャシャートの街のイフルス学園に魔石に行動を組み込む名人がいるらしい。
「おお、それなら」
希望がみえたようだ。
そしてクロ、ユキ。
テーブルの上の魔石はルーのだから。
じっと見ないように。
お前たちがそれを食べると、色々と面倒だからやめて。
山エルフたちが、ゴーレムでやれることが増えたと色々なアイディアを出していく。
そんななか、獣人族の女の子たちが小さく手をあげた。
遠慮せず、意見を言っていいんだぞ。
「あの、自動販売機ではないのですが……ゴーレムの活用として」
作物の加工に使えないかと提案された。
具体的には、脱穀と製粉。
自動販売機ゴーレムが商品を出す動きをみて、できそうと考えていたうえに、さきほどの複雑な動きも可能とのことで言ってみたらしい。
できないことはないと思う。
いや、できるだろう。
自動販売機ゴーレムより、優先する必要があるんじゃないかな?
とりあえず、次の収穫までには用意するようにしよう。
秋までには、各村に一台ずつだな。
量産、販売は……山エルフたちが、少し絶望した顔をしていた。
会議は続きます。




