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王都での生活 ウルザ編 報告 26日目~


 召喚魔法で呼ばれた魔獣は、一定時間で帰還するのだけど、それには召喚魔法を使うときに活動時間を定める必要がある。


 これがなかなかの高等魔術。


 アルフレートは、まだ活動時間を定めることができない。


 活動時間を定めていない召喚魔法で呼ばれた魔獣は、呼びっぱなしになってしまう。


 なので、アルフレートに召喚されたクロイチは、まだいる。


 学園はもちろん、王都に近づけないでほしいと魔王のおじさんに言われたので、クロイチは北の森に移動。


 クロイチに服従しているデッドリーウルフも一緒。


 デッドリーウルフのサイズは、クロイチが大きくなったときと同じぐらい。


 だから、そこそこの巨体。


 その特徴は灰色に黒のまだら模様……なんだけど、魔王国の正規軍によって討伐された証拠として毛を刈られており、その模様を見ることはできない。


 一部、刈るときの不手際で地肌がみえちゃってるけど、笑わないように。


 デッドリーウルフが落ち込むから。



 クロイチは当初、自力で村に戻ろうと考えていたのだけど、これも魔王のおじさんによって止められた。


 道中、見られるだけで騒動になるからと。


 では、どうするかというと、ビーゼルのおじさんが戻ってきたら村に送ってもらえるそうだ。


 クロイチとしては村に戻れるなら文句はないので、いまは北の森の中を探索している。


 ザブトンの子供のフォーオと、昔話を楽しんだらしい。


 いいなぁ。


 私もフォーオに会いたかった。


 フォーオは私が村に来る前に旅立っているから、私と面識がない?


 それでもいいのよ。


 ザブトンお母さんに色々と話ができるじゃない。




 そして今日。


 ビーゼルのおじさんによって、クロイチが村に帰る。


 いきなり村にクロイチが転移すると、お父さんに見られる可能性があるので行き先は温泉地。


 クロイチは温泉地から、転移門を使って村に戻る予定。


 デッドリーウルフはクロイチに同行するのかと思ったけど、完全拒否。


 クロイチの命令でも聞けないらしい。


 クロイチの見送りに出てきたアルフレートに隠れ、子犬のように震えながら抵抗していた。


 誰に頼ればいいのか、本能で理解しているのは凄いと思う。


 でも、それがクロイチを怒らせている。


 クロイチはアルフレートとお別れなのに、デッドリーウルフはアルフレートのそばにいると宣言しているようなものだからね。


 このままだとクロイチが暴れるので私が仲裁する。


 クロイチとしては、デッドリーウルフが村に来ても来なくてもいいが、アルフレートの傍にいるのは許さない。


 デッドリーウルフとしては、村に行くのは死と同じ。


 助けてと。



 デッドリーウルフは北の森の奥に住むフォーオに預けられることになった。


 フォーオ、おっきい。


 そして、わざわざ迎えに来てくれてありがとう。


 デッドリーウルフ、森の奥で平和に暮らしてね。


 自分の身を守るためなら仕方がないけど、冒険者からはできるだけ逃げるように。


 刈られた毛、早く生え揃うといいね。



 デッドリーウルフが北の森の奥に行ったことで、クロイチは満足してビーゼルのおじさんの転移魔法で移動。


 ビーゼルのおじさん、色々と待たせてごめん。


 ビーゼルのおじさんとクロイチが転移したのを見送って、私とアルフレートは学園に戻る。


 同行しているのはリグネさん。


 少し前に襲われたばかりで無用心かもしれないけど、問題はない。


 問題がないのは、もう襲ってくる人がいないからではなく、襲われても大丈夫と証明できたから。


 そうそう、私はリグネさんの護衛を勘違いしてた。


 リグネさんは私たちを守る護衛ではなく、私たちがやりすぎないようにする護衛だった。


「暗殺者程度でどうにかなる子供たちではない。

 それより、暗殺者たちを殺さないように見張ってほしい」


 グラッツのおじさんからそう依頼されたらしい。


 どうりでリグネさんにしては暗殺者への対処が遅いと思った。


 理由を教えてもらって納得。


 だけど、それならそうと最初に聞きたかった。


 まあ、確かに最初にそう言われたら反発するかもしれないけど。


「ところでリグネさん。

 ティゼルの巨大ゴーレムに対抗できるの?」


「弱点を教えてくれたではないか。

 あれが出たら、ティゼルを狙う」


 正解の一手ではあるけど、考えてほしい。


 ティゼルが自分が狙われる弱点を放置するだろうか?


 するわけがない。


 ティゼルが地面から足を離しても、巨大ゴーレムを維持する方法はある。


 それをリグネさんに教えるかどうかは……ティゼルに任せよう。



 学園に向かうと、畑や牧場がみえはじめる。


 ゴー兄たちが作った畑と牧場だ。


 ここの牧場は山羊が多い。


 この畑や牧場を守るために存在するわけじゃないだろうけど、軍の宿泊地もある。


 それらを横目に学園にさらに向かうと、アースが私たちを出迎えてくれた。


 アースとゴー兄たちが戻ったのは昨日の夜遅く。


 全員がボロボロだった。


 負傷ではなく、疲労で。


 だからアースには今日は休みを与えたのだけど、休みたくないらしい。


 無理はしないでほしいのだけど。



 私たちはアースと一緒に、学園内の家に戻る。


 アルフレートは、そのまま自室に戻ってまたベッドに潜り込むみたい。


 やはり復活には時間がかかるようだ。


 昨晩、アルフレートを励ますために魔王のおじさんとか、アサとかメットーラが昔の失敗談をしてくれたみたいだけど効果はあまりなかった。


 残念。


 魔王のおじさんの横でティゼルが全力でメモを取っていたけど、そのメモは取り上げておいた。


 お父さんへの手紙用としてもらった紙なのだから、無駄使いはしないでほしい。



 紙で思い出したけど、そろそろお父さんに手紙を書かないと。


 今回は友達ができたことはアピールしておこう。


 その友達は無罪にはなったが、さすがにいきなり自由にはできないとダルフォン商会のリドリーさんに預けられている。


 なにかあったらリドリーさんが責任を取ることになるのは、襲撃者の大半がダルフォン商会の関係者だったから、そのペナルティなのかな?


 それだったら代表のデリンテッドさんに預けるべきだと思うけど……


 考えても仕方がないことは考えない。


 そうそう、昨日、アースが帰って来たときに同行者を連れていた。


 反乱を起こした地方領主に仕えていたメイドたち。


 彼女らは反乱に加担したわけではないので無罪放免で実家に戻れるのだけど、世間的にはそうは見てもらえない。


 さらに実家は巻き込まれるのを避けるために受け取り拒否で、行き場を失ってしまった。


 そこで助けを求めた相手がアース。


 正確には、ゴー兄たちに助けを求めたのだけど、アースに押し付けられた。


 ゴー兄たちはこれ以上、妻を増やす気がないからと私たちに謝ってくれたけど……アースにも謝ってほしい。


 もう謝ってもらった?


 それならいいけど。


 ともかく、アースが連れて来たメイドは全部で二十六人。


 私たちと同じぐらいの年齢から、二十代中ほどまで。


 それ以上の年齢のメイドたちは、実力があるので引き取り手があったらしい。


 それで、アースはこのメイドたちを私たちの家で働かせるのかと思ったけど、違った。


 王都で店をやらせるみたい。


 なので、メイドたちは王都の宿に泊まらせている。


 アースがクロイチの見送りに同行しなかったのは休むためではなく、ダルフォン商会に土地と建物の確保を依頼しに行くため。


 ダルフォン商会はすぐに用意するとの返事だったので、あとはどんな店にするか。


 アースは、メイドたちの技量からお茶を提供する店にしたいと言ってる。


 だったら、お茶を仕入れないとね。


 私からお父さんに頼んでもいいけど、これはアースに書かせよう。



 自分のことは書き終わったから、あとはアルフレートとティゼルにも書いてもらって、それをまとめて送るだけ。


 手紙を運んでくれるビーゼルのおじさんには、感謝を伝えないと。


 私が転移魔法を使えればいいのだけど、私には才能がないみたい。


 残念。


 メットーラがれてくれたお茶を飲みながら、私はまったりした。


 実はこのとき、ルーお母さんが王城に来ていて、私たちが襲撃された報復への協力を魔王のおじさんに要請していたなんて、ちっとも知らなかった。





ルー「子供を的にされて、怒らない親はいない」

魔王「ですよねー」



遅くなりました。

すみません。

次回から、本編(村長の話)に戻ります。


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― 新着の感想 ―
ウルザにとってはザブトンもお母さんなんだなーってニッコリした
村長の子に刃向けるのは、核弾頭でロシアンルーレットするようなものだよな…
[一言] 母親達の怒りをどうガス抜きするか。 下手したら、魔王国と周辺は軽く塵になる
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